• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • アンディ・ラウが記憶を失い大暴れ!『バーニング・ダウン 爆発都市』は“香港破壊路線ムービー”の真打ち!!

アンディ・ラウが記憶を失い大暴れ!『バーニング・ダウン 爆発都市』は“香港破壊路線ムービー”の真打ち!!

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#ギンティ小林
アンディ・ラウが記憶を失い大暴れ!『バーニング・ダウン 爆発都市』は“香港破壊路線ムービー”の真打ち!!
『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

アンディ・ラウのハードコア化を象徴する近作

「最近のアンディ・ラウ主演の現代アクション映画はハードコアだ! ハズレがない!」

こんなことが数年前から、ド派手な爆破シーンやカーチェイス、そして緊張感あふれる銃撃戦が三度の飯よりも大好きなアクション映画ファンの間で言われています。嘘だと思うなら、まずは騙されたと思って、母国では3D公開された製作&主演作『風暴 ファイヤー・ストーム』(2013年)を観てください。

この映画はクライマックス、香港の街中でアンディ扮する刑事たちと武装強盗団による大銃撃戦が勃発。作り手たちの『ヒート』(1995年)愛を濃厚に感じさせる派手な銃撃戦の最中、被弾した自動車が次々と爆破し地下のガス管に引火。その結果、大陥没が起きてディザスタームービー級の大惨事に発展する、というイイ意味で「そこまでやらなくても……」と思わせてくれる作品ですから!

アンディ主演の現代アクション映画のハードコア化は、彼が製作&主演を務めた『SHOCK WAVE ショック ウェイブ 爆弾処理班』(2017年)でさらに加速。この映画で彼は、香港警察EOD(爆発物処理班)のエキスパートを熱演。映画の中盤にテロリスト集団が、九龍と香港島の間を結ぶ長さ1.8 キロの海底トンネルを占拠。そしてトンネル内に1000キロの爆弾を仕掛け、中にいた約500人の市民を人質に取る。世界でもトップクラスに交通量の激しい、この海底トンネルが爆破したら、香港は壊滅状態になってしまう……。そんなデカいヤマを踏むテロ集団とアンディたち警察の戦いを描いた本作のクライマックスでもディザスタームービー級、いや完全にディザスタームービーと化した大惨事をアピールしてくれました。

ちなみに本作は、監督のハーマン・ヤウが、プライベートで香港海底トンネルを通るたびに、「このトンネルを映画で爆破したら面白いんじゃないか?」という物騒な妄想を浮かべていたことから誕生したといいます。

アンディは製作&主演を務めた『ホワイト・ストーム』(2019年)でもハーマン・ヤウ監督とコンビを組み、さらなるハードコアな境地を提示。本作は、香港ノワールの魂を受け継いだバイオレンス映画『レクイエム 最後の銃弾』(2013年)の続編だが、設定や物語は一新。

アンディが演じるのは元黒社会の構成員で現在は実業家として成功した人物。しかし、息子をドラッグで失ったことから麻薬組織をサーチ&デストロイするパニッシャーのようなヴィジランテ活動に目覚める。

本作最大の見せ場はクライマックス。アンディ率いるパニッシャー部隊が警察に警護されている麻薬組織のボス(ルイス・クー)を急襲。そして香港市街でアンディ・チーム、麻薬組織、警察による三つ巴の大銃撃戦がスタート! 捨て身の特攻をかけてきたアンディに身の危険を感じたルイス・クーは、その場から車で逃亡。当然、アンディも車で追跡し爆走カーチェイスを繰り広げる!

という展開だけでも充分お腹がいっぱいなのに、2台の暴走カーは香港の中心にある地下鉄セントラル駅(中環駅)の構内に突入! 通勤客で賑わう駅構内やエスカレーターでカーチェイス、というよりも車VS車による豪快などタイマンを繰り広げた挙句、2台はプラットホームになだれ込んで地下トンネル内を電車と共に暴走! その結果、電車は大脱線……という現実に起きたら大迷惑だが、アクション映画的にはゴキゲン極まりない大惨事を見せてくれました。

ちなみにアンディは2017年、タイでCM撮影中に落馬事故を起こして、重傷を負い、長期間の治療とリハビリを余儀なくされた。『ホワイト・ストーム』は復帰作なのだが、彼は劇中のスタントのほとんどを自らトライしています。

このように最近のアンディ・ラウは、涼しげなハンサムフェイスからは想像もできない香港破壊行為を次々と披露してくれています。そんな彼の偉業を称え、香港破壊王と呼びたい今日この頃に、嬉しいビッグニュースが到来! 本国では230億円の興行収入を突破した、アンディ・ラウが香港破壊王としての限界地に挑んだパニック・アクション映画『バーニング・ダウン 爆発都市』の日本公開が遂に決定しました!

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

『バーニング・ダウン 爆発都市』って、どんな映画?

本作は、アンディ・ラウが爆弾処理班を演じた『SHOCK WAVE』シリーズの第2弾。しかし、物語はリニューアルされているので、本作から観ても安心して楽しめます。

監督は『SHOCK WAVE』、『ホワイト・ストーム』でアンディと息の合った破壊活動を披露してくれたハーマン・ヤウ。共演は、アンディの相棒を務める爆弾処理班の同僚役にラウ・チンワン。彼は、ジョニー・トー監督作『暗戦/デッドエンド』(1999年)で、アンディ演じる完全犯罪を目論むガン患者と戦う敏腕刑事を演じた、アジアでトップクラスの頼りがいの塊のようなルックスの俳優。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

アンディの恋人役には、『雪暴 白頭山の死闘』(2019年)のニー・ニー。前作ではアンディの相棒的存在の刑事を好演して、香港のアカデミー賞といわれる香港電影金像奨で最優秀助演男優賞に輝いたフィリップ・キョンも刑事役で出演。他にサモ・ハンの息子テイミー・ハンがテロ対策ユニットの隊員役で出演しています。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

気になる物語ですが、アンディ演じる主人公は、今回も香港警察のEOD(爆弾処理班)が誇るエキスパート。相棒のラウ・チンワンと共に数々の事件を解決してきた輝かしいキャリアのオーナーですが、任務中に爆発に巻き込まれて左脚を失ってしまう……。ちなみに本作の監督ハーマン・ヤウは、アンソニー・ウォン主演で『八仙飯店之人肉饅頭』(1993年)、『エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス』(1996年)、『ザ・スリープ・カース』(2017年)といった人知を超えた残酷カルトムービーを撮ってきた方でもあります。

そんな監督なので劇中、「爆発現場で負傷して倒れるアンディ」というシーンを描く際、膝から下を失った左脚の負傷部分をじっくり画面にアピールする……という(ハーマン・ヤウ監督的には)心を込めたサービスカットがあるので心の準備をしておいてください。

爆破で片脚を失ったキャラクターが主人公のアクション映画といえば『スカイスクレイパー』(2018年)を思い出しますよね? この映画では、ドウェイン・ジョンソン演じるFBI人質救出部隊の隊長が、爆破に巻き込まれて片脚と共に職も失い、高層ビルのセキュリティ監査に転職していました。しかし、本作のアンディは違います。彼は爆破処理班へのカムバックを目指し、義足を装着しリハビリに励みます。相棒ラウ・チンワンの励ましもあって、アンディは見事に常人を凌ぐ身体能力のオーナーとなります。ちなみにアンディ・ラウはプライベートでは20年以上も障害者スポーツへの支援を行い、2013年からは香港パラリンピック&障害者スポーツ協会の副会長を務めている立派な御方である、ということも記しておきます。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

そして映画はアンディが現場職に復帰できたかどうかを描かずに、いきなり5年後に突入。そこではホテルで18人の死者を出す爆破テロが発生。現場には爆破に巻き込まれて、昏睡状態となったアンディの姿……これは一体、どういうことですか!? という観客の疑問をガン無視して、映画は猛スピードで突き進みます。でも、この展開は決して脚本が破綻しているわけではありません! 観客に緊張感を与え続けるためにそうしているのです。

なぜなら本作の脚本家であるエリカ・リーとリー・シンは、『イップ・マン 誕生』(2010年)、『ザ・スリープ・カース』、『SHOCK WAVE』、『ホワイト・ストーム』などのハーマン・ヤウ監督作に携わった方々。2人は本作の脚本を担当した際、前作『SHOCK WAVE』を超えるスリリングな物語にするため、ハーマン・ヤウと共に2年の歳月をかけて練り上げたといいます。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

「なんと!」な展開の連続に絶句……あの頃の香港映画が還ってきた!!

アンディは気がつくと病院のベッドにいた。片手は手錠でベッドに繋げられ、義足も没収されている。そしてベッドの周りを刑事や警官たちが囲んでいる。爆破事件の容疑者となってしまったのだ……。

怒り心頭の刑事たちは矢継ぎ早にアンディを尋問する。しかし、何を聞かれても彼は「知らない!」と逆ギレするばかり……なんと! 彼は爆発に巻き込まれた影響で記憶を失ってしまったのでした。

警察は彼にMRI検査を受けさせようと、車椅子に乗せて移動した、その時、なんと! アンディは片脚なのにも関わらず、エスプリの効いた格闘スタイルで警官たちを倒して脱走しようとした。と、同じタイミングでなんと! ……って、さっきから何度も「なんと!」と書いていますが、本当に「なんと!」という展開だらけのダレ場が1ミリもない映画なんです。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

というわけで、なんと! 病院にマシンガンで武装したテロ集団が乱入! 彼らは「助けに来たぞ!」とアンディのもとに駆け寄ってきた……って、どいうこと!? アンディはテロ組織のメンバーなの!!?? と観ている我々はますます混乱するが、当のアンディもおおいに困惑しています。アンディ、どうするんだ?

と観客たちが固唾を呑んで見守っていると、彼は警官VS武装テロ集団の銃撃戦のどさくさに紛れて、病院内の義肢装具室から盗んだ義足を装着して脱兎のごとく脱走したのでした……。ここまでで充分トゥーマッチすぎるサプライズの連続ですが、まだまだ序盤の展開。本番はココからです。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

その後、記憶を失ったアンディが、警察の追跡を逃れながら自分探しをする模様が、スリリングかつスケールのデカいアクション&「なんと!」な展開満載で描かれます。しかし、本作で描かれるピンチはそれだけではありません。病院に乱入してきたテロ集団は、アンディ・ラウの香港破壊ムービー史上最大規模の爆破テロを実行しようとしていきます。そして「アンディはテロ集団のメンバーなのか?」という最大の謎に対して、映画は、あまりに「なんと!」すぎる衝撃の事実を、次々と後出しジャンケンの連打のように提示してきます。そのトリッキーすぎるストーリーテリングは、返還前に製作されたイキのいい香港アクション映画を思わせてくれます。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

実際、本作は中国や香港で公開されると、観客たちは「長い間、失われた香港映画が帰ってきた!」「過去10年間の最高の香港アクション映画」と絶賛。『ゴッド・ギャンブラー』(1989年)や『追龍』(2017年)の監督として知られるバリー・ウォンも本作を観て猛烈に感動し、「いい映画だよ!“香港映画は死んだ”と言った馬鹿野郎! もう黙れ!」と熱いコメントをSNSにあげています。

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

見どころ多すぎ! アンディが牽引する“香港破壊路線ムービー”

サービスを搭載し過ぎたストーリー、スケールのデカいアクションや爆破シーンも本作の魅力ですが、忘れちゃいけないのが俳優アンディ・ラウの演技スキルが最大限に発揮された作品であること。前作ではジャスティス極まりない「爆発を阻止する」男を熱演したアンディが、本作では「爆発を阻止する」立場であったはずの自分が「香港を終了させるほどの爆弾を仕掛けた」極悪人かもしれない……という、スリリングかつ多重人格者のような役柄に挑んでいますから。それだけに俳優アンディ・ラウの魅力は前作以上に堪能できますよ!

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

さらにアンディの甘さを期待する方にも朗報! 今回も前作のように、アンディと恋人との恋愛模様もあります。前作ではソン・ジアがアンディの恋人を演じましたが、事件に巻き込まれるか弱い女性キャラという印象でした。しかし、本作の恋人は違います。今回、ニー・ニーが演じるアンディの恋人はテロ対策ユニットのリーダー。劇中、香港が終了してしまう爆破テロを阻止するため、ラウ・チンワンがギョロ目を涙でいっぱいにしてドン引きするような非情な作戦をプランニング。さらに、銃撃戦ではクイックに的確な指示を出し、タクティカルなシューティング・スタイルで敵を確実に射殺する、という土方歳三チックな鬼のリーダーシップを披露。あまりのカッコ良さに、このキャラを主役にしたスピンオフを作って欲しくなるはず!

そんなわけで、“香港破壊路線ムービー”という俺ジナルずぎるジャンルを築き、その帝王となったアンディ・ラウの魅力がパンパンに詰まった本作。ぜひ劇場で観戦してください!

『バーニング・ダウン 爆発都市』©2020 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED

ちなみに今後のアンディの主演作ですが、高度1万メートルを飛ぶ「空の5つ星ホテル」と呼ばれる超大型旅客機エアバスA380の中で、アンディが盲目の娘を守りながら12人の武装ハイジャック犯と戦う『危機航線 Crisis Route』が間もなく撮影に入るそうです。さらに、本作が大ヒットしたことにより『SHOCK WAVE』シリーズ第3弾の製作も決定! ますます香港破壊王の活躍から目が離せません。

文:ギンティ小林

『バーニング・ダウン 爆発都市』は2022年4月15日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国公開

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『バーニング・ダウン 爆発都市』

爆弾処理班に所属するフォンは、数々の事件を解決してきたエースだったが、爆発に巻き込まれ左足を失ってしまう。恋人や同僚の助けもあり、義足とは思えないほど身体機能が回復するが、上層部はフォンの現場復帰を認めなかった。仕事一筋で生きて来たフォンは自暴自棄になり、警察を辞めて姿をくらませる。そのフォンが、テロ組織「復生会」によるホテル爆破事件の現場で、重体の状態で発見される。容疑者として病院に収容されたフォンは尋問を受けるが、爆発の影響で過去の記憶を失っていた。そこに、フォンを救い出すべく復生会が乗り込んでくる。「なぜテロ組織が俺を助けるのか―?」フォンは病院から抜け出しひとりで逃亡するが―。

監督:ハーマン・ヤウ

脚本:ハーマン・ヤウ エリカ・リー エリック・リー

出演:アンディ・ラウ
   ラウ・チンワン ニー・ニー

制作年: 2020