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歴代『007』と日本との“深イイ関係”! 軍艦島を聖地巡礼? 秘密兵器のセイコー時計、能面悪役ほか

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歴代『007』と日本との“深イイ関係”! 軍艦島を聖地巡礼? 秘密兵器のセイコー時計、能面悪役ほか
2017年『007は二度死ぬ』公開50周年を記念した日本のロケ地ツアー「YOLT50 Tour of Japan」のガイド本の表紙

『007』と日本の蜜月を振り返る!

シリーズ第5作『007は二度死ぬ』(1967年)の舞台となったこともあり、日本とジェームズ・ボンドとは縁が深い。『007 スペクター』(2015年)でもナイン・アイズの参加国会議が東京で開催されたり、2020年11月の公開が待たれる最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』では日系アメリカ人のキャリー・フクナガ監督が抜擢された影響なのか、ラミ・マレック演じる悪役サフィンが扱うアイテムに日本テイストが多く見受けられる。

『二度死ぬ』から半世紀以上たった今も、全世界の『007』ファンはロケ地が奇跡的に保存されている日本を羨望の眼差しで見つめている。ということで、再び高まりつつある『007』と日本の蜜月関係の歴史について振り返ってみよう。

当時のロケ地がそのまま残っている! コネリー版ボンドにおける日本

映画『007』シリーズの中で日本が初めて言及されたのは、第2作『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)だ。ボンドはタチアナに暗号解読機レクターの特徴について船上でヒアリングする。その際に以前Mと東京に出向いたことがあり、一緒に芸者遊び? をしたことをバラすシーンがあるのだ。Mが赤っ恥をかかされるユーモラスな場面だが、ジェームズ・ボンドが『二度死ぬ』以前に東京でスパイ活動をしていたとは興味深い。

第4作『サンダーボール作戦』(1965年)では、謎の組織スペクターの定例収支報告会議の席上でNo.7が日本人二重スパイ、マツ・フジワに対する恐喝作戦による利益が4000万円を計上したと報告している。日本人としてはちょっと珍しい名前に苦笑させられるが、日本をスパイ活動の一大拠点と見なしていることが嬉しい。それとも、それだけカモ扱いされていたのだろうか。

第5作『007は二度死ぬ』については『007』ファンの皆さんには説明不要だろう。冒頭、ボンドは暗殺を偽装するために香港に出向くが、物語の舞台は殆どが日本である。東京の銀座、今はなき蔵前国技館、赤坂、神戸、姫路城、那智大社、鹿児島市内、そして現在の鹿児島県南さつま市坊津秋目など、日本を縦断する美しいロケ地は我々日本人でも楽しめる。

『007は二度死ぬ』でボンドと浜美枝演じるボンドガールが住む家のある、鹿児島県の秋目浦で碑と共に記念撮影(筆者撮影)

しかも、ホテル・ニューオータニや秋目の海岸などは当時の雰囲気がそのまま残されているのだから驚きだ。海外から訪れた熱心な『007』ファンが大興奮するのも無理はない。

ホテル・ニューオータニ(筆者撮影)

惜しくもタイガー田中を演じた丹波哲郎氏は鬼籍に入られたが、当時のニンジャ部隊や武道の達人として出演された方々は今なおご健在だ。古き良きものを大切にし、伝統を重んじる長寿大国ニッポンの面目躍如といえるだろう。

『007は二度死ぬ』で藁人形を真剣で斬っていた神影流二十五世宗家豊島一虎先生(左)、筆者(中央)、殺陣シーンを演じられた理事長の小出智男先生(右)

コネリーが第5作でボンド役を退いた後に1作だけ復帰した第7作『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971年)の冒頭、ボンドはブロフェルドを追って日本人を問い詰める。映画の順番としては第6作『女王陛下の007』(1969年)でテリー・サバラス演じたブロフェルトを追っているに違いないのだが、役者の連続性を考えると第5作『二度死ぬ』のドナルド・プレゼンス版ブロフェルドを追って日本人をシメていたのではないか、そんな風に考える筋金入りのボンドファンもいる。あくまでジョージ・レーゼンビー演じるボンドの第6作は番外編扱いなのだ。その想像力には脱帽するしかないが、ありえなくもない話である。

ハイテク機能満載! ファンにも手が届きやすかったセイコー製ウォッチ

ロジャー・ムーアの時代は『007/黄金銃を持つ男』(1974年)に相撲力士が登場したり、『007/ムーンレイカー』(1979年)にチャンという役名ながら剣道の達人が登場したり、『007/美しき獲物たち』(1985年)に取貝麻也子が着物姿で登場した(彼女の日本語版主題歌レコードまで発売された)。しかし、特筆すべきはデジタル時代を反映してセイコーの腕時計が、時には秘密兵器満載でボンドを危機から救ったことだろう。コネリー時代のロレックスは勿論のこと、最近のオメガもボンド・モデルは目の飛び出るような高価なものばかりで一般人にとって高嶺の花だが、やや庶民派のセイコー・ウォッチが映画の中で大活躍していたのは日本人として誇らしい。メイド・イン・ジャパン製品が世界を席巻した時代を懐かしむファンも多いことだろう。

ティモシー・ダルトンの『007/消されたライセンス』(1989年)では麻薬の買付人らしき日本人ビジネスマン(全然恐ろしいヤクザには見えない)が登場。ピアース・ブロスナンの『007/ゴールデンアイ』(1995年)ではヒロシマの原爆が言及され、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)では地下鉄サリン事件に関与したサトシ・イサグラなるテロリストの写真が映し出される。どうも日本人の登場人物の名前には疑問が残り、製作陣に日本人のアドバイザーがいないのでは? と疑いたくもなるが、それでもことあるごとに『007』シリーズが綿々と日本人を登場させているのに悪い気はしないのだ。

D・クレイグが長崎の軍艦島に感銘! 聖地巡礼で訪れる熱心なファンも

そしていよいよ現役ボンドのダニエル・クレイグの時代には、『007/カジノ・ロワイヤル』の高額ポーカーのテーブルにフクツ氏という(恐らく)日本人が登場する。長い白髪の紳士は芸術家の匂いがするので、筆者は勝手に著名な陶芸家の設定だったと信じている。

『007 スカイフォール』に登場するシルヴァの拠点デッドシティの屋外セットは、長崎の軍艦島がモデル。ダニエル・クレイグが軍艦島の動画に感銘を受けて美術担当に進言したという。実際のロケ地ではないものの、熱心な海外の『007』ファンは軍艦島も日本の聖地巡礼コースに組み込んでいる。エンドクレジットでわざわざ長崎市長に謝意を述べているのは日本への敬意の表れだろう。

軍艦島を聖地巡礼する007ファンたち(筆者撮影)

公開が待たれる最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』ではラミ・マレック演じる悪役サフィンが日本の能面をかぶっていたり、秘密基地に盆栽のようなものが見えるなど、特定の宗教と絡めたベタなテロリスト像を良しとしなかったマレックと、日系アメリカ人のフクナガ監督によるアイデアが随所に盛り込まれている。予告編から読み取れる情報以外にも、実はまだまだ日本テイストが散りばめられているのではないか。そんな期待をしながら日本人ファンとして新作を楽しみにしている。

文:村井慎一(ボンド命)

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2020年11月20日(金)より公開

『007』シリーズはCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年8月ほか放送

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