ついに実写シリーズ完結! なぜアニメ『るろうに剣心』の主題歌はあんなにイケてたのか?“鬼滅”にも繋がるソニー系アニメの遺伝子

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ついに実写シリーズ完結! なぜアニメ『るろうに剣心』の主題歌はあんなにイケてたのか?“鬼滅”にも繋がるソニー系アニメの遺伝子
『るろうに剣心 最終章 The Final』©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

邦画アクションを押し上げた映画『るろ剣』

様々な漫画作品が実写化し、中には歴史の影に消えていくものも少なくない中で、映画『るろうに剣心』シリーズ(2012年~)は実写化に成功した好例と言えるだろう。全5作が製作され、累計興行収入125億円の人気シリーズへと成長してきた。

大筋は原作をなぞりつつ、アクションシーンはジャッキー・チェンやドニー・イェンとの仕事で知られる谷垣健治監督による高速ワイヤーアクションが炸裂! またイメージと話題性を兼ね備えたキャスティングも巧みで、特にスタントなしで“伝説の人斬り抜刀斎”こと緋村剣心を演じた佐藤健氏は、超当たり役と言えるほどハマっている(十本刀の一部、盲剣の宇水たちが無名のザコとして瞬殺されていったのは、ちょっと悲しかったが)。

そんな実写版『るろ剣』が、2021年4月23日(金)公開の『るろうに剣心 最終章 The Final』と、同6月4日公開の『るろうに剣心 最終章 The beginning』の最終2部作で完結を迎える。最終章だけあって、アクションシーンの量とテンションもMAX、(おそらく)予算もMAXで、原作の雪代縁編をベースに「剣心の十字傷の秘密」を知る雪代縁との激闘が描かれる。

『るろうに剣心 最終章 The Final』©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

というわけで、実写シリーズ完結記念に『るろ剣』の思い出を振り返ろうと思ったのだが、そこでどうしても避けられない疑問がある。1996年に放送開始されたTVアニメ『るろ剣』の主題歌は、なぜあんなにイケていたのか――? この機会に、ミュージシャン視点で長年の疑問について考えてみようと思う。

『るろうに剣心 最終章 The Final』©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

少年ジャンプ黄金期を象徴する、アニメ『るろ剣』の主題歌たち

1994年当時、週刊少年ジャンプで「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」が始まった時の衝撃は大きかった。まず、その絵の美麗さに驚愕するキッズたち(おれ含む)。その頃の“少年漫画の基準値”は、鳥山明先生の描くシンプルかつダイナミックな絵柄だった。だが「るろ剣」は少年漫画でありながら繊細なペン使いで、耽美と言ってもいい美しさを湛えていた。どこか中性的な、それもちょっと背伸びした漫画を読んでいるような、ドキドキ感のある絵だった。

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そしてもうひとつ、1996年にスタートしたTVアニメシリーズ『るろうに剣心』から受けた衝撃、それは主題歌の最先端っぷりだ。なんといっても、初代オープニング曲であるJUDY AND MARYの「そばかす」、それにつづく川本真琴「1/2」の衝撃。エンディング曲も、THE YELLOW MONKEYにはじまり、T.M.Revolution、SIAM SHADE、(ドラマーの逮捕で放送期間は短かったが)L’Arc-en-Cielなど、錚々たるメンツが並ぶ。流行に疎かった僕なんかは、ジャンプで親しんでいる『るろ剣』の主題歌が「イケすぎてる」ので、ちょっと怖くなったくらいだ。

アニメの世界では、その作品のために“アテガキ”で作られたタイアップ曲が主題歌を飾るのが通例だった。作品名をサビで叫んだり、作品にまつわる単語が曲の中に散りばめられている、いわゆるイメージの中の「アニメソング」はそういうものだろう。それが魅力でもあったのだが、どこか子供じみたものを子供のくせに感じていたのも事実だ(むしろ大人になった今の方が楽しめたりする)。

80年代には一部のロボットアニメがアイドルソングの登竜門となるなど接近を見せはじめ、90年代にはアニメソングはポップスの一部として認知されてはいたが、『るろ剣』はその音楽とアニメの融合の可能性をさらに押し広げたエポックメイキングな作品だった。

アニメ雑誌「アニメージュ」のアニメソング人気投票では、1992-1993年は『美少女戦士セーラームーン』の「ムーンライト伝説」、1995-1996年は『新世紀エヴァンゲリオン』の「残酷な天使のテーゼ」が首位を飾っているが、あくまでどちらも“アニメソング”の領域からポップスへと拡大した楽曲だと言える。だが『るろうに剣心』は逆の構造を持っていて、ヒットチャートで流れるような曲、それもキッズにとってはお兄さんお姉さんたちが夢中になっているような流行のポップソングが主題歌に起用されたのだ。

だって、いきなり「そばかす」である。『るろ剣』関係ねぇ! でも良い曲!(アニメ=『キャンディキャンディ』の連想からの「そばかす」らしい。でも関係ねぇ!)

そして、特にすごいのは川本真琴が担当した「1/2」で、楽曲の新しさと素晴らしさもさることながら、この第二期オープニングの映像が、本編での少年漫画要素=チャンバラアクションをかなぐり捨てて、実写風の背景の中をめちゃくちゃ顔が良いキャラたちが佇んでいるだけという、ミュージックビデオのような仕上がりなのだ。この“静”の映像が、妙に大人びていてカッコよかった。『るろ剣』のオープニングは、曲においてもその映像においても、一歩も二歩も先を行く仕上がりだったのだ。

『鬼滅の刃』につながる「ソニー系」メディアミックス

その背景を調べていくと、TVアニメ『るろうに剣心』は、ソニー系列の製作会社SPEとフジテレビの製作でスタートし、ちょうど「1/2」が主題歌になる39話から新たに社名を変更したSPEビジュアルワークスの一社製作となったことがわかった。『るろ剣』は、SPEビジュアルワークスが手がけた最初のアニメ作品だ。

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そして、このSPEビジュアルワークスこそが、ソニーがアニメと音楽のメディアミックスのために立ち上げた会社であり、近年の『鬼滅の刃』(2019年ほか)の超ヒットで知られる<アニプレックス>の前身なのだ。

ということは、現在まで脈々とつづく「ソニー系アニメ」の原点に位置するのが『るろうに剣心』だったのか!

 

『鬼滅の刃』メディアミックスには、『るろ剣』の遺伝子が眠っていた――。「ソニー系」というポップミュージックの先端を走る会社が本格的に製作に参画したことによって、『るろ剣』はあんなに現在進行形感あふれる楽曲採用が可能になったのだ。

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こうして考えてみると結構単純なからくりだが、当時の少年少女たちには計り知れぬことで、ただ「なんか新しい感じがする」と、テレビの前でドギマギするだけであったのだ。

文:タカハシヒョウリ

『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』は2021年4月23日(金)、6月4日(金)2作連続公開

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『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』

かつて<人斬ひときり抜刀斎ばっとうさい>として恐れられ、激動の幕末を刀一本で戦い抜いた男、緋村剣心。新時代を迎え、二度と人を殺さないと誓う。斬れない<逆刃刀さかばとう>に持ち替え、日本転覆を狙った志々雄真実をはじめ数々の敵との戦いを乗り越えた今は、仲間たちと平穏な日々を送っていたー。

ある日、東京が何者かに攻撃され、次々と大切な人々が襲われた剣心は、次第に追い詰められていく。憔悴しきった彼の前に現れたのは、あの志々雄に武器や軍艦を送り込んでいた上海マフィアの頭目・雪代 縁。剣心の<十字傷の謎>を知る彼こそが、剣心自らが生み出してしまった最恐最悪の敵だった。剣心に強烈な恨みを持ち、剣心だけではなく<剣心が作った新時代>をも破壊するため<人誅 じんちゅう>を仕掛けてくる!

制作年: 2020
監督:
出演:
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