ヒマラヤで機密文書を奪還せよ! ゲーム業界出身監督、役所広司主演『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』

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ライター:齋藤敦子
ヒマラヤで機密文書を奪還せよ! ゲーム業界出身監督、役所広司主演『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』
『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

役所広司ら演じる山岳救助隊がヒマラヤの“デス・ゾーン”に挑む!

世界最高峰エベレストを映画にするといえば、1996年に実際に起きた遭難事故を映画化した『エベレスト 3D』(2015年)や、夢枕獏のベストセラーを平山秀幸が映画化した『エヴェレスト 神々の山嶺』(2016年)がある。どちらも主人公は登山家で、世界最高峰への登山がテーマだが、『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』は、アッと驚く山岳アクション、しかも、人類が生存することが不可能と言われるデス・ゾーンを舞台にしている。凄い。が、いったいそんなことが可能なのか。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

映画は、こんな風に始まる。“ヒマラヤの鬼”と呼ばれるジアン(役所広司)を隊長に、カナダ人の隊員ジェームズ(ノア・ダンビー)、ヘリパイロットのハン(リン・ボーホン)、本部を守るネパール人のスヤ(ババック・ハーキー)、チベット人の山岳医タシ(プブツニン)からなる山岳救助隊<チーム・ウィングス>は、カトマンズに本拠を置いて、日々、危険な山岳救助に携わっている。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

ある日、インドの特別捜査官を名乗る兄弟から、エベレストのデス・ゾーンに墜落した飛行機に残された機密文書を回収してくれという依頼が入る。2日後に開催される<ヒマラヤ公約>を締結する会議に提出するはずの平和の鍵を握る文書だという。タイム・リミットは48時間。危険なミッションに気乗りのしないジアンだが、財政難に苦しむチームのために引き受けることにし、優秀だが無鉄砲な新人シャオタイズ(チャン・ジンチュー)を連れ、ハンの操縦するヘリでエベレストに向かうのだが……。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

初めに断っておくが、この映画は世界最高峰のエベレストを舞台にすることが目的で作られたアクション映画であって、エベレストという場所の特異性が見どころである。実際、エベレストの山腹まで取りに行かなければ、平和が脅かされるような秘密文書があるとは思えないし、謎のインド人兄弟も胡散臭いことこのうえないが、この設定はすべてエベレストに行くためのマクガフィンなので、素直に受け入れること。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

野暮なツッコミはご法度! ゲーム畑出身の若手監督ならではの鮮烈アクション

監督のユー・フェイはゲーム畑出身で、本作で監督デビューしたという変わり種。なので、この作品もゲーム感覚いっぱいのストーリー展開にアクションが満載されている。デス・ゾーンの薄い空気、断崖絶壁、ブリザード、クレバスと、いかにもエベレストらしい背景の中で、登場人物たちに次々に困難が降りかかる。ただし、ゲーム感覚とはいえ、すべてが荒唐無稽というわけではない。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

例えば、救急隊のヘリコプターは浮力の関係で6200メートル以上高くは飛べないので、隊員たちはいったん6200メートル地点に着陸し、そこから登攀するのだが、実はこうすると、最も危険なクレバス帯を通らずにすむのだ。さすがエクストリームスポーツが趣味でエベレスト登頂経験のある監督のこだわりである。ちなみに6200メートルというのは2013年のエベレスト登頂で、下山中に歩けなくなった三浦雄一郎氏がヘリに乗った地点に相当する。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

隊員の装備が見るからに軽すぎるだろう、とか、厳寒の高地で顔を出していると凍傷にならないか、とか、突っ込みどころは沢山あるのだが、アクション映画にリアルを求めるのは余計なお世話。ほとんどの観客がリアルだと思っている『エベレスト 3D』だって、本物のエベレストではなくニュージーランドで撮影されたのだし、メスナー兄弟のナンガ・パルバット登頂とその後の遭難を描いた『ヒマラヤ 運命の山』(2009年)もナンガ・パルバットではなく、カラコルム山脈でさえなく、ヨーロッパ・アルプスで撮影された。高所での撮影はそれほど過酷で、大きな制約を受けるのだ。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

ドキュメンタリーを除いて、実際にエベレスト山麓5200メートル地点まで行って撮影したのは平山秀幸の『エヴェレスト 神々の山嶺』くらい。本作も山の部分はカナダでロケしていて(町中や空港などはカトマンズでロケ)、だからこそ、これだけの撮影が可能になったとも言えるだろう。

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』©Mirage Ltd.

プロデューサーはジョン・ウー作品で知られるテレンス・チャン。監督が新人なぶん、彼が映画を引っ張っていった感がある。アクションが大ぶりで、細かいところに拘泥しないスピーディなところが、いかにもジョン・ウーっぽく、これでもかこれでもかと盛られたアクションが楽しい。そして後半、シャオタイズがエベレスト行きに執念を燃やしていた理由が明らかになると、仰天の結末が待っている。

文:齋藤敦子

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』は2019年11月15日(金)より全国公開

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『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』

標高8848メートル、氷点下83℃にもなる、世界最高峰・エベレストの山頂付近、通称デスゾーンに、ヒマラヤ地域の平和のカギを握る重要機密文書を載せた飛行機が墜落。
その3日後、ヒマラヤ救助隊「チーム・ウィングス」に、多額の報酬と共に機密文書を探す依頼が入る。
チーム・ウィングスは“ヒマラヤの鬼”と呼ばれるジャン隊長中心に、 エベレストで遭難した恋人を探すシャオタイズ、ヘリパイロット・ハンらが日々危険なミッションに臨んでいた。
財政難に悩むチーム・ウィングスは危険と分かりながらも依頼を受け、死に至る場所・デスゾーンに向けて決死の登頂を始める。
残された時間は48時間。様々な思いと陰謀が絡まる中、 世界最高峰の頂には、予想もつかない事態が待ち受けていた――。

制作年: 2019
監督:
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