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映画監督・池田エライザの“今後のビジョン”は?「日本人だからって国内で作り続ける必要はない。そこは大いに、ずかずかと行けたら」【第3回】

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ライター:#稲田浩
映画監督・池田エライザの“今後のビジョン”は?「日本人だからって国内で作り続ける必要はない。そこは大いに、ずかずかと行けたら」【第3回】
『夏、至るころ』池田エライザ監督

監督デビュー作『夏、至るころ』が2020年12月4日(金)に公開を控える女優・池田エライザは、いつ、どんなきっかけで映画や音楽といったカルチャーに強い関心を持つようになったのか? 故郷・福岡のシネコンで受けた映画の洗礼から、10代のカリスマと呼ばれたモデル時代、女優として焦りを感じたハリウッド作品や目指すロールモデルの存在、そして今後のビジョンに至るまで、たっぷり語っていただいた。

「SNSは用法容量を守らないと危ない」

―影響を受けた作品に挙げていただいた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年)は比較的新しい作品ですね。

これはもう、マーゴット・ロビーの熱演に尽きますね。観て、初めて「女優辞めよう」って思った。「無理無理! 辞める辞める! こんなことやれる女優がいるならやってらんないよ!」って。なんか、そんな芝居されちゃったら……もちろん全うできるように頑張っているけど、(現場と現場を)縫うように行って「今日どっちの現場だっけ?」とか言っている自分が、すっごい恥ずかしくなっちゃって。別に体を酷使することが良いっていうわけじゃないけど、誰かの人生を代弁するわけじゃないですか。それで大成功と言わしめるだけの仕上がりを、ちゃんと努力で見せてくるって、すごいなと。これは視点が監督っていうことよりは、普通に女優として焦った映画だったというか。

―『裸足の季節』(2015年)はトルコの映画なんですね。

―映画はどれくらいのペースで観ていますか?

―そういう子供時代の体験から出発して、映画が自分にとって特別な存在になったきっかけは?

SNSに対して懐疑心みたいなものが出てきたときかな? 中1くらいからiPhoneで、もうずうっとケータイを触ってるのが当たり前で。自分が選ばなくても端末がエンターテイメントを提案してくれていたから、あんまり頭を使っていなかったんですよね。「ああ、これは面白いんだ、観てみよう!」みたいなことを中学生からずっとやってきちゃってたので、こういう取材のときにも「本当に好きで観たっけな?」っていうのが判らなくなってしまって。「自分で自分の好きなものについて、考えて観たことないかも?」と思ったときに、ちょっとSNSに対して焦りを感じたっていうか、用法容量を守らないと危ないなって思った。それから積極的に映画を観るようになったかも。それが19歳くらいですね。高校生のときはまだ、一生懸命“JKのカリスマ”をやっていたので。

 

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―なるほど。

でもそこからは早かったです、SNS離れは。もうずっと19~ハタチくらいから、そろそろ辞めたいんだけどなっていうのは事務所と相談していて、2020年になってTwitterを辞めて……より自分の好きなものに触れていられる時間が長くなったというか。それまでずーっと仕事の帰り道とかでも、特に仕事の反省もせず、すぐにケータイを見てたんですけど。それがなくなって、「今日、ああいうこともっとできたなぁ」といったことを話すようになりましたね。

「音楽や映画では、違う文化を持った人たちが共感し合えている。あまり構えすぎずエンタメや芸術に打ち込めたら嬉しい」

―今後のエライザさんのキャリアについて聞かせてください。それこそジョン・カサヴェテスやクリント・イーストウッドなど、俳優が監督をやることは海外だと珍しくないですよね。

そうですね、それこそ『レディ・バード』のグレタ(・ガーウィグ)も、『フランシス・ハ』(2012年)とかで女優もやりつつ『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019年)を作ったり、すごいですよね! 私もやれる限りはやるし、足りなかったら勉強するし、臨機応変に対応しますっていう感じです。そしてアイデアみたいなところはちゃんと出す。今回も“普通に”監督をやったわけで、特に甘やかされることもなく、“なんか女優だから”っていうのが通用しない。それが楽だった! だから、これから何をやっていくかはまだ分からないけど、決める必要もない時代じゃないですか。……って思ってます。

―予算などの条件もあるかとは思いますが、今後、映画監督としてやっていきたいことや夢はありますか?

夢は、やっぱり……たとえば『ブラック・ミラー』(2011年~)みたいな世界観の作品を、まずはコンペに出したい! って思います。ディストピアじゃないけど、ああいう作品もやってみたいなと思って、シノプシス(※大まかなストーリー)を書いたりはしていますね、人に見てもらえるように。そこは賢く、言いたいことを美しい形で映画にしていきたいですね。特に“日本から離れたい”みたいなことはないんですけど、日本人だからって日本で作り続ける必要もないし。せっかく世界中に素敵な建設物とかがあるわけだから、そこは大いに、ずかずかと行けたら良いと思います。合作とかもやってみたいですね。

―海外のまったく違うシステムの中で違う作りのものをやってみたり、それもまた学びになるでしょうね。

音楽をやっていると本当に国籍は関係ないなと感じるし、そういう人が多いじゃないですか。日本の役者って、どこかコンプレックスが強くて「海外に行くぞ!」って肩肘張った感覚があるんだけど、お芝居も無国籍だと思うし。もっと肩肘張らずにいろんな国の人が一緒にお芝居できるプラットフォームがあっても良いんだろうけど、そういうビジネスは苦手だから。そういう作品が撮れたら良いな、観てみたいな、と思うので、自分で撮りたいですね。違う文化を持った人たちが共感し合えてるわけだから、あまり構えすぎずにエンタメとか芸術に打ち込めたら嬉しいなって。

 

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「映画は自分の原体験を思い出させてくれる。そこに自分を形成する過去がある」

―映画にまつわる思い出の場所はありますか?

『夏、至るころ』の舞台挨拶で、福岡の<ユナイテッド・シネマ トリアス久山>に行くんです。トリアス久山には日本で最初にできたコストコが入ってるんですけど、子供の頃よく行ってたんですよ、6人家族で週5くらいのペースで。そこにでっかい映画館の施設があるんですけど、ちょうど中2をこじらせた14歳くらいのときに自転車を飛ばして行って、生まれてはじめて「いちばん近い(時間の)映画を観させてください」って言って。「じゃあ『ポケモン』ですね!」って(笑)。でも、ポケモンが出てくる前の風景の美しさで号泣するっていう思い出があって。いまだにポケモンは実景だけで泣く。わぁってなるんですよね、胸がワクワクして。

 

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―そのトリアス久山に舞台挨拶で行くんですよね。

はい、初めて。めっちゃ恥ずかしいですね、毎日そこに行ってたわけだし。でも、めっちゃ嬉しい。泣くと思う、私。だってトリアスが上映リストに載ってたのを見て、ちょっと泣きそうになりましたもん(笑)。

―良いお話が聞けました(笑)。では最後に定番の質問ですが、ご自身にとって“映画”とは?

今日ここで言ったことを明日も同じように思っているかわからないですけど、やっぱり“自分の原体験”を思い出させてくれる、一つの媒体だと思う……かな? でも、明日は純粋に“娯楽”になっているかもしれない。

―でも一人の人間の原体験を作れるというのは、すごいことですよね。一生覚えていたりするわけで。

すごい。覚えているのに、みんな思い出さないんですよね。ひさしぶりにそこの引き出しを開けてくれるというか。でも絶対、そこに自分を形成する過去がある。近所のおばちゃんとの約束とか、そういうものを思い出させてくれる存在ですね。

取材・文:稲田浩

写真:嶌村 吉祥丸

『夏、至るころ』は2020年12月4日(金)より渋谷ホワイト シネクイント、ユナイテッド・シネマキャナルシティ 13ほか全国順次公開

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『夏、至るころ』

翔(しょう)と泰我(たいが)は高校最後の夏を迎えていた。二人は幼い頃から祭りの太鼓をたたいてきた。だが、泰我が突然、受験勉強に専念するから太鼓をやめると言い出す。ずっと一緒だと思っていた翔は急に立ちすくんでしまう。自分はどうしたらよいのか、わからない……。

息子の将来を気にかける父と母、やさしい祖父と祖母、かわいい弟。あたたかい家族に囲まれると、さらに焦りが増してくる翔。ある日、祖父のお使いでペットショップを訪れた翔は、ギターを持った不思議な少女・都(みやこ)と出会う。彼女は音楽をあきらめて東京から故郷に戻ってきていた……。

制作年: 2020
監督:
出演: