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日本の偉大な漫画家たちへのオマージュに注目!夢枕獏×谷口ジローの傑作漫画のアニメ映画化『神々の山嶺』パトリック・インバート監督インタビュー

日本の偉大な漫画家たちへのオマージュに注目!夢枕獏×谷口ジローの傑作漫画のアニメ映画化『神々の山嶺』パトリック・インバート監督インタビュー
『神々の山嶺』© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

フランス映画界の祭典、第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞し、フランスで大ヒットを記録した日本原作のアニメーション映画『神々の山嶺(いただき)』が全国公開となる。夢枕獏×谷口ジローの傑作漫画「神々の山嶺」(集英社刊)のアニメ映画化に挑戦したのは、フランスの映画監督、アニメーターのパトリック・インバート監督。数多くのテレビシリーズに携わり、映画『アヴリルと奇妙な世界』(2015年)、『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』(2017年)ではアニメーション監修を担当し、2018年には、『とてもいじわるなキツネと仲間たち』バンジャマン・レネールと共同監督し、セザール賞にて長編アニメーション賞を受賞している。2022年7月8日(金)の公開に先駆け、監督・共同脚本のパトリック・インバートに繊細なタッチで描かれた山の描写や、日本文化からの影響について話を聞いた。

『神々の山嶺』パトリック・インバート監督

『神々の山嶺』あらすじ

「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」といういまだ未解決の謎。その謎が解明されれば歴史が変わることになる。カメラマンの深町誠はネパールで、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は、羽生を見つけ出しマロリーの謎を突き止めようと、羽生の人生の軌跡を追い始める。やがて二人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる。

『神々の山嶺』© Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

「1,500ページにも及ぶ大作を90分に纏めるのが難しかった」

―原作者である谷口ジローさんは、フランスでも多くのファンがいらっしゃいます。谷口さんの漫画はパトリックさんをはじめ、フランスのクリエイターの中でも人気なのでしょうか、クリエイターたちが影響を受けていることなどはありますか?

もちろん有名です。有名な方ですが、私自身は谷口さんの原作漫画から直接的な影響を受けたというわけではないですが、日本の文化や日本から非常にたくさんの影響を受けたというのは間違いないと思います。それから日本のアニメファンというのは、フランスにも、ヨーロッパにもたくさんいますので、谷口さんのこの原作からの影響というよりは、日本のアニメファンというのが元々いるので、そこから影響を受けていると思います。

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―谷口さんの原作をアニメーション化することは、非常に大変だったと思いますが、どのようなお気持ちで臨まれましたか?

非常にこのアニメ化は難しいところがたくさんありました。どんな作品であれ、映画にするという作業は非常に難しい事の連続なのですが、原作が1,500ページにも及ぶ大作なので、それを90分に纏めるということは、谷口ジローさんのスピリットや基本的な考え方を、そのまま忠実にしながら、90分に短くするという作業が非常に難しかったです。ただ谷口さんの視点などは尊重して、そして谷口さんの他の漫画を読んだりして、谷口さんのことよりもっと理解するようにしました。人物の描写や、人物の心理的な深い部分については、より複雑なので、谷口さんについて理解することによって、脚色することができました。

―山の描写のために、丹念に研究をされたと伺いました。リアルな山を描く上で気をつけたことは何ですか。

自分が登山家ではなかったので、まずは山についてのそれぞれのテーマでインターネットや本で調べ、色々な資料や知識を得ました。それから、実際に登山をする人をスタジオに呼び、彼にどうやって山に登るのか、具体的なジェスチャーや身振り手振りを加えて色々教えてもらいました。それから、アルプスと違い、ヒマラヤの登山というのは、日本やフランスの山を登るのとも少し違い、厳しい部分があるので、そういった部分をリアルに、忠実に作っていく必要がありました。SF映画とも違って、できるだけ忠実に、リアルに、写実的に描くようにということに気をつけながら作りました。

『神々の山嶺』© Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

「日本の偉大な漫画家たちへのオマージュ」

―日本の街並みや料理、仕草など日本の描写が印象的でした。表現するにあたり工夫した点はありますか。また、どのようなアドバイスを受けましたか。

先ほどの山登りと一緒で、日本文化の側面についても、描くにあたり、インターネットでたくさんの資料や画像など、様々なものを参考にしました。それから、フランス人で日本文化のファンという方はすごく多くて、スタッフの中にも日本に住んでたことがある人がいました。コンサルタントをしてる友人で、フランスに20年住んでいる日本人の方もいます。日本文化、あるいは日本における人間関係、上下関係や死生観、日常生活では靴を脱ぐというような居住条件など、彼らからいろいろ教えてもらいました。日本の住居では、畳は一畳の大きさが決まってるんだよ、ということを教えてもらうところから始まりました。

―深町の本棚にスタジオジブリや寺田克也さん、松本大洋さんの本がありました。居酒屋ではロック・パイロットの曲が流れていました。これらはどなたのアイディアですか。

これらを描写したのは、もちろん、そういった日本の偉大な漫画家たちへのオマージュです。漫画家たち以外の本も、写真家の本など、深町の本棚にはたくさん並べているのですが、そういったところに気づいていただけたというのはすごく嬉しいです。ありがとうございます。

『神々の山嶺』© Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

―好きな日本の映画作品は何でしょうか?アニメ、実写問いません。

高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』です。

―日本の漫画でアニメーション化してみたい作品はありますか。

浦沢直樹さんの「20世紀少年」です。

―日本で劇場公開されることについて、どのようなお気持ちですか。

まもなく日本で公開になるのはすごくうれしいですし、緊張もします。アニメ大国において、私の作ったアニメ作品が公開されるというのは、幸せでもあり、ちょっと怖い気持ちもあります。

『神々の山嶺』© Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

―日本の観客にメッセージをお願いします。

この映画が日本で公開され、日本の皆様に見ていただけることを大変光栄に思います。この作品は原作が日本で生まれ、小説が漫画になり、それがフランスに渡り、フランスでも出版され、そしてフランスで映画化されました。映画はフランスと日本の文化の懸け橋のような作品となっています。私自身日本の芸術や映画からも大変影響を受けており、今回このような形で今まで日本からいただいていた事に対して御恩返しが出来るということを大変喜んでおります。この映画が日本の皆様にも気に入っていただけたらこの上ない喜びです。

『神々の山嶺』は、2022年7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

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『神々の山嶺』

「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」といういまだ未解決の謎。その謎が解明されれば歴史が変わることになる。カメラマンの深町誠はネパールで、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は、羽生を見つけ出しマロリーの謎を突き止めようと、羽生の人生の軌跡を追い始める。やがて二人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる。

監督: パトリック・インバート
原作:「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
日本語吹き替えキャスト:堀内賢雄 大塚明夫 逢坂良太 今井麻美

制作年: 2021