『007』の秘話満載! ボンド役者は(6人ではなく)11人いる!? すべて紹介&ざっくり格付け!!

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ライター:谷川建司
『007』の秘話満載! ボンド役者は(6人ではなく)11人いる!? すべて紹介&ざっくり格付け!!
UNITED ARTISTS / Allstar Picture Library / Zeta Image

忘れられた/誰も知らないボンド役者!
「シネマ・タイムレス~時代を超えた名作/時代を作る新作~ 第8回】

第8回目は、3か月連続となる『007』シリーズを肴にするが、今回はジェームズ・ボンドを演じてきた歴代の役者たちに関する知られざるエピソードをご紹介し、本当に最高のボンド役者は誰なのか? という難題について考察してみたい。

唯一のアメリカ人俳優が演じたジェームズ・ボンドはMI-6ではなくCIA所属だった!

過去58年の間にジェームズ・ボンドを演じた役者は何人いるのか? ――この問いを『007』シリーズを製作してきた英国のイオン・プロダクションに尋ねれば、もちろん6人という答えが返ってくる。――初代のショーン・コネリー、二代目ジョージ・レーゼンビー、三代目ロジャー・ムーア、四代目ティモシー・ダルトン、五代目ピアース・ブロスナン、そして六代目ダニエル・クレイグである。

だが、敢えて言おう。過去にジェームズ・ボンドを演じた役者はほかにあと5人いて、合計で11人いる。えっ!? 残りの5人って誰のこと? と驚かれるファン歴の浅いビギナーの方たちばかりではなく、ハハーン! それはイオン・プロとは別に、イアン・フレミングのボンド物の原作第一作目である「カジノ・ロワイヤル」の映像化権が別途売却されていた関係で作られた作品で、ジェームズ・ボンドを演じた人たちのことでしょ? とすぐに思い至るファン歴の長い方たちもいるだろう。

現在のダニエル・クレイグのお披露目となったイオン・プロダクション製作によるシリーズ第21作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)は、かつて同プロが『007』シリーズの製作を開始する以前に映画化権が売却されていたものを、改めて同プロが映画化権を獲得したことによって生まれた作品で、シリーズ全体のリ・ブート版のスタートにふさわしい作品だった。

この『カジノ・ロワイヤル』が最初に映像化されたのは1954年のテレビ版で、次いで1967年にコロンビア映画で製作されている。その2作品でジェームズ・ボンドを演じたのが、それぞれバリー・ネルソンデヴィッド・ニーヴンだということはご存じの方も多いはず。さて、連載第6回で触れたように、イオン・プロのボンド役者は過去すべて英連邦出身の俳優にこだわってきたのだが、コロンビア映画版の『カジノロワイヤル』で、スパイを引退したジェームズ・ボンド卿を演じたデヴィッド・ニーヴンもまた生粋のロンドンっ子だ。

ところが、世界で初めてジェームズ・ボンドを演じたテレビ版のバリー・ネルソンはアメリカ人で、実はボンド自身がこの作品では英国のMI-6所属のスパイではなく、アメリカのCIA所属のスパイという設定に変えられていた。ちなみに、逆にボンドの友人でCIA所属のフェリックス・ライターが本作ではMI-6所属のクラレンス・ライター(劇中ではライターだが、クレジットではレター)となっていた。

さて、コロンビア映画版の『カジノロワイヤル』には、引退したボンド卿の代わりとして、ピーター・セラーズ、テレンス・クーパーが偽ジェームズ・ボンドを演じていたのだが、これはあくまでも偽物ということなので数に入れない。とすると、本家イオン・プロの6人に2人加えて計8人。では、残りあと3人というのは誰でしょう?

知られざるボンド役者たちとはいったい誰なのか?

あとの3人というのは、まあボンド役者認定するのはちょっと無理があるかもしれないのだが、筆者の独断で、ジョン・ギャヴィンボブ・シモンズデンホルム・エリオットの名前を挙げたい。

ジョン・ギャヴィンは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』(1960年)でジャネット・リーの恋人役を演じていたアメリカの俳優。ジョージ・レーゼンビーが降板した後の後任ボンド役者選びの中で、最終的にイオン・プロがボンド自体をアメリカナイズさせることにして『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971年)からの三代目ジェームズ・ボンド役として契約した。……だが、配給のユナイト映画側がどうしてもショーン・コネリーを復帰させたいと主張し、イオン・プロはコネリーに破格の条件を提示して復帰させることに。なのでジョン・ギャビンは、スクリーン・テスト以外では実際にボンドを演じることはなかったのだが、出演料は契約書通りに払われたというから、“幻の”という枕が付くにせよ、立派なボンド役者なのである。

ボブ・シモンズは、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアのスタントダブルを長く務めたスタントマンなので、言わば“影の”ボンド役者といった存在。だが、彼は何といっても『007』シリーズの顔とでも言うべき冒頭のガンバレル・シークエンス(ライフルの銃口の中に右から左へ向かって歩くボンドが拳銃を抜いて先に撃ち、ライフルの敵が血に染まるという有名なショット)でのボンドを、第三作目『007/ゴールドフィンガー』(1964年)まで演じているのが重要だ。コネリーより20センチも背が低いボブ・シモンズは銃を撃つ時に飛び上がるように振り向くのが特徴で、『007/サンダーボール作戦』(1965年)以降のコネリー自身によるガンバレル・ショット(撃つ時に右足が後ろに流れる構え)や、ジョージ・レーゼンビーのガンバレル・ショット(膝をつく)とは全くの別物だから、最初期のボンド・イメージを形作った功労者の一人であることは間違いない。

1966年の英国映画『ブルドック作戦』で冴えない主人公が憧れる格好いいスパイ――駐車場で(確か)アストンマーチンと共に登場する役――を演じていたのが英国の名優デンホルム・エリオット。権利関係で“ジョーンズ・ポンド”とされていたこの人物だが、日本で『ずっこけスパイ騒動記』のタイトルで平日の昼間にテレビ放送された際に、テレビ版制作会社のシャレで、勝手に“ジェームズ・ボンド”に替えられていた。なので、言わば彼は“洒落の”ボンド役者といったところだ。

1983年:3人のボンド役者が同時期にジェームズ・ボンド役で登場した奇跡の年

ところで、今から37年前の1983年という年は、ジェームズ・ボンドを愛するファンにとっては驚くべき年だった。というのも、3人のボンド役者がそれぞれジェームズ・ボンドを演じる新作を、すべて同じ年に見ることが出来たからだ。――3人というのは、本家イオン・プロの新作『007/オクトパシー』に主演したロジャー・ムーア、『007/サンダーボール作戦』のプロデューサー、ケヴィン・マクローリーが再映画化権を行使して製作した『ネバーセイ・ネバーアゲイン』ショーン・コネリー、そしてスペシャルTVムービー『0011ナポレオン・ソロ2』ジョージ・レーゼンビーである。

『オクトパシー』と『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の対決というのはよく知られていて、前者は1982年8月に撮影開始、1983年6月に英米公開、日本は7月公開。後者は一か月遅い1982年9月に撮影開始、公開は直接対決を避けてアメリカが1983年10月、英国と日本は12月となった。

一方の『0011ナポレオン・ソロ2』だが、これをパチモンなどと誤解してはいけない。『0011ナポレオン・ソロ』シリーズは、1964~65シーズンから1967~68シーズンまでの全4シーズンにわたって放送された人気TVシリーズで、ロバート・ヴォーンが演じた主人公の名前、ナポレオン・ソロというのはジェームズ・ボンドを生み出した作家イアン・フレミングによる命名だ。そのナポレオン・ソロと、デヴィッド・マッカラム演じる相棒のイリア・クリヤキンとが14年振りにタッグを組んだ新作が『0011ナポレオン・ソロ2』なのだが、冒頭のラスベガスでのカーチェイス・シーンで、アストンマーチンDB5に乗って颯爽と現れてソロを助け、互いに車を運転しながら軽く挨拶するのが、JB役のレーゼンビーだった。

彼にとっては、たった一作品『女王陛下の007』(1969年)で自らボンド役を降板して以降、カメオ的なゲスト出演とはいえ久々のジェームズ・ボンド役での登場だったのだが、訴訟を起こされる可能性を考慮して英国秘密諜報部員JBというイニシャルしか明示されない形を取っていた。レーゼンビーの登場シーンは1982年11月に撮影されたのだが、放送は1983年4月だったから、『007』ファンにしてみれば、春に二代目レーゼンビー、夏に三代目のムーア、秋に初代のコネリーという3人のボンド役者の新作を見ることが出来たというわけだ。

最高のボンド役者は一体誰なのか? という永遠の問いへのひとつの答え

さて、“幻の”ボンド役者、“影の”ボンド役者、“洒落の”ボンド役者を除いても、これまでに8名の役者が演じてきたジェームズ・ボンド。しかし、それらの役者の中で誰が最高のボンド役者か、という問いは『007』シリーズのファンであれば一人一人それぞれの想いがあることは必至で、答えなどは見つかるはずもない。

一般論的には、何と言っても初代のショーン・コネリーを超えるボンド役者はいない、と述べる人が多いと思うが、現役のダニエル・クレイグを推す人もまた多いだろう。この問いへの答えを生前しばしば尋ねられた故ロジャー・ムーアは、非常に謙虚で、かつやや意外な答えを遺している。曰く「最高のボンドは疑いの余地なくコネリーとダニエル・クレイグだ」。そして自分自身のボンド役者としてのランクについては、「ジョージ・レーゼンビーにちょっとだけ後れを取っていると思う」。

実は、この答えは筆者の感覚とほぼ一緒だ。歌舞伎ファンの中には、團菊爺とか菊吉爺と呼ばれる人たちがいる。その心は、俺は名優 九代目市川團十郎や五代目尾上菊五郎(あるいは六代目菊五郎や初代中村吉右衛門)の舞台を見てきたが、それと比べると今の歌舞伎役者などは大したことはない、と古くからのファンであればあるほど言いがちだ、ということ。つまり、『007』シリーズをそのスタート地点から見続けている人はコネリー派が圧倒的なわけだ。

筆者の場合は、新作として劇場で見始めたのはショーン・コネリーの『007/ダイヤモンドは永遠に』からで、それ以前の6作品はすべてリバイバル公開で観た世代だが、確かに最初の3作品くらいまでのコネリーは野性味があってシャープな身のこなしが圧倒的だとは思うものの、その後の4作品ではやや太り始めてきて、ティモシー・ダルトンやダニエル・クレイグと見比べると見劣りする。ムーアとピアース・ブロスナンはやや系統が違うというか、コネリーの「ムーアのボンドは俺の演じてきたジェームズ・ボンドのパロディのように感じる」というのがファンもムーア自身もまた感じていたことだろう。

そのコネリー自身も『ネバーセイ・ネバーアゲイン』では自身のボンドのパロディになってしまった感があり、多くの作品でボンドを演じた人ほど、作品ごとにランクの高い低いが当然出てくる。――その意味では、たった一本(及びゲスト出演の『0011ナポレオン・ソロ2』)しかボンドを演じておらず、不評だったため一本でお役御免となり前任者がカムバックすることになった、と誤解されがちなものの、ショーン・コネリーの後任という圧倒的に不利な条件を跳ね返して素晴らしいボンド像を示して見せたジョージ・レーゼンビーこそを、『女王陛下の007』のピーター・ハント監督の言う通り、“最高のボンド役者になる可能性を持っていた男”として評価すべきだろう。

『007』シリーズ全25作のうち、完成度の高さという観点でベスト5を挙げるならば、

『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)
『007/ゴールドフィンガー』(1964年)
『女王陛下の007』(1969年)
『007/慰めの報酬』(2008年)
『007/スカイフォール』(2012年)

あたりだと思うが、コネリーとクレイグの平均打率の高さに対して、代打で一打席ながら2人に引けを取らないスマッシュ・ヒットを放ったレーゼンビーも語り継がれるべきボンド役者なのだ!

文:谷川建司

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