香取慎吾が市井監督を深掘り!?『犬も食わねどチャーリーは笑う』知られざる舞台裏から次回作の構想も【インタビュー後編】

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ライター:石津文子
香取慎吾が市井監督を深掘り!?『犬も食わねどチャーリーは笑う』知られざる舞台裏から次回作の構想も【インタビュー後編】
香取慎吾

壮大な夫婦喧嘩を描いたブラック・コメディ『犬も食わねどチャーリーは笑う』でダメ夫を演じた香取慎吾と、市井昌秀監督。二人のトークの後半では、お互いの魅力を分析してもらった。そして話題は、香取が思い描く“理想の映画”に広がっていく。

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

「草彅剛が演じたほうが良かったんじゃ…(笑)」

―香取さんの周りには裕次郎のような、悪い人ではないけれど鈍感な人はいますか?

香取:草彅剛は近い存在ですね。今初めて思ったけど、ちょっと近い(笑)。しょっちゅう「何やってるの!?」って言いたくなるんだけど、満面の笑みで「え~?」って言いながら、注意されたことにも気づいていない。でも周りが見えてなくて。

―裕次郎はいいひとですもんね。

香取:だから彼が演じたほうが良かったんじゃ(笑)。

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

―監督は裕次郎に近いタイプなんですか?

市井:間違いなくそうです。僕は石川県に住んでいて、今日も駅まで妻に送ってもらったんですが、服を替えた方が良いってことでもめて。結果的に今着ているのは息子のシャツなんです(笑)。息子はもう中3で、身長は僕を超えているので。そんな小さいことでも喧嘩をすると、ちょっと愛情が……。だからさっき控室で「ごめんね」って電話したんですが、あの瞬間は気遣いとか愛情が不足しているんだな、って思ったりするわけです。

香取:監督のことなんですよ、この脚本がやっぱり。

市井:平凡な人でも、追い詰められると愛情を忘れてしまうというか、薄まってしまう。周りにもよくいるし、自分にもそういう瞬間はあるんです。そんな、誰しもに起こり得る人物を描きたかった、というのはあります。

香取:(自分とは)違うんですよね。

市井:香取さんは懐が深い、気遣いの方なので。

香取:そうなんです。僕は良い男なので(笑)。だから「本当にこいつダメだな」って思っていたけれけど、そこを面白がれました。

香取慎吾

「市井監督には“初心感”がある」

―市井監督から見た、香取慎吾の映画俳優としての魅力は?

市井:個人的に本当に嬉しかったのは、顔合わせの時に「香取さんの中にも、どうしようもないところが小さくてもきっとあるだろうから、そこを何とか抽出してください」ということをお伝えしたんです。ダメな部分を虫眼鏡で拡げるように、と。それを現場でその通り、香取さんの持つかっこよさを消して演じていただけたことが、まず一番嬉しかったですね。その芝居のセッションで、信頼していただけているんだなと思いました。

演技の技術的なことで言うと、香取さんとはミュージックビデオの監督をさせていただいたのが最初の仕事だったんですが(「FUTURE WORLD featuring BiSH」)、そこですごいなと思ったのは、本当に香取さんがアイドルであり、かつ“ゼロイチ”を作るアーティストでもあるから、どんなことをしたいか、というこちら側の意図とかも全部わかる。もうカメラの位置からサイズ感、空間をスタートと共に全て把握していて、空気を変えちゃうんですよね。その空間把握能力がすごいなと思いました。

―では主演俳優・香取慎吾から見た、映画監督・市井昌秀の魅力は?

香取:映画が好きで、いろんなことをやりたいとか、いろんな思いがすごく詰まっている監督。現場では、市井監督がどうしたいのかを周りのみんなで作っていく感じがして。監督は事前に言っていたことが、現場で変わることも結構あるんです。すごくこだわりがあったはずなのに、急に「やっぱりいいです」って言って、みんなズコーッてなったり(笑)。

市井:そうでしたっけ? でも、それも信念のもとに。

香取:みんな「どうすんだ、どうすんだ」ってなってたのが、「やめんのかい」ってなったりする。その完璧じゃない感じが、みんなで映画を作っているんだという感じがして。友達同士で映画を作っているわけじゃないけれど、でも僕も含めて、周りのスタッフの皆さんが監督にとても注目するんですよね。それが新鮮だった。

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

―いい意味で、アマチュア感がある?

香取:そう、なんか初心感がある。絶大なる力を持った監督の一言でみんなが動く、というのとは違って、みんなでその場で答えを探っていく感じ。監督とスタッフの方たちは、どのくらい一緒にやってるんですか? 僕は初めてご一緒する方が多かったけれど。

市井:今回は比較的若いメンバーが多かったんですが、カメラマンの伊集守忠は、僕が自主映画を撮り始めた時から一緒です。彼は監督志望だったのが、カメラマンになったんです。

香取:自主映画、なるほど。他の方々もその頃からですか?

市井:ヘアメイクさん、衣裳さん、記録さんとかは『台風家族』(2019年)などで一緒ですし、年齢も同世代。僕は自主映画時代を含め、ずっと自分で脚本を書いて監督しています。でもそれは、結局は助監督をやってきていないから。原作物を過去にやって、また別の喜びを感じたことはありますが、今は原作があるものから良い映画を生み出す職人的な監督ではないという自覚があるんです。一方、オリジナルなら自分の世界のことなので、自分が監督するのが一番だという思いもあります。

香取:それをやっぱり感じてたのかもしれない。

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

―香取さんが以前にお仕事を一緒にした白石和彌監督や、阪本順治監督は助監督経験者なので、全然違いますか?

香取:そう。全然違う。

市井:ほんと、すみません(笑)。

香取:現場で、市井監督はどうするんだろう? って人が集まってくると、その圧に押し潰されそうになりながらも、監督は「やっぱりやめます」って言う(笑)。でもやめるなりに信念はあって、「そうか、そっちにしたいんだな」って、監督が切った舵にみんながグワーっとついていく。

―面白いですね。ちょっと違う意味で、カリスマ性があるというか。

香取:そうそう。

市井:全然狙っているわけじゃないんだけど、明らかに助けられた上でここにいさせてもらっているんです。

香取慎吾

「街行く全ての人が映画になるようなストーリーを持っている」

―またいつか二人で作品を一緒に撮るとしたら、どういうものを作りたいですか?

市井:香取さんに拘らず僕が最近考えていることではあるんですが、スーパーマン的な超人がいるからこそ、普通の人間を描ける瞬間もあるな、と思っているんです。でもハリウッド的なスーパーヒーローを描きたいわけではなく、全然役に立たない能力、割とどうでもいい能力を持っている人がいい。例えば、スイッチを切るようにいつでも寝られるとか、5秒までならタイムトラベルできるとか、大して生活には役立たないんだけど、ある能力が突出している人を香取さんが演じて、そのことによって周りの人が変わっていく、という。まだストーリーとしてはまとまっていないんですが。

香取:スーパーマンの一種なんですね。

市井:キャラ物かもしれないけど、あえてそれを香取さんに演じてもらうのが良いんじゃないかと思うんです。僕はあまのじゃくなんだと思うんですが、そういう無駄な能力を持っている人がいいですね。

香取:“リアル”というものが本当はどうなのかわからないけれども、僕は今回の裕次郎のように今まで演じてこなかったような役の映画が、観る側としてが好きなんですよね。だから、次はもっと何もない話でもいいかもしれない。

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

―今作のように大喧嘩をしたりしない、ということですか?

香取:そう。それをどこまで映画で削れるのか、ということに興味がある。僕は街行く人を見るのが好きなんですが、全ての人が映画になるようなストーリーを持っていると思っていて。かといって、それを大袈裟な話にするのではなくて、何が起きるでもないように1時間半や2時間が経過する、という映画をやってみたいですね。

―市井監督となら、それが出来そうですね。

香取:そうなんです。

市井:僕の映画はパーソナルなことを描いているので、何もない1時間半の最後に、茶柱が立った、というくらいの変化しかない、というのも良いかもしれませんね。

香取:そうそう。ぜひやってみたいです。

香取慎吾 市井昌秀監督

取材・文:石津文子
撮影:落合由夏

『犬も食わねどチャーリーは笑う』は2022年9月23日(金・祝)より全国公開

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『犬も食わねどチャーリーは笑う』

この物語の主人公、裕次郎と日和は結婚4年目の仲良し夫婦? というのは(もちろん)表向き。鈍感夫にイライラする日和は、積もりに積もった鬱憤を吐き出さなきゃやってらんないわー! と、出会ってしまったのは、SNSの〈旦那デスノート〉。そこには妻たちの恐ろしい? 本音、旦那たちが見たらゾッとするようなエグイ投稿がびっしり書き込まれていた。そしてある日、裕次郎もその存在を知ってしまう!「これって俺のことか?」気になる投稿のペンネームはチャーリー。日和と一緒に飼っているフクロウの名前もチャーリー…ってことは! 夫婦ゲンカのゴングの鐘が、いま鳴り響く!!

監督・脚本:市井昌秀
音楽:安部勇磨

出演:香取慎吾 岸井ゆきの
   井之脇海 中田青渚
   小篠恵奈 松岡依都美 田村健太郎
   森下能幸 的場浩司 眞島秀和 徳永えり
   峯村リエ 菊地亜美 有田あん 瑛蓮
   きたろう 浅田美代子 余貴美子

配給:キノフィルムズ/木下グループ

制作年: 2022

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