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ヴィジャイ主演! 女子サッカー熱血物語『ビギル 勝利のホイッスル』TV初放送!! 南インド発「マス映画」の世界

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ライター:#安宅直子
ヴィジャイ主演! 女子サッカー熱血物語『ビギル 勝利のホイッスル』TV初放送!! 南インド発「マス映画」の世界
『ビギル 勝利のホイッスル』©AGS Entertainment

日本のテレビにヴィジャイが初登場!

インド映画、特にタミル語映画に興味がある方に朗報です。CS映画専門チャンネル ムービープラスで、ヴィジャイ主演の『ビギル 勝利のホイッスル』(以下『ビギル』)が放送されることになりました。以前『囚人ディリ』(2019年)の紹介の際に、日本でのタミル語映画の劇場公開がラジニカーント出演作に偏りがちなことを嘆きましたが、ついにヴィジャイが日本のテレビに登場します。こうしたことが積み重なれば、いずれヴィジャイ主演作が一般劇場公開になるのも夢ではないかもしれません。

『ビギル 勝利のホイッスル』©AGS Entertainment

下町の世話人、栄光の過去と新たな挑戦

『ビギル』でヴィジャイが演じるのは、タミルナードゥ州チェンナイの下町で、何で生計を立てているのかは不明ながら、町の衆や学生たちから絶大な信頼を寄せられているマイケルという男。トラブルが起きると駆けつけて、多少の腕力を使って難なく解決します。そのマイケルは、よんどころない事情から親友のカディルの頼みで彼の代役を務めることになります。カディルは女子サッカーのタミルナードゥ州代表チームの監督で、全国大会のためのデリー行きを控えていました。マイケルはためらいながらも監督に就任します。

『ビギル 勝利のホイッスル』©AGS Entertainment

実はマイケルは、かつて男子サッカーの世界で花形のストライカーだったのです。その頃の登録選手名は「ビギル」(ホイッスル)。彼は北チェンナイの貧しい地区で生まれ育ち、父親ラーヤッパンはその地区を束ねるギャングのドンでした。反社会的組織の元締めながら情に厚いラーヤッパンは人々から慕われていましたが、息子には日の当たる世界で名を上げて欲しいと望み、彼の全国大会出場を応援します。この父子にその後、何が起きたのか? そしてマイケルは州各地から集まった女子選手たちに受け入れられるのか? 彼&彼女らは、リーグ戦を勝ち抜けられるのか……? 177分をかけて波乱万丈の物語が展開します。

『ビギル 勝利のホイッスル』©AGS Entertainment

主人公が“常に”映る! 南インド発祥「マス映画」の世界

この『ビギル』、『囚人ディリ』が娯楽映画の中のニューウェーブだったのに対して、こちらはコテコテの「マス映画」です。マス映画とは、「マサラムービー」よりもう少し限定的な用語で、主演のヒーロー男優にメッセージや見せ場などの要素全てが収斂していくタイプの作品を指します。インド映画は全部それではないかと思われるかもしれませんが、じつはこれは1980年代ごろから主に南インドで発達してきた作風です。

マス映画の具体的特徴をここでは全部は書き切れませんが、可能な限りにおいて常に画面に主演俳優が映っているというのは、重要なポイントです。本作では主役のマイケルの他に、その父ラーヤッパンもヴィジャイが演じています。最初にこれを見た時は、タミル語映画界には威厳あるドンを演じられる中高年俳優は幾らでもいるだろうにとも思いましたが、ファンにとっては常にそこにヴィジャイがいること、時には一つの画面に二人もヴィジャイがいるということが大きな価値を持つことは想像できます。実はヴィジャイ以外でも、アジットクマールやスーリヤなどタミルのスーパースターの作品には一人二役ものが驚くほど多いのです。

本作では、全てがヴィジャイを光り輝かせるためにあるようなお約束の作りの中に、極めて今日的な「女性のエンパワーメント」というテーマも織り込まれています。マス映画が女性の権利の問題を扱うには、従来のようにか弱いヒロインをヒーローが腕力で救うというプロットでは意味がありません。ヴィジャイのカリスマと女性たちの力強い物語とを、どう両立させるかというのは本作の見どころの一つです。

『ビギル 勝利のホイッスル』©AGS Entertainment

ヴィジャイってどんな人?

ヴィジャイを初めて見る方のために、手短に紹介しておきます。ヴィジャイことジョーセフ・ヴィジャイ・チャンドラシェーカルは1974年にチェンナイで生まれました。父チャンドラシェーカルは中堅の映画監督で、ヴィジャイは父の監督作の子役として映画デビューします。1992年に『Naalaiya Theerpu(明日の審判)』で初めてヒーローを演じ、それからはロマンス映画に数多く出演。転機は2003年の大ヒット作『Thirumalai(ティルマライ)』で、ここから主軸をアクションに置いたマス映画の大スターへの道を歩み始め、2014年の『Kaththi(刃物)』あたりからは、同時代の具体的な社会問題を上手く取り込みながらヒットを連発してきました。

現在40代後半であることを感じさせない童顔とやせ型高身長の組み合わせ、長くしなやかな手足から繰り出される華麗なアクションなど、セールスポイントは多々ありますが、何といっても魅力的なのは“踊り”です。身体能力の高さだけではない、艶を併せ持つ表現力は、南インドでは『バードシャー テルグの皇帝』(2013年)のNTRジュニアと並び立つものと筆者は考えます。『ビギル』でも、特に最初のダンスソング「たぎる思い」に注目です。

『ビギル 勝利のホイッスル』©AGS Entertainment

文:安宅直子

『ビギル 勝利のホイッスル』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2022年3月放送

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『ビギル 勝利のホイッスル』

チェンナイの下町に住み、地域の人々から慕われているマイケルには、「ビギル(ホイッスルの意)」のニックネームで呼ばれた花形サッカー選手としての過去があった。込み入った経緯から、彼は友人の代わりに女子サッカーの州代表の監督となり、全国大会に臨むが、そこで過去の宿敵と再会する。

監督:アトリ
脚本:アトリ ラマナギリヴァサン

出演:ヴィジャイ ナヤンターラ ヨーギ・バーブ

制作年: 2019