ハリウッドも絶賛！谷垣健治がアクション演出『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』日本ロケ現場レポート

映画

2021.08.14

ライター：#斉藤博昭

ハリウッドも絶賛！谷垣健治がアクション演出『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』日本ロケ現場レポート — 『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』©2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. © 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

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最新の“日本ロケ”ハリウッド大作

『ワイルド・スピード』シリーズ（2001年～）や『ジョン・ウィック』シリーズ（2014年～）などハリウッドのアクション大作には、たびたび日本のシーンが登場するが、空撮や一瞬の風景ショットなどを除き、日本でロケは行われていない。ドラマはたまに撮影があるが、大作映画の場合、多くはセットで再現されているので、作品によってリアルさにバラつきがある（それも楽しいのだが！）。

直近で、本格的な日本ロケが行われたハリウッド大作といえば、2013年の『ウルヴァリン：SAMURAI』までさかのぼる。広島県や愛媛県、東京都心でも上野駅や新宿駅周辺で撮影を敢行。増上寺では激しいアクションシーンが撮られ、ヒュー・ジャックマンの各地での出没も話題になった。

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いろいろと規制も多く、ハードルの高い日本ロケだが、その状況を打破すべく、内閣府による外国映像作品のロケ誘致、実証調査の対象に選ばれたのが、『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』。すでに2本が作られている『G.I.ジョー』シリーズのこの最新作は、人気キャラクター、スネークアイズが日本の秘密忍者組織「嵐影（あらしかげ）」に入門する。つまりメインの舞台は、日本。カナダ・バンクーバーのスタジオで撮影を行った後、「本物の日本」を収めるべく、キャストとスタッフが日本にやって来た。

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まず関西へ向かった一行は、大阪市街のほか、姫路城や岸和田城、円教寺、大徳寺といった世界遺産にも登録されたスポットでロケを開始。城の外観や寺の庭などを使って、日本ならではの荘厳な映像やスペクタクルな場面を完成させていった。『トランスフォーマー』シリーズ（2007年～）などを手がけ、『G.I.ジョー』にも2009年の1作目から関わるプロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラは、こう語る。

じつは配給のパラマウントの上層部からは、日本ロケに対して懐疑的な意見も出ていた。彼らはかつて『ブラック・レイン』（1989年）の日本ロケで、信じがたい苦労を経験していたからだ。しかし今回は、毎日のラッシュ映像をパラマウント本社に送っているが、みんな心から満足している。

「アクション監督は『るろ剣』の人だと聞いて一気にテンションが上がっちゃった」

監督のロベルト・シュヴェンケ（『フライトプラン』[2005年]、『ダイバージェントNEO』[2015年]など）は日本の時代劇マニアということで、本作に最適だが、そんな彼が全幅の信頼を置いているのがアクション監督の谷垣健治だ。

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『るろうに剣心』シリーズ（2012～2020年）などで知られる谷垣にとっても、本作は初のハリウッド大作。しかしスタッフの間では、「流動的にアクションを変え、これほどライブ感のある現場は珍しい」と、谷垣の指導を絶賛する声が上がっている。

谷垣との仕事を最も喜んでいたのは、主人公スネークアイズを演じるヘンリー・ゴールディングだ。

最初に製作陣から「アクション監督は『るろうに剣心』の人だ」と聞かされて、一気にテンションが上がっちゃったんだ。「知ってるの？」「もちろんだよ！」という感じ（笑）。僕は『るろ剣』の大ファンで、アニメ版もよく観ていたんだ。その谷垣さんから、カナダのバンクーバーで1ヶ月半ほど猛特訓を受けた。かなり厳しかったけど、日本刀を使った唯一無二の殺陣を学ぶことができ、これまでのハリウッド映画とはまったく違う格闘や武術のスタイルを体現できたと思う。

日本の現場で目を輝かせてそう語ったヘンリーのほか、関西でのロケを終えた一行が向かったのは、茨城のワープステーション江戸。日本の映画やドラマの時代劇で撮影に使われる、江戸の町並みを再現したオープンセットだ。そのワープステーションは、明らかにいつもと違う雰囲気が漂っていた。設置された照明も巨大だし、あちこちに待機用のテントが立ち、スタッフがモニターを囲んで談笑している。そのスタッフの多さが尋常ではないのだ。

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抜け忍（集団を抜けた忍者）の鷹村を演じる平岳大は、すでにNetflixオリジナルシリーズ『GIRI／HAJI』（2019年～）で海外作品も経験しているが、今回のスケールはレベルが違うと、次のように説明する。

たとえば袴の着方とかを、スタッフが僕に尋ねてくるんです。YouTubeで調べたけど、わからないからって（笑）。それで教えるのですが、そのスタッフが休暇でいなくなったりして、また別の人に教えなくてはならない。それくらい代理のポジションがいっぱいあって、スタッフの数が多いんです。ADの役割も細かく分類されていて、日本の現場との違いを実感しますね。

伝統と奇抜さ、忍者アクションとワイヤーワークの究極合体

ワープステーションでは、嵐影の面々が生活する屋敷でのシーンや、そこでのバトルが撮影された。セットの中心にいるのは谷垣健治。『るろうに剣心』のチームを引き連れて、彼が段取りを整えているのは、夜のシーンでのワイヤーアクションだ。

屋敷の屋根の上に何本もワイヤーが張られ、そこに吊るされたスタントマンたちが全力で走り、空中に大ジャンプする。屋根の向こう側から大量の敵が現れ、戦いを繰り広げ、中には屋根から転げ落ちる者も。ちょっとでもタイミングがズレたら映像として成立しないし、何より大ケガに発展する危険もある。現場の横には消防庁の救急車が待機しており、このあたりもハリウッドらしい「万全の体制」だ。

各ワイヤーの両端は、それぞれスタッフが4人ずつスタンバイして操作を行っている。ピンと張ったり、緩めたりして、吊られたスタントマンの動きをサポートするのだ。スタントマンたちの豪快な動きを見守りながら、谷垣健治が細かく指示を出している。まさに夜の闇を切り裂くように、忍びの者たちが空中でアクロバティックなワイヤーアクションを繰り広げていく。

微調整を続けながらのリハーサルと本番は、深夜の時間を過ぎ、明け方近くにまでおよんだ。その間、スタッフやキャストは各自空いた時間に食事をとるのだが、このケータリング（食事サービス）もロケ弁などではなく、高級ホテルのようなビュッフェ形式。バラエティも豊富で、一食あたり400人分が提供されるそうだが、ここにもハリウッド作品らしく「食事はしっかり」という契約の存在を感じられる。

こうして日本で撮影することで、ハリウッド映画にありがちな「勘違いな日本」の光景は少なそうだが、『G.I.ジョー』の世界なので、非現実＆過剰な魅力も備わっている。平岳大も「衣装がクロコダイルの柄とかありえないけど、そのデフォルメも世界観」と話す。プロダクション・デザイナーのアレック・ハモンドは「17世紀の江戸時代から、現在に至る日本文化をみっちり研究したうえで、伝統建築にモダンな要素を付け足す、坂茂さんや安藤忠雄さんのデザインを日本各地で見て回った」ということで、衣装や武器、装飾などで、伝統と、いい意味での奇抜さの「合体」を楽しませてくれそう。そして合体といえばもちろん、日本独特の忍者アクションとワイヤーワークの究極合体が追求されている。

このワープステーションでのロケは、2020年の2月。その後、世界は新型コロナウイルスのパンデミックに突入したので、ハリウッド大作の日本ロケはしばらく行われないだろう。その意味でも貴重な『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』が、われわれ日本人の観客の目にどう映るのか。今から公開が楽しみだ。

取材・文：斉藤博昭

『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』は2021年10月22日（金）より全国公開

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『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』

日本の闇の組織から、ある男の命を救ったスネークアイズは、秘密忍者組織“嵐影”への入門を許可される。600年の間、日本の平和を守り続けた“嵐影”は、悪の抜け忍集団と国際テロ組織“コブラ”連合軍による攻撃にさらされ、危機に瀕していた。スネークアイズは嵐影の“3つの試練”を乗り越え、真の忍者となり、迫りくる“忍者大戦”から、世界を守る事が出来るのか!?

制作年：	2021
監督：	ロベルト・シュヴェンケ
出演：	ヘンリー・ゴールディングアンドリュー・コージウルスラ・コルベロイコ・ウワイス平岳大安部春香石田えり

2021年10月22日（金）より全国公開

公式サイト

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