みんな大好き『バトルシップ』をミリタリー目線で解説! 怒涛の“ありえない”展開に燃える!!

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ライター:大久保義信
みんな大好き『バトルシップ』をミリタリー目線で解説! 怒涛の“ありえない”展開に燃える!!
『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

快作か駄作か!? とにかく観て欲しいミリタリーアクション

映画『バトルシップ』(2012年)は<ユニバーサル・ピクチャーズ100周年記念作品>の冠で製作されたミリタリーSFアクション映画です。

『バトルシップ』
Blu-ray: 2,075 円 (税込) / DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント

ですが評価も興行収益も芳しくなく、第33回ゴールデンラズベリー賞で「最低作品賞」「最低監督賞」「最低脚本賞」「最低助演男優賞」「最低助演女優賞」「最低スクリーンアンサンブル賞」にノミネートされてしまい、最低助演女優賞を受賞してしまいました。ですが筆者は、良くも悪くもマンガチックなこの映画が、実は大好きです。

「なんだ、この設定は」「どうやって照準してるんだ」「いやいやいや、ボイラーのウォームアップには数日は必要でしょう」などとツッコミながらも、次々と繰り出される“ありえない”怒涛の展開に、いつのまにか口元を弛ませ楽しんでいました。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

なにしろ「『バトルシップ』と言ったところで、出てくるのはイージス駆逐艦じゃないか」と思っていたら、本当にバトルシップ=戦艦が出てきて大活躍するのですから! とくに好きなのは「みょうこう」が豪快に爆沈するシーン、そして重さ1225㎏(!)の40㎝砲弾を傷だらけ&汗まみれの男たちが担いで運ぶシーンです。『バトルシップ』は、愛すべきポンコツ映画だと筆者はあえて断言します。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

「リムパック」にエイリアン侵入

ハワイ沖合で各国海軍によるリムパック/環太平洋合同演習が始まろうとしていた。その時、宇宙から正体不明の物体=巨大エイリアン・クラフトが降下、着水。調査のためイージス駆逐艦「サンプソン」、「ジョン・ポール・ジョーンズ」、海上自衛隊イージス護衛艦「みょうこう」が接近したところ、物体はバリアを展開、3隻とハワイ諸島は物体ごと外界から隔離されてしまう。エイリアンの目的は? 地球の運命は? ――というストーリーです。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

ちなみにリムパック(RIMPAC)とは、太平洋域諸国海軍の技術および相互理解の向上を目的に1971年に始まったもので、80年から海上自衛隊も毎回参加しています。2014年と2016年には中国海軍も参加しましたが、排他的態度に終始した挙げ句にスパイ行為を行なって顰蹙を買い、以降、呼ばれなくなっているという……。

この、アメリカ海軍と海上自衛隊が共同戦線でエイリアンとバトルするという、日本のマンガかアニメかラノベのような展開、これで燃えなかったらウソでしょう。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

しかも「みょうこう」艦長のナガタ(永田)1佐を演じる浅野忠信が実に魅力的なキャラクターで、「ジョン・ポール・ジョーンズ」臨時艦長のホッパー大尉(テイラー・キッチュ)が無茶な突撃を始めると「あいつ、阿呆だな」と呟いた後に凛とした声で「ヤツを援護するぞ!」と命じるあたり、実に頼もしく、まるでスーパーヒーロー映画のようです。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

砲撃「打ち方始め」の命令も、日本海軍伝統の「うちぃかた、はじめ」になっていて、なんだかもう、ユニバーサル・ピクチャーズが海上自衛隊主役の映画を作ったかのようです。この映画、日本では評価も収益も良好だったのは、そんなところがあるのかもしれません。軽口はさておき、外国軍の所作をもリサーチして再現してしまうのも、アメリカ映画の底力ではないでしょうか。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

ちなみに本作は、かつての卓上ゲーム「レーダー作戦ゲーム(オリジナル名「BATTLE SHIP」)がベースになっています。攻撃のターンと防御のターンが交互し、そこで相手の位置を探って攻撃するのは、まさにレーダー作戦ゲームそのものなのです。エイリアンが放つ誘導弾の形が、ゲームに使うピンと同じなのも洒落っ気のひとつなのでしょう。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

「戦いはこれからだ!」

物語中盤は、バリア内部で唯一生き残った駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」がナガタら海上自衛官と孤軍奮闘するわけですが、この艦名はアメリカ独立戦争期の海軍軍人ジョン・ポール・ジョーンズ(J.P.J.)に因んだものです。

1779年の海戦で彼が指揮するオンボロ帆船「ボノム・リシャール」はイギリス海軍にメッタ打ちにされて大破します。でも艦長J.P.J.はイギリスの降伏勧告に対し、「I have not yet begun to fight!/俺は戦い始めてもいない=戦いはこれからだ!」と返答、接舷して白兵戦を挑みます。

『バトルシップ』©2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

この時、熱狂的にJ.P.J.と共に戦ったのは、意気消沈していたアメリカ水兵ではなく、「ボノム・リシャール」に乗り込んでいたフランス兵でした。いずれにせよ、こうしてJ.P.J.は“不撓不屈のアメリカ魂”の象徴となったのです。

そしてエイリアン・クラフトに決戦を挑むのは戦艦「ミズーリ」です。4隻が建造された「アイオア」級戦艦のうち3番艦の「ミズーリ」だけが保存されているのは、もちろん、太平洋戦争終決の舞台となった歴史的記念艦だからです。

1945年9月2日、「ミズーリ」艦上での日本の降伏調印式が行なわれた(写真:NARA)

このように、映画『バトルシップ』はアメリカ人の歴史観・世界観が織り込まれている、やっぱり正真正銘のアメリカ映画なのです。

文:大久保義信

『バトルシップ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年12月放送

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『バトルシップ』

ある日、ハワイ沖にアメリカや日本をはじめ各国の軍艦が集結し、大規模な合同軍事演習が行われようとしていた。血気盛んな米海軍の新人将校アレックスは、日本から参加した自衛艦艦長のナガタに激しいライバル心をむき出しにする。そんな中、演習海域に正体不明の巨大な物体が出現する。さっそくアレックスの乗る駆逐艦とナガタの自衛艦、それにアレックスの兄ストーンが艦長を務めるサンプソン号の3隻が偵察に向かう。ところがその正体は、地球に飛来したエイリアンの母船だった。やがて母船は巨大なバリアを築き、人類はそこに閉じ込められた3隻以外に反撃の手段を失ってしまうのだった。

制作年: 2012
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