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三代目JSB・登坂広臣『ホットロード』『ハイロー』『雪の華』=登坂トリロジー【祝・ØMIツアー千秋楽!】

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ライター:#加賀谷 健
三代目JSB・登坂広臣『ホットロード』『ハイロー』『雪の華』=登坂トリロジー【祝・ØMIツアー千秋楽!】
『雪の華』ダウンロード販売中、デジタルレンタル中
【初回仕様】ブルーレイ プレミアム・エディション:7,689 円(税込) DVD:4,389円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
©2019映画「雪の華」製作委員会

「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」(以下、「三代目JSB」)のヴォーカル登坂広臣が現在、「ØMI」名義でソロアリーナツアー「ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER…”」を開催中だ。

今回は、「LDHとイケメン」をテーマに考察を続ける筆者が、登坂がこれまでに主演した映画作品3作を振り返りながら、「ANSWER…」シリーズの集大成となるソロアリーナツアーへ繋げたコンセプチュアルな表現世界を探る。

“登坂広臣トリロジー”の意義

登坂広臣の主演映画作品は意外と多くなく、『ホットロード』(2014年)と『HiGH & LOW THE RED RAIN』(2016年)、そして『雪の華』(2019年)の3作品。しかし、その全てがかけがえなく、生々しく、リアルな手触りを持っている。

俳優業からはすでに「引退」したと公言する登坂だから、私たち臣君ファンは、このかけがえのない3作品をことあるごとに見返すことしかできない。その作品群はファンにとっても、そしてきっと登坂本人にとっても非常に貴重な記録になっている。

でも、登坂はなぜこの3作品に主演したのか? と翻って考えることはできる。2010年にメジャーデビューした「三代目JSB」のヴォーカルの傍ら、映画に出演してみた、くらいの心意気ではなかったはず。こう名付けてよければ、彼が主演した“登坂トリロジー”には、カメラの前に立った登坂の真実の姿が映し出されているからだ。

新たなソロアリーナツアーが開催中の今、改めて登坂のアーティスト性と映画作品の連関を探りながら、登坂トリロジーを見返すのは、それなりに意義がありそうじゃないだろうか?

マスターピースとしての『ホットロード』

登坂トリロジーを順番に振り返ろう。第38回日本アカデミー賞で堂々の新人俳優賞を受賞した『ホットロード』を観たとき、とても初主演とは思えなかった。全編がまるでマスターピースのように、登坂の魅力が余すところなく、かつ大胆に散りばめられている。

『ホットロード』
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発売元:バップ
©2014「ホットロード」製作委員会 ©紡木たく/集英社

稲村ケ崎のガソリンスタンドでの出会いの場面、和希(能年玲奈)を下から覗き込む春山(登坂)のさりげない表情。彼女を後ろに乗せて江ノ島大橋を走り抜ける早朝の透明感。暴走族の総頭であるトオル(鈴木亮平)が車内で和希の手に唇を付けるとき、春山の鋭い眉間の美しさがフロントガラス越しに映る。画面下手からは、暴走族仲間が吹かすバイクのガス煙が立ちこめ、幻想的な雰囲気に。

あるいは、春山が総頭候補になり、歴代が乗り継いできたバイクを見せられ、堤防に寝そべって、青空に腕を突き出し、手を握る瞬間。春山役を通して登坂が見せるすべての表情や仕草が、この手の中に握られ、マスターピースとなる。

江ノ島の灯台が心もとなく照らす波打ち際。雨で濡れた湘南のアスファルト、夜光にきらめく海面。こうした映画的トポスの数々が、登坂広臣というひとりの俳優に永遠の灯火を与える。春山が死にたくないと、力を振り絞って呟く病室では、幻影のように揺らめく総頭としての凛々しい横顔が映えた。まるで登坂の美しいファルセットを聴いているようだった。

『ホットロード』公開時の舞台挨拶で、登坂が「表現者としての幅が広がった」と話していたように、本作は主題歌との関係性から登坂のアーティスト性にも深い影響を与えている。作品自体、尾崎豊からインスピレーションを受け、代表曲「OH MY LITTLE GIRL」が効果的に使われている。役作りの上で登坂が意識したのは、何より尾崎の音楽世界だった。2021年5月14日放送回の『smash.presents MUSIC BLOOD』(日本テレビ系)では、本作の撮影をしみじみ追想しながら、「OH MY LITTLE GIRL」の見事なカヴァーを披露。尾崎が楽曲に込めた想いを想像し、汲み取った繊細な歌声によって、新たなカヴァーナンバーとした。映画出演がこうして時を経て自らの音楽性に溶けいった好例だろう。

音楽的に計算され尽くした『HiGH & LOW THE RED RAIN』

音楽的な観点から撮影手法がより工夫されるのが、続く2作『HiGH & LOW THE RED RAIN』だ。LDHユニバースとも言うべき、日本エンタメ最大スケールの世界観で描く「HiGH & LOW」シリーズのスピンオフ作品である本作は、全編がプロモーション的に撮影されている。

激しく降り注ぐ雨の中、齋藤工演じる雨宮三兄弟の長男の最期を見届けるクライマックスでは、弟を演じるTAKAHIROと登坂によるツイン・ヴォーカルの主題歌「THE RED RAIN」が流れる。エンディングにはバイクを走らせるふたりの映像に合わせて「TIME FLIES」がパワフルに熱唱される。それぞれのテーマ曲に合わせた早いカット割と登坂が最も映えるカメラ・ポジションが計算され尽くした、スタイリッシュなミュージック・ビデオを見ているような気分になる作品だった。

登坂の“歌い出し”に期待してしまう『雪の華』

トリロジーの完結作(と便宜上させていただく)『雪の華』は、もはや登坂の魅力を引き立たせるイメージムービーかのよう。中条あやみ演じる美雪が、悠輔(登坂)が働くカフェの窮地を救うために100万円を払ったあと、迎えた朝の場面。小鳥が囀る、曇天の日。アパートのバルコニーに出た悠輔の、白シャツの艶やかさ、手にした青いマグカップの鮮やかな色と手触り。そのすべての要素をまとめあげるように、下手へじっくり向かうカメラのドリー移動が、何だかじんと心に響いてくる。

そのあと、妹弟が忙しなく登校の支度をする室内に、ベランダからさりげなく入ってくる絶妙なタイミング。何気ない日常にすべてが調和したこの画面を、一体どれだけ深く、甘いため息をつきながら見守ったらいいのだろうか。

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©2019映画「雪の華」製作委員会

100万円がきっかけで恋人契約を結んだふたりの「大イベント」として訪れるフィンランドでは、どれもこれもがベストショット。爽やかな日差しの下、路面電車の車窓を覗く登坂の横顔の美しさひとつ取ってみても、素直に感動してしまう。中でも、正装したふたりが街中を歩いているシーン。後ろからバイクが走ってくると、車道側の彼女をそっと引き寄せ、前を見つめる瞬間の表情。紺色のスーツに、第3ボタンまで開けてはだける白シャツの色気。さっと彼女の手を握るジェントリーな対応力。一瞬だけれど、わずかに彼の髪を靡かせる風を感じるこの瞬間、いよいよ主旋律が聴こえてくるようで、登坂の“歌い出し”をまだかまだかとつい期待してしまう。

フィンランドから帰国後、契約が終了し後味の悪い悠輔が、ふとカフェの窓外を眺めると、落ち葉がはらはらと風に揺らめく。外側から窓越しに映される登坂の表情に、落ち葉が何枚も何枚も重なる。これは、まるで「三代目JSB」のミュージックビデオの一片のようだったけれど、これ以上言葉を尽くす必要はなさそうだ。

ソロアリーナツアーでの完結

2018年、全国を回った初のソロアリーナツアー<HIROOMI TOSAKA LIVE TOUR 2018 “FULL MOON”>ではライブの幕間に、闇取り引きされたダイヤモンドを盗み出す主人公を熱演する登坂の映像が流れた。『雪の華』公開後の2020年には、「LDH PERFECT YEAR 2020 SPECIAL SHOWCASE RYUJI IMAICHI / HIROOMI TOSAKA」で、やはり本人が出演する映像をライブの基本に据えていた。

「HIROOMI TOSAKA」改め「ØMI」名義で2021年にリリースされた「ANSWER…」シリーズでは、壮大な世界観を打ち出した。同年5月12日リリースのEP作品『ANSWER…SHADOW』では「影」に、10月15日リリースのシングル『ANSWER… SHINE』では「光」にそれぞれスポットが当てられ、二元論的なテーマ性が設定された。こうしたコンセプチュアルな世界観を表現するためには、ヴォーカル・パフォーマンスの他にストーリー性のある映像が必須であり、各楽曲のミュージック・ビデオでは、登坂トリロジーで養った俳優スキルが相当際立っている。

トリロジーに主演していた頃の登坂が、今は遠い過去のようだけれど、その記憶を慈しみ、愛おしめばこそ、全国のドームやアリーナに響く美声が、より鮮明に聴こえてくるはず。「ANSWER…」シリーズ完結作となるフルアルバム『ANSWER…』(2022年2月2日リリース)をひっさげて現在開催中のソロアリーナツアー<ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER…”>が、登坂トリロジーをも同時に、ほんとうの意味で完結させるのではないかと、半ば妄想しながら考えている。

来る4月28日(新曲「ANSWER 〜LIVE FOREVER〜」リリースのちょうど1ヶ月後)に愛知で行なわれる千秋楽公演で、アーティスト登坂広臣が表現する「ANSWER」(答え)を、筆者も客席のひとりとして見守り、夢見たい。

文:加賀谷健

「ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER…”」ファイナル公演は日本ガイシホール(愛知)にて4月27日(水)、4月28日(木)開催

『ホットロード』はU-NEXTほか配信中
『HiGH & LOW THE RED RAIN』はHuluほか配信中
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