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アプリで出会ったイケメンは「なりすまし」だった! Netflix『ラブ・ハード』はクリスマス“泣笑”ラブコメ

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ライター:#BANGER!!! 編集部
アプリで出会ったイケメンは「なりすまし」だった! Netflix『ラブ・ハード』はクリスマス“泣笑”ラブコメ
Netflixオリジナル映画『ラブ・ハード』独占配信中

「出会い系」という負のイメージ

日本では「マッチングアプリ」という呼称が一般的だろうか、ガラケー/ネット掲示板の黎明期に登場し、2000年以降にSNSの普及によって爆発的に拡大・進化した、いわゆる“出会い系”サービスのひとつである。90年代に援助交際などの温床となってしまったことで、出会い系という呼称に対する負のイメージが拭えないまま現在に至っている。

時は流れて2021年、恋活・婚活の場となっているマッチングアプリでも、性被害や詐欺被害に遭うユーザーは少なくないようだ。男性狙いの投資系詐欺アカウントなどは、CGみたいな過剰加工写真とテンプレ化が難しい日本語プロフィール、すぐにアプリ外へ誘導しようとするメッセージ内容が防御壁となっている割に、被害者は後を絶たない。しかし、女性ユーザーはそういった犯罪グループだけでなく、いわゆる“ヤリモク”の一般ユーザーやストーカー予備軍などにも(男性以上に)警戒しなければならず、運営企業が謳うセキュリティが確保された安全な出会いのチャンスを享受することは困難である。

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理想の男性×イケメンなりすまし

この手のアプリに関しては言いたいことが山ほどあるが、とりあえずNetflixで独占配信中のラブコメ映画、『ラブ・ハード』を観ていただきたい。まるで安っぽいセックストイみたいなタイトルだが、その意味は最後まで観れば分かるので、まずはキャラクター紹介から。主人公のナタリーはLAに住むWEBライターで、デートアプリで運命の男性を探し続けている女性。これまで右スワイプした相手はいっつも期待はずれ(プロフ詐欺だったり妻子持ちだったり急に消えたり)だったが、その甲斐あって(?)“いつも花嫁付添人”という悲惨なペンネームで酷いデートの内容を記事化して、好調にページビューを稼いでいる。

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そんな“ハズレ”をネタに記事を書く毎日に疲れはじめた頃、ジョシュというアウトドア好きのクッソイケメン(30歳)とマッチングが成立する。しかもメッセージのやり取りは大いに盛り上がり、しょっちゅう電話でダベるイイ感じの関係に発展。気取ったところがなくジョークも粋で、文化系趣味もバッチリ合うジョシュに、ナタリーはどんどん夢中になっていく。

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サラッと本人確認も済ませたりしつつ時は過ぎ、季節はクリスマス目前。ジョシュがポツリとつぶやいた「こっちでクリスマスを一緒に過ごせたらなあ」という言葉を真に受けたナタリーは、なんと4800キロ離れたニューヨーク州レークプラシッドにあるジョシュの実家にアポなし突撃! しかし、理想のイケメンとの対面にブチ上がる(予定だった)彼女の前に現れたのは、クソイケなプロフ写真とは似ても似つかない地味なナード系男子だった……。

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ニーナ・ドブレフとジミー・O・ヤンの好相性

ナタリーを演じるニーナ・ドブレフは、ティーンを中心に人気を集めたドラマシリーズ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』(2009~2015年)に主演。インスタのフォロワー数2500万人を誇り、最近ではシットコム『Fam(原題)』(2019年)で笑いのセンスも披露している。対するジョシュ役は、香港系アメリカ人のジミー・O・ヤン。大ヒットドラマ『シリコンバレー』(2014~2019年)で名を揚げ、『クレイジー・リッチ!』(2018年)などに出演し現在人気急上昇中のコメディ俳優だ。

ジミーは13歳で渡米し、BETを観て英語を学んだというくらいブラックカルチャーに染まった青春時代を過ごす。デジタルネイティブ世代ということもあってブリンブリンなアメリカを全身で浴びた結果、アジア系のベタなキャラ作りと相反するような堂々とした横ノリのトークスキルを獲得。『シリコンバレー』の準レギュラー昇格をきっかけにスタンダップのステージから飛び出し、今まさに人気コメディ俳優としてスターダムを駆け上がっている真っ最中である。

そんなドブレフとジミーが主演する『ラブ・ハード』。中身はアレだが顔はイケている幼馴染タグの写真でキャットフィッシング(なりすまし)していたことがバレてしまったジョシュが、両親に対して恋人のふりをしつつクリスマスを共に過ごしてもらう代わりに、ナタリーにタグの攻略法を伝授するという無茶な流れに進んでいく。終始「バレたらヤバい」シチュエーションの連続で緊張感をキープしていて非常に小気味いいのだが、ジョシュは美しい人間を前すると固まってしまうようなキョドりキャラでもないし、喋りもめちゃくちゃ面白く充分魅力的なので、あまり非モテ男に見えないというのが正直なところだ。

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余談だが、ジョシュが暮らすレークプラシッドはNY州の北東部、カナダ・モントリオールの少し下あたりにある有名な避暑リゾート地で、人口2400人くらいの風光明媚なド田舎。そこでアウトドア店を営むジョシュの父親を演じているのは日系アメリカ人俳優ジェームズ・サイトウで、ミドリ・フランシス主演のクリスマス青春ロマンス『ダッシュ&リリー』(2020年)に続いてのNetflix登板である。中国系のアラカン俳優、たくさん候補いるだろうに……。

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マッチングアプリの切実なリアリティ

冒頭、ロマンス映画の名作『ラブ・アクチュアリー』(2003年)に言及するシーンがある。『ラブ・ハード』というタイトルは、そんな名作ロマンスと、物語の重要な伏線になっている某名作アクション映画から取られたと思われるが、本作はトンデモ展開だけでなく、アプリユーザーならば思わず苦笑いしてしまうであろうキツい現実も盛り込まれているのが重要。これは「どうせヤリモクだらけの出会い系ネタでしょ」みたいな態度では絶対に理解できない、わずかな奇跡に期待してスワイプし続けるアプリユーザーだけが知っている切実なリアリティだ。

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当然ながら、ルッキズムは改善・解消すべき深刻な社会問題である。しかし、見た目に自信が持てないという意識自体に羞恥を覚えがちということもあってか、個人の問題として片付けられてしまうことが多い。そもそも、美醜によって差別を受けたと感じても明確な証拠を提示することはかなり難しいわけだが、口に出すのも憚られる言葉がいまだにゴールデン帯のバラエティ番組のタイトルに混入するような国では、いっそう解決困難な問題と言えるだろう。

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本作で描かれる“なりすまし”は悪質ではあるものの、そんな行為に走る心理を考慮すると、なかなかセンシティブな問題でもある。しかし、アメリカではリアリティ番組(MTVの『キャットフィッシュ』など)が作られるほどネタ化してもいて、その大半は幸せな結果にならないのではと思いつつ、大事なのは内面だろ! というド正論をエンタメとして消費するたくましさというか、そのハートの強さには学ぶところもなくはない、いや多分ない、かもしれない。

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ともあれ、おそらく本作を見たらジミーのことがもっと知りたくなると思うので、Amazon Prime Videoで配信されている彼のスタンダップ『人生はお買い得』(2020年)もぜひチェックしよう。

『ラブ・ハード』はNetflixで独占配信中

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『ラブ・ハード』

デート事情を執筆しているLAの記者が、アプリで出会った完璧な男性。クリスマスにアポなしで東海岸へと飛んだはいいが、理想の彼はなりすましだった。

制作年: 2021
監督:
出演: