ド肝を抜くゼロ戦、雷爆撃の生スタント!『トラ・トラ・トラ!』真珠湾の悲劇と登場人物その後

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ライター:大久保義信
ド肝を抜くゼロ戦、雷爆撃の生スタント!『トラ・トラ・トラ!』真珠湾の悲劇と登場人物その後
『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』© 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation./CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年8月放送

太平洋戦争開戦の朝

1941年12月8日早朝、日本海軍の6隻の航空母艦から発進した攻撃隊がハワイのパールハーバー(真珠湾)を奇襲攻撃、太平洋戦争が始まりました。

けれどもアメリカでは、パールハーバーが攻撃されたのは「12月7日」とされています。これはハワイ諸島と日本列島の間には日付変更線が設定されているためで、『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』(1970年)では、空母<赤城>艦内で渥美清と松山英太郎演じる炊事兵が「これは何日の飯なんだ?」と混乱するユーモラスなシーンがあります。

『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』© 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation./CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年8月放送

「トラ・トラ・トラや!」

本作のプロデューサー、ダリル・F・ザナックは『史上最大の作戦』(1962年)をプロデュースしたことで有名な人物です。

『トラ・トラ・トラ!』でもザナックは、当事国双方の監督が自国側演出に当たる、つまり日本側は日本人監督が、アメリカ側はアメリカ人監督が担当、日米双方を公平に描こうとしていて、それは成功していると思います。

『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』© 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation./CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年8月放送

優れて精緻な歴史研究書が脚本のベースとなっていることもあって、映画前半ではパールハーバー攻撃にいたるまでの日米双方の動きが丁寧かつスリリングに描かれます。やや退屈に感じる諸兄姉もいるかもしれません。でも歴史を辿るとは、そういうものなのだと思います。

ちなみに、映画タイトルになっている「ワレ奇襲に成功セリ」のモールス信号「トラ・トラ・トラ」は、「突撃、succeed(成功)」の「ト」(和文符号で・・-・・)、そして「S」と同じキーである「ラ」(・・・)を組み合わせたものです。

生のスタントの迫力に刮目!

戦闘シーンはすべて実機・実艦とミニチュアを使用して撮影されましたが、これがトンデモないド迫力で、これこそ本作の魅力といっても過言ではないでしょう。

スクリーンを埋めつくす爆発のなかを無数のメカが物理法則無視で飛び交う、CGを駆使した昨今のアクション映画からすれば、『トラ・トラ・トラ!』のアクションは物足りないかもしれません。ですが、飛行機を飛ばすという現実を知っていれば、ここに登場するエア・スタントは鳥肌が立つほどに過激なのです。

『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』© 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation./CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年8月放送

実際の港湾を超低空で飛んで魚雷(もちろん模擬弾ですが)を投下するわ、黒煙渦巻く航空基地に超低空で突っ込むわで、アメリカ映画のエア・スタント能力の高さに脱帽です。今日では安全面から撮影不可能でしょう。事実、撮影事故寸前の事態もあって、早過ぎる爆発に腰を抜かさんばかりに逃げ惑う航空基地地上要員役のスタントマンの姿を見ることができます。続く、爆発で吹っ飛んだプロペラが跳ね回る映像は伝説の“神シーン”です。

『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』© 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation./CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年8月放送

青白い排気炎を噴きながら「万歳」の歓呼のなかを発進するゼロ戦(役の改造機)が、いったん沈み込んでから上昇する“空母映画あるある”シーンも、実機と実艦(二代目「ヨークタウン」)ならでは臨場感に溢れる名場面でしょう。

『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』© 1970 Twentieth Century Fox Film Corporation./CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年8月放送

“ちょい役”の人たち、その後

最後に、映画『トラ・トラ・トラ!』に登場する2~3の人物のその後を紹介したいと思います。

【ウィリアム・アウターブリッジ海軍大尉】
誰それ? と思われるかもしれませんが、真珠湾に潜入しようとした特殊潜水艇「甲標的」を迎撃した駆逐艦「ワード(ウォード)」の艦長です。そう、太平洋戦争における最初の戦闘行動を為した人です。

その後、駆逐艦「ワード」は高速輸送艦に改装されますが、真珠湾攻撃のちょうど3年後の1944年12月7日、レイテをめぐる戦いにおいて日本陸軍の体当たり特攻機により大破、味方駆逐艦「オブライエン」の砲撃で処分されます。その時の「オブライエン」艦長が、奇しくもアウターブリッジ海軍少佐でした。

ウィリアム・アウターブリッジ(写真:U.S.NAVY/pubilc domain)

【コーネリア・フォート教官】
ハワイの民間飛行学校の教官で、映画では黄色い塗装の複葉練習機で飛行教習中に日本軍機の大編隊に出くわします。

事実、当時22歳だった彼女は、初めて日本軍攻撃隊と遭遇したアメリカ人パイロットとして記録されているのです。翌1942年にWAFS(アメリカ陸軍女性飛行輸送隊、後のWASP/女性航空軍操縦士隊)に入隊した彼女は、アメリカ国内で軍用機のフェリー任務に従事しますが、1943年3月、空中で他機に衝突されて墜落、死亡。

コーネリア・フォート(写真:U.S.A.F./pubilc domain)

【ドリス・ミラー炊事兵】
戦艦「ウエストヴァージニア」乗り込みの炊事兵。水冷式12.7ミリ重機関銃を操作して応戦する人です。射撃訓練を受けていないにもかかわらずの勇戦が認められ、海軍十字章を授与。その後、護衛空母「リスカム・ベイ」乗り込み炊事兵となりますが、同艦は1943年11月に日本軍潜水艦の雷撃を受けて沈没、ミラーも戦死します。

2032年に就役予定の「フォード」級原子力空母の4番艦CVN-81には、彼の名「ドリス・ミラー」が付けられることになっています。

ニミッツ提督から海軍十字章を授与されるドリス・ミラー(写真:U.S.NAVY/pubilc
domain)

文:大久保義信

『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:第二次世界大戦」で2021年8月放送

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『トラ・トラ・トラ![日本公開版]』

1939年9月、米国の日本に対する経済封鎖に対抗し、陸相・東条英機は米国への攻撃を近衛首相に提言する。1941年1月、ワシントンの海軍情報部が日本の暗号無電を解読して、この事態を察知。ルーズベルト大統領はキンメル提督を太平洋艦隊司令長官に任命し、日本の動勢に備えようとするが……。

制作年: 1970
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