『007』の人智を超えた“トンデモ”シーンはこれだ!! コネリー版ボンドが培った遊び心が満載!

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ライター:中山治美
『007』の人智を超えた“トンデモ”シーンはこれだ!! コネリー版ボンドが培った遊び心が満載!
UNITED ARTISTS / Allstar Picture Library / Zeta Image

かの仏作家ジュール・ヴェルヌは「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」という名言を残した。とすれば、数々の驚愕シーンをやってのけ、しばしば“トンデモ映画”と称される『007』シリーズも、もしかしたら現実世界でも起こり得る展開なのかも? と大きなハートで鑑賞できるはず。

しかし、なかには人智を超えた、いや頭のネジを1、2本飛ばさないと発想できないシーンが存在する。映画が夢と冒険に溢れた世界であることを証明する珠玉の名シーンを紹介したい。

子供騙しの“鴨ヘルメット”でまんまと潜入成功!『ゴールドフィンガー』

英国を代表する“ザ・ジェントルマン”のイメージを世に広めたと言っても過言ではないジェームズ・ボンド。特に日本人は初代ボンド、ショーン・コネリーの吹き替えを務めた声優・若山弦蔵の激シブな低音ボイスに慣れ親しんできたとあって、ダンディーなイメージが100倍ぐらい膨らんでいる。

しかし、相手の失笑を買うことも恐れない、かなりのユーモアを持ち合わせていることを、シリーズ第3弾『007/ゴールドフィンガー』(1964年)で早々と見せつけている。オープニングのメキシコで、麻薬王ラミレスの工場を爆破するシーンだ。海からの上陸を試みるボンドのヘルメットには鴨が。鴨が泳いでいると偽装して、水から敵地に近づいたのだ。古典的かつ子供騙しで敵を油断させる戦法でまんまと上陸し、任務を遂行する。

コネリーが日本人!? そんなムチャな! を無理やり押し切った『007は二度死ぬ』

製作陣はショーン・コネリー自身が持つユーモアのセンスをボンド役にかなり投影しており、それが大胆なアイデアを生んだようだ。その一例が、ボンドが柔道着姿に漁師スタイル、忍者姿まで披露する日本カルチャーてんこ盛りの日本ロケ映画『007は二度死ぬ』(1967年)だろう。

そもそも本作は冒頭からインパクト大。香港で女性とお戯れ中に銃でメッタ撃ちにされたボンドが、どうやって生き延びたのか? その詳細は明かされず、“二度死ぬ”というタイトルで観客を納得させて物語はどんどん加速する。メーンの任務は、アメリカの宇宙船ジュピターを乗っ取り、米ソ開戦を目論む悪の秘密組織スペクターの野望を阻止すること。スペクターのボス、ブロフェルド(ドナルド・プレザンス)のアジトが日本の人里離れた島にあることを掴んだボンドは、日本人になりすまし、地元の海女であり工作員のキャッシー鈴木(浜美枝)と偽装結婚して、近くの漁村で好機を待つ。繰り返すが、ボンドが日本人になるのだ。ご丁寧に整形シーンも盛り込んで、日本人に見えようが見えまいが、“日本人になった”という状況証拠だけで突っ走る。大らかな時代が生んだシリーズ屈指のカルト作の誕生だ。

冷戦時代の緊張感の中でウルトラC級の国境越え!『リビング・デイライツ』

製作陣とコネリーが培った遊び心は、その後のシリーズでも随所に生かされている。それは歴代ボンドの中では若干影の薄いティモシー・ダルトン版でもだ。『007/リビング・デイライツ』(1987年)は、ソ連の重要人物コスコフ将軍(ジェローン・クラッペ)の西側オーストリアへの亡命協力要請を受けたボンドが、その裏にある真相を解明していく内容だ。

その亡命方法が、天然ガスパイプラインを使うというアイデアも大概だが、ボンドと事件の鍵を握るコスコフの恋人でありチェリストのカーラ(マリアム・ダボ)の国境越えはウルトラC級。チェコ警察とKBG相手に雪上でカーチェイスを繰り広げた挙げ句、ボンドが駆るアストンマーティンV8は大破。最後はカーラのチェロケースをソリ代わりにして、オーストリアに逃げ込む。『007』シリーズの中でもトップクラスの手に汗握るカーチェイスシーンで、最後は颯爽と逃げおおす展開だけに細かいことを忘れてしまうが、時はまだ冷戦時代であり東欧革命前の国境警備がピリピリしていた頃。ソ連の影響下にあったチェコスロバキア社会主義共和国が解体されるのは、製作から6年後の1993年だ。

大胆不敵過ぎるアイデアだが、このシーンに当時の人々の願望や夢が詰まっていたのかと想像すると、目頭が熱くなる。ちなみにオーストリアは1995年に、チェコとスロベニアは2004年にEUに加盟しており移動は自由。歴史を偲ぶシーンだ。

同様に、法律や常識に囚われない国境越えのシーンは、『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)にも登場する。同作は、アフリカ諸国から密輸したダイヤモンドを利用して武器を買い込んできた朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)のムーン将軍(ケネス・ツァン)の悪事を止めるために、ボンドは北朝鮮に向かう。上陸方法は海上から。しかもサーフィンという前代未聞の密入国法だ。実際に可能なのか? 同様の方法で入国を試みた者がいたのか? は定かではない。話題の人気ドラマ『愛の不時着』(2019年)は、悪天候に見舞われてハンググライダーでのまさかの北朝鮮超えが「あり得ない」と批判も受けているが、『007』シリーズに比べたらこれくらいの空想は可愛いものである。

アクションシーンにスポンサー広告の乱れ打ち! もはや壮大なコント!? な『ムーンレイカー』

最後に忘れてならないのが『007は二度死ぬ』と並び、何かと突っ込みどころ満載でファンに愛されている『007/ムーンレイカー』(1979年)。アメリカのスペースシャトルを盗んだ首謀者としてドラックス(ミシェル・ロンズデール)を、科学者ホリー・グッドヘッド(ロイス・チャイルズ)と追っていたボンド。しかしブラジルで彼の手下に捉えらてしまった2人は、救急車でどこかに運ばれることに。しかし車中で反撃し、ボンドと手下はベッドとともに救急車から飛び出して山道を急下降し、危機一髪! となるシーンがある。

この山道では飲料の「7UP」、時計の「SEIKO」、タバコの「Marlboro」の巨大広告が映るのだが、これ全部スポンサー企業。そして真打で登場するのが英国航空の看板。もちろん、これも大スポンサーで、手下の乗ったベッドが看板に突き刺さり、その横には「We’ll Take More Care of You (あなたのお世話を)」の文字が書いてあるというオチ付き。もはや壮大なコントだ。

『007』シリーズは企業広告を作品内に巧みに取り入れた最初の商業映画と言われているが、その見せ方までぶっ飛んでいて、コンプライアンスとか企業イメージにこだわる今なら生まれないであろうシーンも数多い。明らかに、現場のノリとか勢いでやってます? 的な。それもこれも、人気シリーズだからこその余裕とチームワークの成せる技。新作『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』にもこの精神が受け継がれ、人智をはるかに超越したシーンで我々のド肝をぶち抜いてくれることを期待したい。

文:中山治美

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