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極悪野蛮なJホラー『真・事故物件/本当に怖い住民たち』に映倫も腰を抜かした!? 観客への配慮、完全無視!

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極悪野蛮なJホラー『真・事故物件/本当に怖い住民たち』に映倫も腰を抜かした!? 観客への配慮、完全無視!
『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

映倫にも忖度なしの超野蛮なJホラー

1980年代にカルト教団によるバラバラ殺人事件が起こった事故物件アパート。今、その物件がYouTube界隈で話題となっている。そのアパートに忍び込んだYouTuberが謎の動画を配信後、行方不明となったためだ。

そこに目を付けたのは、弱小芸能プロダクション。所属俳優を住まわせ、面白心霊動画を配信して一発当てようという魂胆だ。選ばれたのは、性格が様々な3人の女の子。明るく撮影に臨む彼女たちだったが、アパートの正体が明かされていくにつれ、血みどろの地獄へと突き落とされていく……。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

タイトルやプロットから察すると『呪怨』(2002年)『恐怖の村』シリーズ(2019年~)のような典型的ジワジワ系Jホラーと思うだろう。だが、そんな甘っちょろいものではない。観客はもちろん、映倫にも忖度なしの極悪な残酷映画であり、これまでのJホラーの常識を根底から覆す作品だ。いや、これまでというより、日本ホラー映画がやりたい放題やっていた1980年代中期への原点回帰ともいえるだろう。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

おかしい 何かがおかしい

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』のやり口はとにかく野蛮だ。冒頭の死体解体シーンには驚かされるかもしれないが、そこからは何の変哲もないJホラー演出で物語は進行していく。アパートの周りを徘徊する怪しげな影、『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ(1999年~)を彷彿とさせる画面から見切れる幽霊。夢落ちで終わるコケ脅しのジャンプスケア……。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

「なーんだ、こんなもんか!」

と誰もがタカをくくるだろう。だが中盤から物語は予測不可能な方向に逸れていく。まずは妙なお笑い要素だ。唐突に全く面白くないギャグを入れ込んでくる。一昔前、某お笑い芸能事務所が映画制作をしていたときにやっていたような寒いヤツだ。次に、唐突に制作者の思いを代弁しているかのようなYouTuber批判が炸裂する。

「心霊スポットとか事故物件ってさ、化石燃料と同じ限りある資源なわけ! 保護しなきゃならないわけよ。行っても一回だけ。それなのに、どいつもこいつもこいつもどいつも馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返し繰り返し同じ場所に行きやがって、揃いも揃ってうるさいおしゃべりなんかしちゃってよぉ。出るもんも出ねぇよ! 神聖な土地を土足で踏み荒らして、霊も妖怪もネッシーもモスマンも、とっくに逃げ出してるっつーの。謎は謎のままだから風流なんだよ。馬鹿じゃねぇのかって思うわけ!」

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

これは何なのだと。映画のプロットそのものを否定して、一体何をしたいのかと。心霊映画を期待して観に来た観客を小馬鹿にしたいのかと! だが不思議なことに、それぞれのシーンには、漫画の集中線が描かれているかのように注目するポイントがあり、目が離せない。常に画面下手(しもて)に空白を持たせているのも「何か出てくるのではないか?」と気になって仕方がない。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

「おかしい。何かがおかしい」と思うが早いか、怒濤のごとく残酷描写が爆裂する。口から内臓が引き出され、手足が切断され、首がもぎ取られる。

いやぁ、参った。まさか、今の日本で『ギニーピッグ』シリーズ(1985年ほか)のような映画が劇場で上映されるとは思ってもみなかった。しかし『真・事故物件/本当に怖い住民たち』は、それをやってのけた。俳優陣が皆、力みすぎている気がするのだが、それは仕方がない。だって、この映画の酷さほど凄惨なものはないからだ。もちろんいい意味で。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

イタリアンホラー(の超駄作)への愛が炸裂

本作の監督は佐々木勝己。前作『星に願いを』(2019年)は、強烈な暴力描写とファンタジーを融合させた独特の表現が話題となった。

女性をトコトン美しく撮影し、心ゆくまで虐め倒す演出、奇妙なギャグセンス、切ない音楽……。本作のフォーマットを俯瞰してみると、前述の通り1980年の日本ホラー映画の味わいもあるが、独特のケレン味は往年のイタリアンホラーを感じさせる。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

佐々木監督はイタリアンホラー好きを公言している。本作の残酷シーンの殆どはイタリアンホラーからの引用である。しかも、名作ではなく駄作からの引用だ。例えば女性が口に手を突っ込まれ、内臓を引き抜かれたあげく顔面の内側から目が押し出されるシーンがある。これは、ブルーノ・マッティの超駄作『ヘル・オブ・ザ・リビングデッド』(1980年)のラストシーンそのままである。

監督は某雑誌のインタビューで「ブルーノ・マッティになりたい」とまで言っている。よりにもよってダリオ・アルジェントでもなくルチオ・フルチでもなくマリオ・バーヴァでもなく、イタリアが誇る超絶ダメホラー映画監督ブルーノ・マッティである。また、予想できない残酷描写を唐突にブチ混んでくるのがイタリアンホラーの真骨頂であるが、おそらく、マッティのヤッツケ仕事的な要素を佐々木監督は意図的に入れ込んだのだろう。

だが、彼の力量は懐古主義にとどまらない。大量の血が流されていようが、内臓が飛び出していようが、切ない音楽を用いた対位法の多用や物語が永遠に終わらないようなループ構造を利用した伏線回収などで、なんだかホンワカした悲しい気持ちにさせてくれるのだ。たった79分に詰め込まれた凄まじいギミックの数々。イタリアンホラーにJホラーの皮をかぶせて、観客をだまし、イタリアンホラーの洗礼を受けさせてトラウマを植え付けようとは、なんとも野蛮な監督である。

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』©TOCANA映画制作プロジェクト

古くて新しく、残酷だけど切ない。単純だけど、とんでもなく複雑。血管も人体も映画もブチりと切れる『真・事故物件/本当に怖い住民たち』は、なんともカテゴライズし難い佐々木勝己というジャンルの映画といっていいだろう。

文:氏家譲寿(ナマニク)

『真・事故物件/本当に怖い住民たち』は2022年2月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマロサ、新宿シネマカリテほか全国公開

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『真・事故物件/本当に怖い住民たち』

「事故物件に住み込み、幽霊をカメラに収めるまで帰れない!」という企画の番組に 所属事務所から無理やり参加させられたYoutuberとアイドルの卵。彼女たちを待ち受ける、想像を絶する恐怖と激痛の数々。日本犯罪史上最も凄惨なバラバラ殺人事件の現場だったその伝説のアパートに潜んでいたのは、おぞましき悪霊だけではなかった…。

制作年: 2022
監督:
出演: