香取慎吾主演『凪待ち』白石和彌監督インタビュー!震災から復興する撮影地・石巻で感じたこと(2/2)

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ライター:BANGER!!! 編集部
香取慎吾主演『凪待ち』白石和彌監督インタビュー!震災から復興する撮影地・石巻で感じたこと(2/2)
『凪待ち』©2018「凪待ち」FILM PARTNERS
超問題作『麻雀放浪記2020』が公開中の白石和彌監督に、香取慎吾主演の2019年6月28日(金)公開最新作『凪待ち』についてインタビュー!ロケ地に選んだ宮城県石巻での地元の方々との秘話に加え、「日本アカデミー賞」会場での是枝&上田監督とのエピソードも語ってくれた。

あえて描かれない登場人物たちの“背景”にも想いを馳せる

『凪待ち』©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

―本作の前半と後半では全く違う人生が垣間見えたり、ボタンの掛け違いで運命が変わってしまうといった描き方をされていましたが、そういった部分へのこだわりは?

白石:脚本作りの中で、例えばその登場人物に何かあったとき「そのとき何があったんだ?」みたいなことを回想で描いたりなど、今回はそういうことはしませんでした。見せるところは見せて、見せないところはそんなに見せなくても、俳優の力やちょっとしたセリフ回しで見せきれるんじゃないかという思いがありました。変に妥協せず、説明しすぎず。映画って、観てくれるお客様がいろいろ頭の中で想像してくれることもあるはずだから。それをちゃんと信じて作ろうよっていうのは、色んな人と話しましたね。

―郁男と恋人の亜弓(西田尚美)の馴れ初めも描かれていないですし、こちらも想像させられる部分があります。

白石:そうですね、音尾(琢真)くん(が演じる村上)は亜弓の元旦那なんだけど、今の再婚相手とはどこで出会ったのかな? とか、いろいろ考えちゃうかも。そういう背景がなんとなく分かる、それが今回撮っていて楽しかったところですね。

『凪待ち』©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

―本作でリリー・フランキーさん演じる小野寺は、なかなか個性的な良いキャラクターだと思いました。あの人物像はどうやって生み出したのですか?

白石:(リリーさんには)いつも大体ヒドい役をやってもらっていたので、“今回だけは良い役を”という思いで脚本を作り始めました。僕の田舎にもああいう面倒見のいい人って結構いるので、そういう人たちを思い出しながら。リリーさんって、会うと非常に都会的なんだけど、割と都会でも片隅にいたり、田舎がすごく似合ったり、不思議な魅力のある人なので、今回はやっぱりあのポジションにいてほしいなという感じかな。俳優としては、リリーさんと香取さんが一緒にお仕事をするのが初めてだったんです。ただ、(リリーさんが)構成作家時代からラジオを一緒にやってたり、すごく仲が良くて。だったら、このタイミングで香取さんと俳優として絡んでもらうのもすごい面白いだろうなと、そういう思いもあってお願いしました。

「地元の漁師さんが言った言葉を、そのまま映画の中に投影させてもらった」

『凪待ち』©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

―石巻での撮影はいかがでしたか?

白石:さすがに震災の後、まだ復興していない部分とか、整地している部分とか、防潮堤も今まさに作っていたり…。もちろん傷跡はあって、土木工事も行われているんだろうけど、町自体は活気を取り戻している、その熱気みたいなものが映画の力になってくれたのかな。そこにはやっぱり、震災の傷跡と「復興していこう」っていう部分と、復興途中だからこそ見えてくる闇の部分だったり、色んな顔を見せてくれたのが石巻だったので。もちろん映画の中で作っている部分も大きいんですけど、そういう意味ではこの町があったからできた映画という感じはしましたね。

『凪待ち』©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

―劇中「津波は新しい海を作った」というセリフが印象的でした。

白石:あのセリフは原作/脚本の加藤さんにお願いして入れてもらったんです。震災前まであの地域の海って養殖業が多かったんですけど、何度か取材をしていると「海に力がなくなってた」って言うんです。多分、養殖を増やして海に栄養がなくなっていたんだけど、地元の漁師さんたちが「この海はもう津波でも来なきゃなおんねえな」みたいに冗談で言っていたところに、あんなに大きな津波が来てしまって。もちろん、それで不幸になられた方や亡くなられた方が大勢いるので気軽に言えるセリフではないんですけど。でも、時間が経って新たに海で漁を再開したときに、津波は底の部分から根こそぎ上がるらしくて、海自体が新しい海として生まれ変わって震災前よりも海に力が戻っているって、地元の漁師さんから聞いたんですよ。それは、もしかすると海だけの話じゃなく我々人間にもそういう部分があって、傷跡だけがフィーチャーされるけど、そこで新たに人生や生活をやり直している人たちも、どこかで悲しみを乗り越えて強さを持っている部分って、やっぱりあるんじゃないかなっていう思いを込めたくて作ったセリフですね。だから地元の漁師さんが言った言葉を、そのまま映画の中に投影させてもらったっていう。

是枝・上田・白石……共に刺激を与え合う!「映芸ワースト3」

―話は変わりますが、日本アカデミー賞の会場では是枝裕和監督・上田慎一郎監督と写真を撮っていましたね。

白石:撮りましたね、“映芸ワースト”3人で(笑)

(注釈:雑誌『映画芸術』で毎年発表されるベスト&ワーストテン作品で、2018年のワースト1~3位が是枝監督、上田監督、白石監督作品だった)

―お二方から刺激を受けることはありますか? 『カメラを止めるな!』はインディーから一気に駆け上がり、是枝監督は今フランスで映画を作られています。

白石:メチャメチャありますよ、もちろん。あのときは「映芸ワースト、タイでしたね」って話をして、是枝さんは「もう映画を作れば必ず映芸ワーストになるんです」って。だから「白石くん『殿堂入りさせてほしい』って話しといてくんない?」って言われて(笑)。でも刺激ということで言うと、本当に上田監督もすごくナイスガイだし映画大好きだし、みんなやり方は違うけど同じく映画を作っているということで、僕はライバルというよりは仲間だと思っています。いろんな方の成功体験を見ながら、僕もまた300万円で映画を作ろうかな?とか、いろんなことを考えてやってます、本当に。

―映画作りのモチベーションは何ですか?

白石:「面白い映画をお客さんに届けたい」ということですね、基本エンタメをやっているつもりなので。あと助監督をやっていて映画が撮れない時期が長かったので、「白石に演出をしてもらいたい」と言われれば、どんな作品でもやりたいという思いもあります。このペースでやっていたらどこかで息切れするかなと思ったんですが、意外となかったです。まだ続いてますね、全然衰えないというか。映画って不思議なもので、一本撮ると、そこでネタとしてやり残したものが必ず生まれるんですよね。それが次への活力になっていくし、いい形で継続できているので良かったなと思っています。

―最後に『凪待ち』をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

白石:『凪待ち』は、香取慎吾さんが演じる男の“再生”を描く映画です。誰も見たことがない香取さんがスクリーンの中にいますので、ぜひ映画を観てください、よろしくお願いします。

香取慎吾が“堕ちきった男”を演じる話題作『凪待ち』 白石和彌監督インタビュー! (1/2)

『凪待ち』は2019年6月28日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

『凪待ち』白石和彌監督

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『凪待ち』

誰が彼女を殺したのか?なぜ殺したのか?
「愛」という名に隠された事件の真相とは…。
映画史上最も切ない暴力を描く、愚か者たちの衝撃のヒューマンサスペンス。

制作年: 2019
監督:
脚本:
出演:
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  • 映画
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