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磯村勇斗の初主演&監督作『ヌマヅの少女ハイジ』とは!? ゾンビ愛も炸裂のロングインタビュー【後編】

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ライター:#稲田浩
磯村勇斗の初主演&監督作『ヌマヅの少女ハイジ』とは!? ゾンビ愛も炸裂のロングインタビュー【後編】
磯村勇斗

2021年には17作品もの映画やドラマに出演、2022年は日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した実力派若手俳優・磯村勇斗。WOWOW開局30周年プロジェクト『アクターズ・ショート・フィルム』では初監督作「機械仕掛けの君」を手掛け、2022年7月8日(金)からは初主演作『ビリーバーズ』が公開される。

俳優から監督まで精力的に活動する磯村が、映画業界に関わるきっかけとなった原体験は何だったのか? ロングインタビュー後半でたっぷりと話を聞いた。

磯村勇斗

「初監督作は中学時代の壮大な短編」

―去年は短編映画『アクターズ・ショート・フィルム』の一遍「機械仕掛けの君」で監督にも挑戦されたとのことですが、映画を撮りたいという気持ちはずっとあったのでしょうか?

そうですね。映画を初めて撮ったのは中学生の頃で、『ヌマヅの少女ハイジ』という短編でした。ハイジとペーターとクララが僕の中学校にいて、クララは日本の最新医療のおかげでもう立ち上がれるようになっているんですが、学校内でいじめられてスイスに帰ってしまうんです。そこでハイジとペーターが彼女を連れ戻そうとスイスに向かう……という壮大なストーリー(笑)。ちなみに僕がハイジ役です。主演、監督、編集、カメラも担当しました。脚本はあるようでないのですが、指示をして友達と一緒に頑張りました。それを全校生徒の前で上映したら、遊び心のある作りが無事ウケまして。みんなが拍手をくれた瞬間に「俺は映画を仕事にするんだ!」と決めたんです。

磯村勇斗

―映画に対する原体験が、そもそも作る側としてなんですね。『ヌマヅの少女ハイジ』を撮ろうと思ったきっかけはあったんですか?

中学校のひとつ上に憧れの先輩がいて、その人が映画を作ってたんですよ。その姿を見て、俺もやってみたい! と。あとは父親の影響で子供の頃から映画を観ることが多くて、<午後のロードショー>などが大好きだったことも影響していると思います。その当時はレーザーディスクで、よく『スター・ウォーズ』シリーズ(1977年ほか)を観ていました。何が面白いのかはわからなかったけど、子供ながらにハマっていて。

午後のロードショーでは『トレマーズ』(1989年)を観たことを鮮明に覚えています。ケヴィン・ベーコンが好きで、放映されるとなったらテレビの前に張り付いていました。午後ローはスティーヴン・スピルバーグ監督などハリウッド作品もよく放映していたので、そこから今の感覚を得たというか。何を観ても新鮮だったので、僕の中の宝の時期です。

「ゾンビ映画はヒューマンドラマだと思っています」

あとは、兄貴と休日に映画を観るというのを2人で決めていて。レンタルDVDショップに行って、借りていくうちになぜか毎週ホラーばっかり手にとるようになってたんですよね。『SAW/ソウ』(2004年)とかのメジャーな作品が始まりではあったと思うんですが、いつか観た『バタリアン』(1985年)が衝撃的でずっと脳裏に残っていたのか、ゾンビ映画にどんどんハマってしまったんです。

磯村勇斗

『ゾンビ大陸 アフリカン』(2010年)は3本の指に入るくらいお気に入りの作品です。アフリカを舞台にしたゾンビ映画で、ジリジリと迫るゾンビの恐怖を広大な大地で表現していて。低予算映画なんですが食べられた足などのディティールをリアルに作っていたり、どうやって撮ったんだろう? という工夫がされているんですよ。饑餓だったり食糧難のような社会的なものを比喩している感じもあって、興味深い作品です。

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ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)もやっぱり面白かったです。ロメロ監督は人間のエゴや社会風刺を表現できるのがゾンビ映画だと言っているので、現代の闇だったりダメなところを取り入れやすい題材なんじゃないですかね。僕はゾンビ映画はヒューマンドラマだと思っています。人間の一番嫌なところ、本音が見える。それが面白い。結局は人間同士の争いになっちゃいますから。

―ホラー映画やゾンビ映画は洋画を観ることが多いですか?

そうですね。邦画は自分と近いのでなんかだか怖くて(笑)。海外のポルターガイスト的な作品は観られるんですが、ジャパニーズホラーは怖いですね。ホラー映画に限らず、洋画を観てしまう傾向があります。中でも『縞模様のパジャマの少年』(2008年)は定期的に観てしまう映画です。

19歳か20歳のときに初めて観て、物語の展開に衝撃を受けました。子供の目線からホロコーストを描いた作品なのですが、ドイツ軍側の子供と、囚われたユダヤ人の子供が出会うんです。子供たちはお互いの身分をわかっているんですが、子供だからこそ人間性で通じ合えるみたいな。ホロコーストがどういうものだったのかも分かるし、わけも分からず収容されることの悲惨さだったりをリアルに感じることができるので、とても刺さりました。結末がどうなるか分かっていても、いまだに何度も観てしまいます。

とはいえ日本で俳優をやっている以上、日本映画も観るようにしています。ただ、本当に映画好きな人の前だと知識量がなくて悔しいんですが、自分が好きなものへの情熱はちゃんと持っておこうと思います。

磯村勇斗

「映画は自分の感性を広げてくれる」

―監督業には今後も挑戦されますか?

もちろんです。自分の中で届けたいものが見つかれば、長編にも取り組みたいなと。いくつか温めているものはあるんですが、これでいいのか? と考え続けています。時代を捉えたものにしたいと思っていて。アイデア溜めはずっとしているんですが、膨らませられなくて止まってしまうことが多い。それは時間が必要なのか、インプットがもっと必要なのか、今はまだ分からないのですが。オリジナル脚本を書いて企画を通すのはまだまだ難しいので、これぞ! と勝負できるものが作れればと。

―とてもお忙しいはずなのに、すばらしいですね。

そういう時間が好きなんです。降りてきたらアイデアだけが止まらなくなるので書き溜めておくという、けっこう真面目な感じでやっていますよ(笑)。

映画は自分の感性を広げてくれるというか、新しい世界を見せてくれるので、想像力が豊かになります。実際にその国には行ったことはないけれど、行った気にもなれる。いろんな歴史も知れるし世界と繋いでくれるのが魅力なのでこれからもずっと関わっていきたいですね。

磯村勇斗

取材・文:稲田浩
撮影:大場潤也

ヘアメイク:佐藤友勝
スタイリスト:齋藤良介

kenichiのシャツ ¥24,000(サカスPR ☎︎03・6447・2762)、DISCOVEREDのニットベスト ¥39,600(ディスカバード ☎︎03・3463・3082)、All Bluesのブレスレット ¥53,900(エドストローム オフィス ☎︎03・6427・5901)、その他スタイリスト私物

『ビリーバーズ』は2022年7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

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『ビリーバーズ』

とある孤島で生活をする二人の男と一人の女。ニコニコ人生センターという宗教的な団体に所属している3人は、オペレーター、副議長、議長と互いに呼び合い、無人島での共同生活を送っていた。瞑想、昨晩見た夢の報告、テレパシーの実験、といったメールで送られてくる不可解な指令“孤島のプログラム”を実行し、時折届けられる僅かな食料でギリギリの生活を保つ日々。これらは俗世の汚れを浄化し“安住の地”へ出発するための修行なのだ。だが、そんな日々のほんの僅かなほころびから、3人は徐々に互いの本能と欲望を暴き出してゆき……。

監督・脚本:城定秀夫
原作:山本直樹
音楽:曽我部恵一

出演:磯村勇斗 北村優衣 宇野祥平
   毎熊克哉 山本直樹

制作年: 2022