花の都パリが抱える“不都合な現実”とは?
パリ郊外に存在する、都市再開発を目前に控えた居住棟エリアの一画=通称「バティモン5」。治安の悪いエリア一掃を目論む行政と反発する住人たちが、ある事件をきっかけに、ついに衝突する――。
前作『レ・ミゼラブル』(2019年)でその名を世界に轟かせたフランスの新進気鋭監督ラジ・リが、“排除”と“怒り”の衝突を描いた緊迫の最新作『バティモン5 望まれざる者』が、2024年5月24日(金)より全国公開となる。
すでに突入している人もいるGWから、眼の前に迫った夏に向けて長期休暇をとることも多くなる季節、この機会に日常のサムシングを改めて見つめ直そうという人も多いだろう。
ということで、“これからの自分”の参考にしたい<女性の勇気が社会を動かした映画>4作品を厳選してご紹介。理不尽なこと、納得がいかないこと、なんとか変えていきたいこと……日々の生活につきまとう様々な困難にもめげず、前を向き続けた女性たちの姿に勇気をもらうこと必至の傑作たちを是非チェックしてみては。
暴かれる「パリの素顔」とは?『バティモン5 望まれざるもの』
2024年5月24日(金)より全国公開
労働者階級の移民家族たちが多く暮らす、パリ郊外(=バンリュー※)の一画<バティモン5>。老朽化が進んだこのエリアでは、再開発をするために取り壊し計画が進行していた。だが、前任者の急逝で臨時市長となったピエールは、自身の信念のもと、バティモン5地区の復興と治安を改善する政策のスピードアップと強行を決意! しかし、あまりの急展開と、横暴なやり方に住民たちは猛反発、やがてバティモン5に長年居住する住民側と、市長を中心とした行政側が、ある事件をきっかけについに衝突、激しい抗争へと発展していく――。
前作『レ・ミゼラブル』では、監督が生まれ育ったパリ郊外の犯罪多発地区モンフェルメイユを舞台に、そのエリアを取り締まる犯罪防止班(BAC)と少年たちの対立を描いたが、本作で市民が闘うのは<行政>。それまで移民のケアスタッフとして住民に寄り添いながら慎ましく働いてきた女性アビーが、権力が押し付ける横暴な政策に対し、「ただ待っているだけでは何も変わらない」と心を決め、自ら先頭に立つことを決心する。
「黙っていても何も変わらない」――決意の後、憑き物が落ちたかのように、自らと周囲の正義のために、怯まずただ前進していく女性アビーの逞しい姿は、観る者に勇気をもたらすはずだ。