闇司法と警察の横暴を暴く! 傑作法廷映画『弁護士ジョリー』インド映画界TOP俳優アクシャイ・クマール主演

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ライター:松岡環
闇司法と警察の横暴を暴く! 傑作法廷映画『弁護士ジョリー』インド映画界TOP俳優アクシャイ・クマール主演
『弁護士ジョリー』

インド映画界で最も稼ぐ男アクシャイ・クマール

現在のインド映画界で最も稼いでいる俳優は、アーミル、シャー・ルク、サルマーンの「3大カーン」ではなく、実はアクシャイ・クマールである。<Forbes>による「世界で最も稼ぐセレブ2020」にもインド人俳優としてただ1人ランクイン、52位を獲得している。アジア人俳優としては、もう1人ランクインしているジャッキー・チェンが80位というのだから、そのすごさがわかるだろう。

アクシャイ・クマールは1981年にデビューしたので、キャリアはもう40年超。一時は主演・助演を選ばず年間10本以上の作品に出まくり、庶民のヒーローとなっていたが、2008年の『Singh Is Kinng(シンは王様)』の大ヒットあたりからトップスターの仲間入りを果たした。だが、大スターとなった現在でも、コンスタントに年間数本の作品に出演しているという、ボリウッドきっての「本数で稼ぐスター」なのだ。

すでに150本を超えるアクシャイの出演作の多くは、コメディやアクションなどの娯楽要素満載作品だが、そんな中で、社会派とも言える光る作品も何本かある。日本でも公開されて好評を得た『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018年)や、『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画』(2019年)など、最近は女性のエンパワーメントを支える男性役が多いものの、社会の不正義に対して闘う人物を演じた作品も精彩を放つ。本作『弁護士ジョリー』(2017年)も、そんな1本なのである。

インド警察の横暴! 近年の社会問題が映画にも登場

とはいえオープニング・シーンでは、インドで10年生修了時に実施される全国テストらしき場で、堂々とカンニングを指導してしまうのだから、主人公ジョリーは社会の不正義に手を貸しているではないか、と言われてしまいそうだ。実はジョリーは弁護士資格を持ってはいるものの、事務所開設費用が捻出できず、高名な弁護士の万年助手に甘んじている男。何とか独り立ちを……ということから、カンニング指南などもしながらお金を貯めている最中なのだ。そんな中、つい出来心で依頼人の金を一時無断借用してしまい、それで事務所開設は実現したものの、手ひどい報いを受けてしまう。と、前半3分の1あたりで結構ショッキングな事件が起きる。

だが、そこからジョリーは深く反省して立ち直り、真の「弁護士ジョリー」となるため、その依頼人から頼まれた事件を究明していく。依頼人である女性の婚約者が手配中の過激派と名前が似ていたことから誤認逮捕され、女性との結婚式の日だけ仮釈放になったものの、再度刑務所に収監される途中で逃亡を図ったとして警官に射殺された事件で、明らかに警察のでっち上げだった。

ここで使われる警察用語が「エンカウンター」で、字幕では「遭遇戦」と訳が付けられているが、「超法規的殺人」と訳されることも多い。つまり警察側が、犯罪者や容疑者の抵抗や暴力に直面して身の危険を感じた場合、相手を撃ち殺せるという、法的手続きを踏まない殺人である。インドでは30年ほど前から顕著になったもので、今世紀に入ってから映画にもよく登場するようになった。本作では、これがいかに警察側に都合良く作用し、かつ乱用されているかが暴かれる。

これらは後半の裁判の中で明らかになっていくのだが、一見笑いを誘う小ネタを挟みながらも、緊迫したやり取りが繰り広げられる法廷シーンは本作最大の見どころだ。追求する原告の弁護士ジョリーに対し、大金をもらって悪徳警官を弁護する大物弁護士マートゥルは、あの手この手で老練ぶりを発揮しては言い逃れる。両者の間に立つ判事トリパーティは、近々挙行する娘の結婚式の件で頭がいっぱいの間抜けな裁判官かと思いきや、両弁護士に一歩もひけを取らない策士だったりして、何度か登場する裁判シーンは一瞬たりとも見逃せないほど刺激的だ。

『弁護士ジョリー』

実は続編? アクシャイ・クマールの演技力と人柄で大ヒット作に

それにしても、うまい脚本である。映画全体も山あり谷ありのストーリーになっているが、裁判シーンだけを取っても二転三転して、観客は翻弄されながら真実に迫っていく。こんな、一見コメディ、本質硬派な作品の脚本を書いたのは、監督も務めたスバーシュ・カプールで、元はデリー在住の政治記者という珍しい経歴の持ち主である。2006年からムンバイに移り、本格的に映画製作に取り組むようになったスバーシュ・カプールが世に認められたのは、2013年の『Jolly LLB(弁護士ジョリー)』から。そう、実は本作は、原題を『Jolly LLB 2』という続編なのだ。

ただし前作で主人公を演じたのはアクシャイ・クマールではなく、『ムンナー兄貴医者になる』(2003年)等のアルシャド・ワールシーで、舞台は首都デリーだった。今回はデリーの南東500㎞ほどにある地方都市ラクナウが舞台となり、同じジョリーというあだ名で呼ばれてはいるが、前作のジョリーとは異なる男が主人公、という設定である。ただ、トリパーティ判事のキャラクターだけは前作から引き継がれ、劇中でジョリーと初めて顔を合わせた時にトリパーティ判事が「デリーに兄弟がいるのか?」と聞くのは、それを踏まえたギャグとなっている。

そういうわけで、今回も悪徳警官や金まみれの大物弁護士らをコミカルかつ辛辣に描いた『弁護士ジョリー』だが、それに加えてカシミールを舞台とする過激派の暗躍と警察の腐敗、またその過激派の正体を見事に暴くシーンなどがインド人観客を惹きつけ、前作を上回る大ヒットとなった。アクシャイ・クマールの演技はもちろんのこと、脇を固める俳優たちも、判事役のソゥラブ・シュクラー、大物弁護士役のアンヌー・カプール、ジョリーの妻役のフマー・クレイシーら芸達者が揃っている。さらには、彼らの父親世代を演じた老俳優たちのピリリとした演技も、本作の完成度を高めている。

エンドロールのメイキング映像も楽しいが、大スターであるのに終始気さくなアクシャイ・クマールの人柄が、現場を盛り上げていたようだ。いろんな監督がアクシャイを起用したがるのがわかる、その演技力と人柄も目撃できる『弁護士ジョリー』である。

文:松岡 環

『弁護士ジョリー』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:ハマる!インド映画」で2022年7~8月放送

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『弁護士ジョリー』

弁護士のジョリーは念願の事務所を持つ資金が足りず、警察相手に裁判を起こそうとしている女性ヒナから大金を騙し取ってしまう。すぐに返金するつもりだったがヒナは自殺。罪悪感に苛まれたジョリーは彼女が訴えようとしていた事件を調査し、彼女の夫を謀殺した悪徳警官に対する訴訟を開始する。

監督:スバーシュ・カプール

出演:アクシャイ・クマール フマー・クレイシー ソゥラブ・シュクラー

制作年: 2017

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