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実在の“最凶”心霊スポットを映画化! “最恐”監督・清水崇が『犬鳴村』にまつわる逸話を語る

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ライター:#BANGER!!! 編集部
実在の“最凶”心霊スポットを映画化! “最恐”監督・清水崇が『犬鳴村』にまつわる逸話を語る

全国に数多く存在する心霊スポットのなかでも「あそこはヤバい!」と恐怖体験の話題が絶えない、旧犬鳴トンネル。九州に実在する最凶スポットにまつわる都市伝説を、『呪怨』シリーズ(2003年~)で日本中を恐怖の渦に巻き込み、日本人前人未到の全米初登場第1 位を2 度も獲得するという快挙を達成した世界が認めたJホラーの第一人者、清水崇監督が映画化した『犬鳴村』が2020年2月7日(金)より公開される。

実際に旧犬鳴トンネルを訪れた清水監督は、果たしてそこで何を見たのか? 作品に込めたメッセージから現場での驚くべき体験まで、世界が認める“最恐”監督に話を聞いた。

『犬鳴村』清水崇

都市伝説をきっかけに“血筋”を辿るファミリーストーリー

―ホラー映画でありながら、根底には家族愛の物語があるように感じました。

都市伝説や心霊スポットをベースにしたホラー映画となると、スポットへの突撃レポートだったり、フェイクの実録投稿で「妙なものが映り込んでしまいました」みたいなものだったり、劇作でも若い人が遊び半分で行ったら次々と大変な目に遭って一人ずつ消えていって…みたいな、だいたい想像がつくものが多い。他にもいろいろあると思うんですが、心霊スポットをベースと聞いて、そういう想像がつく作品ではないものにしたかったんです。

映画館に足を運んで観てもらう上では、それなりのドラマツルギー(※作劇論/技法)が欲しいと思いましたし、お堅く言えば…テーマやメッセージに通じる心情の軸になるものが欲しいと思ったんです。オリジナルストーリーで作ると決めたときに、心霊スポットという若い人が騒いでいるだけのウワサみたいなところから、そうではいられなくなる何かが欲しいなと思って。ウワサが主人公の“血筋”と絡んできてしまうのは、最初は強引かなと思ったんですけど、今までそんな映画観たことがないかもしれないと思い直して、それから走り出した感じではありました。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会

―家族を中心に据えて物語を作ったのはなぜでしょうか?

どこの土地でも昔から、権力や土地を持っていて発展に貢献した地主とか名士がいたと思うんですよね。でも、その地主や名士にも良い部分と悪い部分があって、権力を振りかざしてきた人たちもいるでしょうし、それに虐げられてきた人たちや、さらに昔になると、もう人間扱いされないような人たちがいた時代もあったわけです。でもそれって、現代ではなくなったようでいて絶対どこかに残っているし、同等でなくても似た傾向は消え去らない。おそらく無くならない。そういった生まれてきた歪みとか関係性というものを、日本ではあまり自分から知ろうとはしないですけど、日本人にもいろんなルーツがあるし、今を生きているからには過去の積み重ねがあるわけですよね。自分の父親、母親、おじいちゃん、おばあちゃんくらいまでだったら通じるところもあるし、面識も持って接しているんですけど、実際に生きている時間が一緒ではない先祖となると、本当にあったのか分からない昔話みたいですし。

ぼくなりのアプローチなんですが、なぜか心霊スポットでの出来事を軸にほじくり返されて、辿らざるをえなくなる感じで物語を進めることで、年老いて変わりゆく両親の介護だったり、可愛がって育ててきた子どもが成長して親との間にミゾができる感じだったりとか、そういう誰にでも通じるものを間に入れることで、日本のどこに住んでいる人でも何かしら感じるところを持ってもらえるドラマにできたらなって思ったんです。結果的にはホラーなんですが、ストーリーとしてはファミリーストーリーになっていったんですね。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会

―“血筋”に興味を持れたたきっかけは?

親や兄弟との関係性において、ぼく自身が40代の半ばを過ぎたこともあると思うんですが、「どうも父方の家系にはこういう系統があるな」「母方ってこういう系統があるな」と気づくようになりました。例えば、男性が若くして亡くなる家系のように、気づいていないだけか、もしくは探ろうとしないだけで、みんな何かしらあると思うんですよ。ぼくの家系でも偏った傾向があると、過去に何かあったのかもしれないという発想にいきがちで、自分も大人になっていくに従って、目に見えない不安や心配を感じたりして。

「この得体のしれない不安はなんだろう?」とか、10年、20年を隔てて親や兄弟の言っていたことが、本人たちの知らないところで奇妙な偶然を生んでいたり、似たような出来事が起こったりするのに気付くようになってきた。何かぼんやりした得体のしれない、でも自分にもその血が流れているので逃れられないという、そんな“妙な怖さ”を取り入れたいなと思ったんです。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会

人間は本能的に恐怖を求めている? 旧犬鳴トンネルは足がすくむ場所

―実在する心霊スポット、旧犬鳴トンネルについてリサーチされたとお聞きしました。

最初は、よくある普通の心霊スポットの一つだと思っていました。旧犬鳴トンネルでは実際に幾つか事件が起こっているので、それをベースに尾ひれがついていったんだと思いますが、そういう場所は全国津々浦々にあるのに、“犬鳴村”は特に恐れられているんですよね。実際に地元の人に訊いても、みんな「行かない方がいい」って言うんです。なぜ、そこまで?…と思って訊き返すと、だいたいはその人本人も行ったことがあるんですよ。「行くな」って人に言ったり、噂が流れているのに、多くの方が行ってるんです。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会行った上でそう言うってことは、相当怖い目に遭ったのかもしれないですけど、自分も行っているじゃないか!って(笑)。怖いモノには近づかなければいいのに、わざわざ行きたくなる心理というのも不思議だし、なにか引き寄せるものがあるんでしょうね。何かしら確かめざるをえなくなる、興味を持たざるをえなくなる力や魅力があって、実は人間がそういうものを求める本能に訴えているのかもしれない。そこを辿っていったら、まさか自分の“血筋”と重なっていたら…というのが、映画のプロットの根っこにもなっています。恐怖や神秘の魅力って不思議なんですよね、嫌なら蓋をして終わりにすればいいんですが、そうはできない。なにかしら負い目を感じる部分をあえて好むっていう探求心の本能が人間のなかにあって、それはこの物語とリンクしている部分でもありますね。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会

―本物の旧犬鳴トンネルが映画の後半に出てきますが、実際に行ってみていかがでしたか?

映画にする上で現存している場所があるなら見ておかないとね、と脚本執筆前にシナリオ取材で脚本家やプロデューサーと一緒に行ったんですが、なるほどというか、思いのほか……。自分から行っておきながら、ちょっと足がすくむっていうのは久しぶりに感じましたね。言い出しっぺのプロデューサーは全く近づこうとしなかったですし(笑)。ぼくはブロックを登って中を覗いたりしたんですけど、夜は怖くて行けそうもないなと思いましたね。昼間に行ったんですが、それでもかなり怖かったです。もちろん、事前に入れていた情報による印象もあると思うんですが、それを度外視してもヤバい感じがする場所でした。でも、そこに行ったおかげで早々にプロットが生まれたので、やっぱりなるべく現地に赴くべきですね。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会

―旧犬鳴トンネルに行きたい、という人は……?

ぼくからはおススメできないです(笑)。自分でホラー映画を作っておきながらですけど、苦手な人はあえて怖がりに行く必要はないと思うんですよ(笑)。普通に落石や野生動物の危険もありますし。それでも怖い映画などを観てしまうのは何故なんだろう? というところまで自身に問い返しながら観てもらえたらいいな、とも思ったりします。

『犬鳴村』©2020 「犬鳴村」製作委員会

―『犬鳴村』を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

ホラー映画というと、基本的には若い層に向けられている作品が多いと思うんですが、この映画は中高年の方にも観てほしいと心から願っています。奇妙な因果関係とか、家族の在り方…試写などで事前に観ていただいた方のリアクションを窺っていても、大人から見た場合と若い人から見た場合とで、また違った感想や意見が出てきているので、これを観て果たして自分の親子関係はどうなのか? “血筋”はどうなのか? 自分は何者なのか?ということを、あらためて考えたり話し合ったりしてもらえるような体験になってくれたらいいなと思っています。

『犬鳴村』清水崇

『犬鳴村』は2020年2月7日(金)より公開

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『犬鳴村』

臨床心理士の森田奏の周りで突如、奇妙な出来事が起こり始める。奇妙なわらべ歌を口ずさむ女性、行方不明になった兄弟、繰り返される不可解な死。それらの共通点は心霊スポット【犬鳴トンネル】だった。「トンネルを抜けた先に村があって、そこで××を見た」女性が死の直前に残したこの言葉は、いったいどんな意味なのか? すべての謎を突き止めるため、奏は犬鳴トンネルに向かう。しかしその先には、決して踏み込んではいけない、驚愕の真相があった……。

制作年: 2020
監督:
出演: