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スカート澤部渡が深堀りインタビュー!『スパークス・ブラザーズ』 エドガー・ライト監督初の音楽ドキュメンタリー

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ライター:#BANGER!!! 編集部
スカート澤部渡が深堀りインタビュー!『スパークス・ブラザーズ』 エドガー・ライト監督初の音楽ドキュメンタリー
『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED/(写真右)スカート・澤部渡

スパークス×スカート澤部渡

ロンとラッセルのメイル兄弟が1970年に結成した米LAのロック/ポップ・デュオ、スパークス。いわゆるミリオン級のヒット作はないし、3大音楽賞にノミネートされたこともないスパークスは、誰もが知る“大スター”ではないかもしれない。しかし、その変幻自在かつ唯一無二の音楽性でファンを魅了し、日本を含む世界中に熱狂的なファンを持つカルトスターとして、現在も精力的に活動を続けている。

そんなスパークスだけに音楽業界以外にも支持者が多く、レオス・カラックス監督の8年ぶりとなる新作『アネット』(2022年4月1日より公開)は、彼が10代の頃からファンだというスパークスとの共作だ。そして2022年4月8日(金)より公開の『スパークス・ブラザーズ』を手掛けたエドガー・ライト監督も、彼らの熱烈なファンの一人。本作は、『ベイビー・ドライバー』(2017年)や『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年)で知られるライト監督が初めて手掛けるドキュメンタリーであり、数々の貴重映像と超豪華アーティストの証言によってスパークスという存在を紐解いていく、ファン必見の音楽映画である。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

そして今回、スパークスのファンを公言する<スカート>の澤部渡が、ロン&ラッセルにインタビュー。同じミュージシャンとして、一人のリスナーとして、謎多きスパークスから貴重な製作秘話を聞き出した。

スカート 澤部渡

「スパークスは“LA以外からは出ようがなかった”と思ってるよ」

澤部:『スパークス・ブラザーズ』、素晴らしかったです。スパークスの歴史の重みとその軽快さを感じられて、とても楽しめました。

ロン:それはきっとエドガー・ライト監督の手腕だと思う。すごくたくさんの情報をぎっしり込めながらもスパークスらしさ、スパークスのスピリットをキープしてくれたおかげだね。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

澤部:序盤はさまざまな映像の引用を織り交ぜていましたが、物語が進んでいくにつれてスパークスの映像が中心になって、スパークスの物語になっていく様子が興味深かったです。

ラッセル:自分たちでは意識してなかったけど、そうだね。

ロン:そういう意図はあったかもしれない。スパークスをあまり知らない人たちにも自分たちを知らしめる、っていう流れを作ったのかもね。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

澤部:それでは、スパークスの歴史や音楽についていくつか質問させてください。そうすることで、より深くこの映画に触れられると思うんです。

まず、お二人の「よく僕らはLA的じゃないと言われる。きっとLAが僕らに与えた影響を見逃してるんだ」という言葉がとても印象に残りました。我々ファンも“スパークスはアメリカらしくない。ましてやLAなんて!”と思うことが多いのですが、それはイーグルスやドゥービー・ブラザーズのような、いわゆる西海岸のロックサウンドと対比してのことです。でも冷静に考えてみると、LAはフランク・ザッパやキャプテン・ビーフハート、ザ・ビーチ・ボーイズやフライング・ロータスといった異形のミュージシャンを生んだ街でもあります。それでも日本人からすると“LAがスパークスに与えた影響”というものが少しわかりづらい部分もあります。もう少し具体的に伺ってもいいでしょうか?

ロン:確かに、スパークスには“典型的なLAのバンド”というイメージはあまりないかもしれないけれど、実際にLAという街から受けた影響はとても大きいと思う。他の都市と比べてLAが持つ街の速度はとても速い。それは行き交う車もそうだけど、歴史の短い街だから人の行き来もとても多いんだ。儚さがある、というかな。そんな背景があるから「LAって一体どういう街なんだ?」っていうのは、分かるようで分かりづらいんだ。そういった部分からは、とても大きい影響を受けているね。だから、よくよく知れば「スパークスはLA以外からは出ようがなかったな」って、自分たちは思っているよ。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

澤部:なるほど。移り変わりの速さ、というのはスパークスの過去のカタログを見るようで、とても納得がいきました!

ロン:それならよかった。自分でも何を答えてるか分からなくなっちゃってたから(笑)。

ラッセル:たとえば「Get In The Swing」(1975年)に「いやあ、僕はフロイトじゃないよ 僕はLA出身だ」(対訳:三角和代)という詞があるけど、要するにニューヨークの知的なイメージとは違って、LAっていうのは表面的なんだよね。見た目だけの軽薄なイメージがある。それを逆手にとって、そういうことを歌ったりもしたね。

澤部:とても興味深い話です。ありがとうございます。続いて『No.1 In Heaven』(1979年)について質問させてください。あのアルバムは、やろうと思えばクラフトワークやドナ・サマーが「I Feel Love」(1977年)でやったように、すべての音をエレクトロニクスで表現することもできたと思います。それでもスパークスはプレイヤーが叩く生のドラムを選びました。当時は“テクノ的”であろうとすればするほど人間の“揺れ”を排除しようとしていたようにも思えます。なぜ、あえて生のドラムにしようと考えたのでしょうか? 後々のドラムプログラミングでも再現が難しいオープンのハイハットなどに見えるダイナミックさがあるからこそ、『No.1 In Heaven』を特別なものにしているような気がします。

ラッセル:そうだね。いい点に目をつけてくれているよ。

ロン:『No.1 In Heaven』の頃は、まだリン・ドラムすらなかったからね。ドラム・マシンもなかったから、“仕方なく”“そうするしかない”っていう面もあったんだけど、ドラムを叩いたキース・フォーシーはずっとジョルジオ・モロダーと組んでやっていて、フィーリングももちろんだけどテクニカルな面も完璧だったんだ。だから人間ドラム・マシンと言ってもいいだろうね。『No.1 In Heaven』が完成した後、モロダーのスタジオでロジャー・リン(※リン・ドラムの開発者)が来て「これを試してみないか?」とプレゼンする現場に居合わせたこともあるよ。その時には「こんなんじゃ音楽は作れないな」って思ったけど、その気持ちは後から変わっていったね。

ラッセル:記憶が正しければ、ベーシック・トラックではムーグのキック・ドラム、簡単なエレクトロニックなリズムが入ってたんだよね。それをキース・フォーシーが生のドラムに差し替えたんじゃなかったかな。

ロン:フォーシーがクリック音に合わせて15分くらいキック・ドラムだけを踏むんだけど、一回もぶれないんだよ。あれはすごい光景だった(笑)。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

「レコードやDVDだとライヴのフィーリングを切り取るのは難しい」

澤部『Balls』(2000年)から『Lil’ Beethoven』(2002年)についても伺わせてください。『Lil’ Beethoven』は、前作『Balls』からわずか2年で制作されたものとは思えません。かつての『Introducing』(1977年)から『No.1 In Heaven』(1979年)に匹敵するか、それ以上の変革だったと思います。あのアルバムに至るには、どういった道程があったのでしょうか?『No.1 In Heaven』の裏には「I Feel Love」があったと思いますが、『Lil’ Beethoven』にもそれに相当するようなものがあったのでしょうか?

ラッセル:僕たちはすぐに飽きてしまうんだよね。『Balls』のあと普通にアルバムを作り始めたんだけど、同じ道を歩んでるな、繰り返しだなって気づいて、アプローチを変えることにしたんだ。典型的なポップアルバムを作り出す要素のすべてを取り外してしまえ、ドラムもいらない、ギターもいらない、ベースもいらない。それらをアグレッシヴなヴォーカル、きれいなだけじゃないストリングスに置き換えてみよう、と。ある意味、ロックやポップスのエッジさを違うものに置き換えたんだ。曲の構成もAメロがあってサビ、みたいなものではなく、楽器構成に合うような曲構成にしていったよ。

澤部:あの奇妙な曲構成にはそういう背景があったんですね。今回の映画では『Lil’ Beethoven』収録の「My Baby’s Taking Me Home」のライヴ映像が印象的に使われていますが、レコードとはまた違う表情になっていて、あの執拗な繰り返しがまたとても気持ちいいんですよね。

ロン:『Balls』のあと、もうすでに20曲ぐらい書いてあったし、どれも良かったんだけど、ラッセルがさっき言ったように「違うものにしよう」ってなったんだ。特にヴォーカルを今までと違うようにしたい、と思ってね。そこで、ふたつ影響されたものがある。ひとつはヒップホップ。当時のヒップポップに於けるループだとか、リズムだね。もうひとつはジョン・アダムズのミニマル音楽。彼の作るモダンなオペラなんかには特に影響を受けたよ。

澤部:そのヒップホップの影響が「Suburban Homeboy」へと繋がっていくわけですね。

ロン:そうだね。

ラッセル:僕らはヒップホップらしさからは一番遠いように見えると思うんだ。この曲は僕らがクールなヒップホップ・ガイを気取ってるっていうファンタジーなんだけど、僕らはそうなれるわけがないんだよね。

澤部:とてもスパークスらしいですね。最後に、もうひとつ質問させてください。私は2007年にスパークスのファンになってから、東京でのライヴはほとんど見ています。どのパフォーマンスも素晴らしく、ことあるごとに思い出します。今回の映画も含めて映像作品はいくつかリリースされていますが、ライヴ・アルバムが過去のカタログにほとんどないのが不思議でなりません。なにか理由があるのでしょうか?

ロン:ひとつは、曲ってライヴで演奏して新しく生まれ変わる部分ももちろんあるんだけど、自分たちの中では究極のヴァージョンはレコーディングされたものだ、っていう思いがある。もうひとつは、レコードやDVDだとライヴのフィーリングを切り取るのは難しい、というところかな。あと、多くのバンドは新作を出すまでの穴埋めでライヴ盤をリリースすることが多いよね。それはしたくないかな。今回のドキュメンタリーでも各地のライヴ映像の素材が短くても使われているよね。それが2時間のライヴを観るようなものになった気がする。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ラッセル:以前、『Two Hands One Mouth: Live In Europe』(2013年)を出したけど、バンドに演奏してもらうんじゃなく、ステージ上には僕らだけ。それで古い曲をたくさん演奏する、っていうことを試してみた。僕らなりのライヴ・アルバムは、過去のものと比較されるようなものじゃなくて、できるだけ違うサウンドになるように作ったんだ。

ロン:『Two Hands One Mouth』のツアーではコーチェラ・フェスティバルにも出たんだ。はじめてのコーチェラだったのに、2人だけの編成っていうのは……フェスには向いてなかったかもしれないね(笑)。

『スパークス・ブラザーズ』© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

澤部:同じ編成で2013年のフジロックにも出演されましたよね。

ラッセル:そうそう、やったね。

ロン:あのツアーは満足のいくものだったけど、ものすごいプレッシャーだった。やっぱり二人だけで、バンドのメンバーにも隠れられないから、毎晩裸で演奏しているような気分だったよ(笑)。

澤部:僕は渋谷のCLUB QUATTROにそのツアーを観に行きましたが、楽曲の芯の太さを改めて痛感できる素晴らしいステージでした。ぜひまた日本に来てください!

ラッセル:できるだけ早く戻ってくるよ!

取材・文:澤部渡(スカート)

『スパークス・ブラザーズ 』は2022年4月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開

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『スパークス・ブラザーズ 』

兄ロンと弟ラッセルのメイル兄弟からなる「スパークス 」は、デビュー以来、謎に包まれた唯一無二のバンド。レオス・カラックス監督最新作『アネット』で原案・音楽を務めたことでも話題沸騰中!そんな彼らの半世紀にもわたる活動を、貴重なアーカイブ映像やバンドが影響を与えた豪華アーティストたちのインタビューと共に振り返る。スパークスの魅力を語るのは、グラミー賞アーティストのベックをはじめ、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、アレックス・カプラノス(フランツ・フェルディナンド)、トッド・ラングレン、デュラン・デュラン、ニュー・オーダー、ビョーク(声の出演)など80名にのぼる。

音楽界の“異端児”と呼ばれ、時代と共に革命を起こし続ける<スパークス兄弟>は、なぜこれほどまでに愛され続けるのか―。挑戦的かつ独創的な楽曲、遊び心溢れる映像、さらには彼らの等身大の姿までを捉え、その理由を探る。自らもスパークスの大ファンだと公言するエドガー・ライト監督によるカラフルな世界に酔いしれる!今年の音楽映画決定版!

監督:エドガー・ライト
出演:ロン・メイル ラッセル・メイル

製作年:2021