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どう撮影した? 新旧「ワンショット映画」ヒッチコック『ロープ』から『1917 命をかけた伝令』、最新作『ソフト/クワイエット』まで解説

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ライター:#谷川建司
どう撮影した? 新旧「ワンショット映画」ヒッチコック『ロープ』から『1917 命をかけた伝令』、最新作『ソフト/クワイエット』まで解説
『ロープ』© 1948 Transatlantic Picture Corp. Renewed 1975 United Artists Television, Inc. All Rights Reserved.
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ヒッチコックの元祖ワンショット映画『ロープ』

今でこそ様々なパターンで作られるようになった“ワンショット映画”だが、実は最も早くこれに取り組んだのはサスペンスの神様=アルフレッド・ヒッチコック監督だった。

『ロープ』© 1948 Transatlantic Picture Corp. Renewed 1975 United Artists Television, Inc. All Rights Reserved.

作品は『ロープ』(1948年)で、これはヒッチコックにとって初のカラー作品であるとともに、全編、マンハッタンのある高層アパートの一室で起こる物語という制約を課している。加えて、80分の全編がワンショットで撮られているように見える工夫をこらした実験的作品だった。

主人公は、自分たちが他よりも優れた人間であり完全犯罪だってできるということを証明したいだけの理由で、大学の同級生を殺した二人の青年。――二人は、殺した青年の部屋に、その青年と親しかった人々を招き、死体を隠した衣装箱をさりげなく置いたままの状態でパーティを開き、誰も死体に気がつかずにパーティを楽しむ様子を見届けることで自分たちの超人性に酔おうというのだ。

古典映画ならではの手法

物語は、招かれた客の一人で、青年たちを教えていた大学教授のジェームズ・スチュアートがやがて二人のたくらみに気が付いて……という具合に進んでいく。撮影では、当時10~15分でフィルムを架け替えなくてはならなかったため、フィルムチェンジのタイミングで人物の背中とか蓋を大写しにして、その同じカメラポジションから新しいフィルムに切り替えて繋いでいくという手法が用いられた。

ほかにも、同時期の古典的名作の一本、西部劇の『真昼の決闘』(1952年)でも、ワンショットで撮っているわけではないものの、85分間で起こる物語を実際に85分で描くというリアルタイム劇の構成が話題となった。

大昔の映画だからと思って高をくくっていると、実は意外と今の映画よりも革新的な手法がとられていたりするので、たまには古典的映画も観てほしいところだ。

ロープ (字幕版)

『ロープ』 Blu-ray: 2,075 円 (税込) / DVD: 1,572 円 (税込) 発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント © 1948 Transatlantic Picture Corp. Renewed 1975 United Artists Television, Inc. All Rights Reserved. *2023 年 5 月の情報です。

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