ブルース、ジャズ、フォーク、ロック、ヘヴィメタル……すべてアメリカ先住民族の貢献あり!『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』

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ライター:BANGER!!! 編集部
ブルース、ジャズ、フォーク、ロック、ヘヴィメタル……すべてアメリカ先住民族の貢献あり!『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』
『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』Getty Images

ブルースやジャズ、そしてロックはアフリカン・アメリカンがルーツだと思い込んでいたが、その根っこにインディアン=ネイティブ・アメリカン、つまりアメリカ先住民たちが歌い継いできた音楽があったとは!『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』は、先住民族~アフリカ系の奴隷たちが紡いできた誇り高き文化を時代別に学べる貴重な記録映像であり、その影響がヒップホップにまで至ることを証明するドキュメンタリー映画だ。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』© Rezolution Pictures (RUMBLE) Inc.

本作の鑑賞後にレッドボーンの「Come and Get Your Love」(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』[2014年]のOPタイトルでお馴染み!)を聴けば、自然と涙があふれてくるはず!!

インスト曲が放送禁止に!? 多くのミュージシャンに影響を与えたリンク・レイ

本作のタイトルはネイティブ・アメリカンのミュージシャン、リンク・レイ(2005年死去)の代表曲「ランブル」から取られている。カントリーバンドの一員としてキャリアをスタートし、現代ロック~パンクへと繋がる新たなエレキ・サウンドを次々と生み出した伝説のギタリストだ。そしてタイトルどおり、映画はリンク・レイの紹介から始まる。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』Photo by Bruce Steinberg, Courtesy of linkwray.com

リンク・レイはショーニー族の一家に生まれた。彼の親族が語るエピソードの中には、かつてKKKの襲撃を逃れるためにベッドの下に隠れたという衝撃的なものもある。当時はネイティブ・アメリカンだと知られると、アフリカン・アメリカンと同じ扱いを受けたそうだ。そして「ランブル」が生まれた経緯を本人が語る貴重な映像から、それをラジオで聴き衝撃を受けたと語るのは、様々なルーツ音楽をブルースに採り入れたことで知られる大御所タージ・マハールである。

「ランブル」はインスト曲にもかかわらず放送禁止になったというから、当時の若者への影響力が伺い知れる。しかし“ケンカする”という意味のタイトルではあるものの、その音からは不思議とネガティブなイメージは湧かない。その出自によって世間から虐げられてきたリンク・レイには怒りの感情もあったはずだが、彼の音楽にはポジティブなバイブスが漲っていて、イギー・ポップが「よし、俺もバンドをやるぞ!」と背中を押されたという言葉に無条件で納得してしまうほど陽のエネルギーにあふれている。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』© Rezolution Pictures

黒人の魂・ブルースのルーツにも先住民たちの影響があった!

先住民族のヴォーカル・グループ、ウラリがパフォーマンスを披露し、踊りや音楽をも禁じた当時のアメリカ政府による迫害の歴史が語られる。詩人/ミュージシャンのジョン・トルーデルによる「文化の剥奪は虐殺に等しい」という言葉は非常に重いが、実際に政府は数百人規模の虐殺によって彼らの文化を排除しようとした(1890年:ウンデット・ニーの虐殺)。そのとき、政府の弾圧=米兵の撃つ弾丸を跳ね返すために踊ったという“ゴースト・ダンス”は必死の抵抗のひとつであり、それは後のブルースの誕生とも無関係とは言えないだろう。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』© Rezolution Pictures

かつてはアフリカ系の奴隷よりも酷かったという迫害から逃れるため、黒人として暮らす先住民族もいた。男性が奴隷として他国へ送られ、その後に連れられてきたアフリカ系の奴隷との間に生まれた子どもたちは、双方のアイデンティティーを受け継いでいる。南北戦争以前のアフリカ系アメリカ人は母方の曾祖母が先住民族という人が大半だという。そしてブルース好きならば、続いてフィーチャーされるチャーリー・パットンのシークエンスに身を乗り出すはずだ。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』From the collection of John Tefteller and Blues Images

チョクトー族でありデルタ・ブルースの祖であるパットンからギターを学んだというハウリン・ウルフも先住民族で、その影響を受けたザ・ローリング・ストーンズやザ・ビートルズを経由し、逆輸入の形でブルースはアメリカに浸透していった。さらに、禁酒法時代に人気を博したジャズシンガー、ミルドレッド・ベイリーも先住民族の血を引いていて(アイダホの保留地出身)、あのフランク・シナトラやトニー・ベネットも「彼女から歌い方を学んだ」と多大な影響を公言している。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』Getty Images

フォーク、メタル、そしてヒップホップ……誇り高き現役アーティストたち!

先住民族がロック、ブルース、ジャズに与えた影響が明かされたが、もちろんフォーク・シーンにも先住民たちがいた。1960~70年代に日本でもレコードがリリースされたバフィー・セントメリー、先住民の苦難を想うジョニー・キャッシュがカヴァーしたピーター・ラ・ファージらが注目を浴びるも、彼/彼女たちの歌は、またしてもアメリカ政府(白人)による放送禁止という弾圧の対象となる。

……時を同じくして先住民に憧れるヒッピーたちが現れ、時代は再びロックンロールのエネルギーを求める。奴隷だった曽祖父とチェロキー族の血を引く曾祖母を持つ、ジミ・ヘンドリックスの登場だ。多様なルーツを持ち革命の音を鳴らす彼は、まさしくアメリカの象徴だった。そんな彼の後押しもあって、レッドボーンもルーツを意識しつつポップなサウンドで人気を博す。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』© Joseph Dominguez

そのほか日本人にはINABA/SALASでおなじみ(多分)のギタリスト、スティーヴィー・サラスや、オジー・バンド~モトリー・クルーのドラマーとして知られる故ランディ・カスティージョなどヘヴィーメタル界のネイティブ・アメリカンにもスポットを当て、さらにメタリカのロバート・トゥルージロやブラック・アイド・ピーズのタブーなど、ジャンルを問わず様々なアーティストが先住民としての誇りを語る本作。ブラック・ライブズ・マター運動によって世界中の人々が有色人種への制度的な差別・弾圧について理解を深めているいま、単なる音楽ドキュメンタリーを超えた学びを与えてくれるはずだ。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』© Rezolution Pictures

日本でも若者を中心に“邦ロック”と呼ばれるジャンル(?)が人気を博しているが、演者もリスナーも自身が鳴らしている/聴いているモノの根源を知らなければ、そこにリスペクトがなければ、それは“文化の盗用”と言われても否定できないだろう。あのジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンが日本公演でリンク・レイの曲をカバーし、最近でもWILCOのジェフ・トゥイーディーが彼のカバー曲をSNSで配信するなど、我々が享受しているカルチャーのルーツを知るための入り口は充分すぎるほど開かれているのだから。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』は2020年8月7日(金)より渋谷ホワイト シネクイントほか全国順次公開。公開初日にはピーター・バラカン氏、野口久美子氏(アメリカ先住民研究家)によるトークイベントを実施。

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『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』

インディアン・ミュージックの素晴らしさや影響を語るために集結したのは、自らも先住民の血を引く元ザ・バンドのロビー・ロバートソンや、ブラック・アイド・ピーズのタブーをはじめ、バディ・ガイ、クインシー・ジョーンズ、トニー・ベネット、スティーヴン・タイラー(エアロスミス)、ジャクソン・ブラウン、ジョージ・クリントン、イギー・ポップ、マーキー・ラモーン(ラモーンズ)、スラッシュ、マーティン・スコセッシ監督ら豪華な面々。そしてジミ・ヘンドリックス、チャーリー・パットン、バフィ・セントマリーといったインディアン・アーティストのほか、ハウリン・ウルフ、ザ・フー、ボブ・ディランらの秘蔵映像もふんだんに使用。アパッチ族のギタリスト、スティーヴィー・サラスがプロデューサーを務め、“失われた歴史”を巡る壮大な旅が描かれる。

制作年: 2017
監督:
出演:
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