ソファのくせに人を撲殺! ストイックに殺りまくる“つぶらな瞳”の殺人鬼コメディ『キラーソファ』

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ライター:知的風ハット
ソファのくせに人を撲殺! ストイックに殺りまくる“つぶらな瞳”の殺人鬼コメディ『キラーソファ』
『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

不思議な魅力を持つヒロイン! 悪霊が仕込まれたソファ!!

幼い頃から、身の回りの男女をことごとく虜にしてきたという魔性の女、フランチェスカ。本人の意思とは無関係に、そして不自然なまでに多くの人間を魅了する特異体質によって、彼女の身辺には常にストーカーめいた変質者が絶えなかった。ところが、フランチェスカに強い執着心を示していた男の一人・フレデリコが、つい先日「変死体となって発見された」との情報が彼女の耳に入る。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

時を同じくしてフランチェスカの元に、ちょうど注文していたソファが届く。だが実はそのソファ、オカルトに傾倒していたフレデリコが死の間際にこっそり細工を施し、“ディブク”と呼ばれる悪霊を仕込んだ、世にも恐ろしいマジックアイテムだったのだ。そうとは知らぬフランチェスカの自宅では、さっそく怪奇現象が発生。自我を持つ家具“キラーソファ”は、フランチェスカの恋人や、彼女に言い寄る異性を中心に襲い始める。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

その怪力と、内蔵のスプリングを駆使して、男衆を血祭りに上げていくキラーソファ。さすがに驚いたフランチェスカは、親友のマキシや、一連の事件を追う捜査官のグレイビーとグレープ、そして霊能力者の血を引くマキシの祖父・ジャックに、問題の解決策を相談する。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

だがその過程において、誰もが予想だにしなかったソファの正体と、己の出自や特異体質に関する、驚くべき秘密が明かされる……。

殺人ソファというトンチキなテーマに反してストイックに殺りまくる!

「世にも恐ろしい殺人ソファが、あなたの住まいを支配する!」とまあ、のっけからトンチキなテーマをぶつけてくる新作ホラー映画、それがこの『キラーソファ』だ。「これまた奇怪極まりない作品が現れた」とお思いになられたかもしれないが、この広い世の中には“殺人プレス機”や“殺人冷蔵庫”、“殺人こたつ”に“殺人避妊具”の映画までもが存在しているため、相対的に見れば本作は、むしろ大人しいアイデアの部類に属するだろう。それもそれでどうかと思うが。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

さて、この『キラーソファ』だが、このどこか愛嬌すら感じられる殺人家具のビジュアルや、コメディ・ホラー映画めいたコンセプトとは裏腹に、“良くも悪くも思ったよりシリアス”な一本だ。“ヒロインが発作を起こした霊能力者を放置して駆け出すシーン”や、“キラーソファが繰り返しマッチの火を吹き消すシーン”のようなジョークはときたま挟まるが、基本的には真面目に、そして淡々と物語は進行する。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

また、目や口のようなパーツを持ちながら終始無機質・無表情のキラーソファは、少なからずマスコット感を放つポスターのイメージとは違ってなかなか不気味。小さな家屋の中を我が物顔で徘徊するそのシルエットには、思いのほか圧迫感がある。人の言葉は話せるものの、決してつまらないジョークを飛ばしたり軽口を叩いたりすることなく、さながら殺人マシーンのごとく寡黙に活躍してくれる様も、個人的には好印象だ。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

ソファのアイデンティティーすら投げ出したゴリ押しの体当たり殺人!

一方で、キラーソファの“襲い方”についてはやや物足りなさも覚える。たとえば、本格的な行動に出たキラーソファが“手始めにヒロインの彼氏を後ろから襲う”シーン。舞台は“キッチン”で、何も知らぬ彼氏のすぐ目の前にはちょうど口を開いた“オーブンレンジ”なんて小道具までお膳立てされている。そんなホラー映画的には非常に美味しい環境で、キラーソファは上述のシチュエーションをおよそ無視した“ゴリ押しの体当たり”により相手の足を粉砕する。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

同様に、本作には“家具の怪物”というアイデアを生かした見せ場が少なめだ。キラーソファがスプリングを使って人を刺したり、高所に登ったりするシーンはいくつか見られるものの、手近なところに置いてあった◯◯◯◯で相手を撲殺、なんて原始的な手法まで持ち出す。ゆえに“殺人ソファ”という個性的な題材に反して、山場のユニークさには欠けてしまっている。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

とはいえ、ソファとしてのアイデンティティーを投げ出してまで純粋な暴力に走ったキラーソファの、ならず者じみた粗野なスタイルは逆に面白かったため、これはこれでアリなのかもしれない。

『キラーソファ』© 2018 Mad Kiwi Films LTD, All Rights Reserved

そしてストーリーは粗もありつつ、この手の映画にしては練られていて、クライマックスには“ちょっとした意外な展開”が待ち受けているため、諸々ひっくるめて全体的には楽しめた。さすがに全編を通して漂うインディー感は否定できず、むしろそこがもっとも観客をふるいにかけるポイントになるかもしれないが、普段から低予算ホラー映画に慣れ親しんでいる方ならば、特に問題視することでもないだろう。

ここまであれこれと書き連ねてきたが、とにかく本作、ソファだけに腰を据えて鑑賞していただきたい。

文:知的風ハット

『キラーソファ』は、2020年7月17日(金)よりAmazon Prime Videoほか各動画配信サービスにて1か月間限定でオンライン上映リリース

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『キラーソファ』

フランチェスカは、事件に巻き込まれ行方不明になった知人の所有する一人掛けソファを譲り受けることに。だがそのソファは呪われていて、変わった男たちを魅了するフランチェスカに恋をしてしまう。殺人鬼と化したソファは彼女の身も心も独占しようと、家を訪れる人間に次々と襲いかかる! つぶらなボタンの瞳、快適な座り心地からは想像できない残忍な手口、そして想像を超える機動性。果たして悪夢のような恐怖から逃れることはできるのか?

制作年: 2019
監督:
出演:
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