夏だ！ ホラーだ!!『ゾンビーバー』だ!?「かわいい×こわい」の究極融合でパリピを地獄に落とすアニマル・ホラー

酷暑に変わり種ホラー・コメディを

夏といえば、ホラー。ホラーといえば、ゾンビ。そしてゾンビといえば……そう、ビーバーだ。

あまりに突飛な発想だが、今回紹介する映画『ゾンビーバー』（2014年）には、その名の通りゾンビとビーバーをかけ合わせた新怪物“ゾンビーバー”が登場。そのアイデアとゾンビーバーのかわいらしいデザインが大評判となった、変わり種のホラー・コメディである。

『ゾンビーバー』© 2014 ZOMBEAVERS, LLC. All Rights Reserved

なお“ビーバー”という言葉には、“齧歯目ビーバー科の動物”を指す一般的な意味合いのほか、ここでは少々お伝えしにくい“性的なスラング”としての意味合いも含まれている。本作品内でも後者の用法を交えた下ネタ全開の会話劇が繰り広げられるため、苦手な方はご注意願いたい。

噛まれた人間はゾン……ビーバーに！

とある片田舎を走行中のトラックから、積み荷の医療廃棄物が転倒落下。川に落ち、流れ着いた先で、勢いよくドラム缶から噴き出したその内容物は、近くでダムを作っていたビーバーたちを、たちまち怪物に変身させてしまった。

一方、湖畔のロッジを訪れていた、ジェン、メアリー、ゾーイの三人組と、彼女らを追いかけてきたサム、トミー、バックの男性陣。浮かれ気分で馬鹿騒ぎしている一同のもとに、ゾンビのビーバー、すなわちゾンビーバーの影が忍び寄る。

気性は残忍にして凶暴、ゾンビならではの耐久力と、ビーバーならではの前歯を誇り、噛みついた相手をゾンビならぬ“ゾンビーバー人間”に変えてしまう、恐怖のげっ歯類・ゾンビーバー。群れで襲い来る彼らを前に、若者たちは一人、また一人とあちこちを齧られ、命を落としていく。果たしてこの事態を収拾する術は残されているのだろうか……。というのが本作の概要である。

『ゾンビーバー』© 2014 ZOMBEAVERS, LLC. All Rights Reserved

実は最強？ 怖かわいい殺人アニマル

本作の目玉“ゾンビーバー”には、3DCGではなくマペットが用いられている。じたばたと顔や手足を振り回す、作りモノ感丸出しなゾンビーバー人形。さすがに安っぽさは否めないものの、それはそれとしてずんぐりむっくりしたフォルムには愛嬌があり、この映画独自のゆる～い雰囲気を出すことに成功している。ただかわいらしいだけでなく、個体数とタフネスで人間に勝り、執念深く、意外と頭も回るという、ホラーモンスターとしての怖さ・手に負えなさが、作中での活躍でしっかり描写されている点も好印象だ。

ストーリーは「田舎で若い男女が、殺人鬼の襲撃に遭う」というオーソドックスなもの。ただし、本作の殺人鬼はゾンビのビーバーであるという点が、今までの作品とは大きく異なる（似たような作品があっても困る）。また、“ゾンビーバーがその強靭な前歯を用い、木や電線を切断して人間側への妨害工作を図る”モチーフを活かした展開の数々や、“一体だれが生き残るのか、最後まで絶妙に先が読めない”お約束外しなど、本筋は王道でも細かい部分で気が利いている。この辺り、往年の低予算ホラー映画好きならば、よりいっそう楽しめることだろう。

『ゾンビーバー』© 2014 ZOMBEAVERS, LLC. All Rights Reserved

この手の映画にはつきものとはいえ、登場人物の多くがロクデナシであることや、繰り返しになるが下品なジョークがしばしば飛び交うことが、特に観る人を選ぶポイントか。が、そういった低俗さや下らなさは、同時に本作の長所でもある。あまり小難しいことを考えず、ただ軽いノリで、ビールやポップコーンをお供にワイワイガヤガヤ楽しむのにうってつけの作品。それが『ゾンビーバー』なのだ。

文：知的風ハット

『ゾンビーバー』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「危険度MAX！アニマル・パニック特集」で2022年8月放送