トム・ホランドの脳内ダダ漏れ! SF青春映画『カオス・ウォーキング』デイジー・リドリー&マッツ・ミケルセン共演

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トム・ホランドの脳内ダダ漏れ! SF青春映画『カオス・ウォーキング』デイジー・リドリー&マッツ・ミケルセン共演
『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

男だらけの“心の声”ダダ漏れ村

“心の声”がダダ漏れになったら、どうしたらいいのだろう? 隠し事どころか、妄想することすら憚られてしまう。『カオス・ウォーキング』は、そんな設定を生かした青春SF映画。原作はYA小説(※ヤングアダルト小説:ハイティーン向けライトノベル)の<混沌(カオス)の叫び>三部作の第一部「心のナイフ」だ。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

西暦2257年、汚染された地球を脱出した人類は惑星「ニューワールド」にたどり着く。だが、そこは考えや想像したことが幻影となって現れる現象<ノイズ>が発生する特別な場所だった。奇妙なことに<ノイズ>は男だけに発現する。一方、女性たちは全員死に絶えてしまった。残された男たちは、独自に西部開拓時代のような町を築き、<ノイズ>と折り合いをつけて生活をしていた。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

町で最後に生まれた子供、トッド(トム・ホランド)は、亡き両親に思いをはせながら愛犬マンチーと暮らしている。<ノイズ>を自在に操れる町の首長プレンティス(マッツ・ミケルセン)は、トッドに自分と同じく<ノイズ>を操れる才能を見いだしていた。ある日、トッドは墜落した宇宙船を発見。中から出てきたのはヴァイオラ(デイジー・リドリー)と名乗る女性。彼女いわく「自分たちも地球からやって来た入植者で、私は先発隊であり、惑星軌道上にいる宇宙船に連絡する必要がある」と言うではないか。彼女の出現に動揺する男たち。プレンティスの不穏な言動を疑問に思ったトッドは、ヴァイオラ、そして愛犬マンチーと共に町から逃亡を図るのだが……。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

「心の<ノイズ>の映像化」で新たな映画体験を生み出す

むさ苦しい男の村に、空から女の子が降ってくる。まさに「YA小説あるある」といったところだが、他の作品と比べ特にユニークなのは<ノイズ>の設定だ。これが本当にノイズなので困ってしまう。トッドは年頃の青年なので、女性を見ればリビドーが湧くのは当然。油断すればヴァイオラにドン引きされる<ノイズ>が湧き出てしまう。それどころか何をしていても<ノイズ>が出現するので、とにかく鬱陶しい。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

この<ノイズ>の設定を言葉にするのは簡単だが、映像化すると抽象的、象徴的、具体的イメージが重なり合った不思議な効果が得られる。ヴァイオラを除く、男全員の周りには自らの心の中を具現化した映像が漂い、台詞が幾重にも重なって聞こえる。字幕を見れば、どの言葉が重要か理解できるのだが、英語の聞き取りができてしまう観客にとっては、とんでもない情報量をもつ映像が延々と続くのだ。さらに芸の細かいことに、登場人物に合わせて、<ノイズ>の“出方”が変わるのでパターンが読めない。非常に厄介である。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

だが、裏を返せばノイズは人の考え、空想、望み、信じること全て具現化できるのだ。さらに設定を推し進めていくと「意識していない思いが、啓示の如くあらわれる」という表現も可能となる。これが『カオス・ウォーキング』に深みを持たせている。つまり意図的にノイズを発生させることで「人を幻覚で惑わせることもできる」し、意図していないノイズが「神の啓示」に聞こえることもある。この使い分けが、これまでにない映画体験を生み出し、映画そのものの重要なファクターとして扱われている。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

原作との違いは?  三部作構想は実現する?

本作は非常に複雑な映像が続くのだが、基本は頼りないトム・ホランドとツンデレなデイジー・リドリーのイチャイチャ逃避行、そしてマッツ・ミケルセンの悪役っぷりだ(いい加減、ハリウッド映画はマッツに悪役ばかり演らせるのはやめてはどうか?)。特に金髪姿のデイジーについては、『スター・ウォーズ』続三部作(2015~2019年)のレイ役の印象を払拭するための努力が垣間見られて微笑ましい。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

監督は 『ボーン・アイデンティティ』(2002年)や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)のダグ・リーマン。彼はジェイソン・ボーン3部作の途中で監督を降板させられたり、他作品では再撮影を強要されたりとツイていない監督として有名。本作でも、初号試写は散々な評価を食らい、15億円かけての再撮影を余儀なくされている。そのせいもあってか、三部作中の一作目という立ち位置にもかかわらず、本作だけでも十分満足のできる作りになっている。ただ公開が予定より3年も遅れてしまい、本国では劇場公開後、即ソフト化という憂き目に遭っている。ただこれはデイジー・リドリーのファンには嬉しかったようで、映画ソフト不況の中、なかなかの売り上げとなった。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

惜しむらくは、原作にあった愛犬マンチーにもノイズが出現するという設定が捨てられていること。トッドはノイズを通して犬と会話ができたのだが、この映画版ではそれがない。観客の心を揺り動かすにはもってこいの設定なのに残念だ。俺も猫や犬と会話したいもん。

『カオス・ウォーキング』© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

文:氏家譲寿(ナマニク)

『カオス・ウォーキング』は2021年11月12日(金)より全国公開

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『カオス・ウォーキング』

西暦2257年、〈ニュー・ワールド〉。そこは、汚染した地球を旅立った人類がたどり着いた〈新天地〉のはずだった。だが、男たちは頭の中の考えや心の中の想いが、〈ノイズ〉としてさらけ出されるようになり、女は死に絶えてしまう。この星で生まれ、最も若い青年であるトッドは、一度も女性を見たことがない。

ある時、地球からやって来た宇宙船が墜落し、トッドはたった一人の生存者となったヴァイオラと出会い、ひと目で恋におちる。ヴァイオラを捕えて利用しようとする首長のプレンティスから、彼女を守ると決意するトッド。
二人の逃避行の先々で、この星の驚愕の秘密が明らかになっていく──。

制作年: 2021
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