ロベルト・ベニーニ&M・ガローネ監督が語る!『ほんとうのピノッキオ』 世界的童話のダークファンタジー映画化秘話

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ライター:佐藤久理子
ロベルト・ベニーニ&M・ガローネ監督が語る!『ほんとうのピノッキオ』 世界的童話のダークファンタジー映画化秘話
『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL - LE PACTE SAS

あの世界的童話がダークファンタジー映画に

世にも奇妙でダークなピノッキオの映画が誕生した。

イタリアで生まれたこの世界的な童話を新たに映画化したのは、『ゴモラ』(2008年)、『ドッグマン』(2018年)などで知られるマッテオ・ガローネ。彼は原作に忠実に、子供向けだからと残酷さに蓋をせず、シニカルで風刺に満ちた作品に仕立てた。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

登場する妖精や動物の造形も不気味でいて愛らしく、映像の美しさには目を見張る。またピノッキオを育てるジェペットに扮したのは、しばらく映画界から遠ざかっていたイタリアの名優ロベルト・ベニーニ

これぞピノッキオの真髄と思える世界を作りあげたガローネ監督とベニーニに、本作について語ってもらった。

ロベルト・ベニーニ マッテオ・ガローネ(撮影:佐藤久理子)

「ジェペット役のオファーをもらった日は嬉しくて眠れなかった」

―まずベニーニさんにお伺いしますが、2012年の『ローマでアモーレ』以来、映画界から遠ざかっていたのはなぜですか。そして『ほんとうのピノッキオ』に出演しようと思った理由は?

ロベルト・ベニーニ(以下:ベニーニ):ここ数年はずっと、俳優として舞台やテレビのショーをやっていたんだ。いろいろな国にツアーをした。それにこの仕事は、イエスと言うのと同じぐらいノーと言うことを知っていなければならない。つまり嫌いなものにはノーと言うこと。で、人々はイエスといったものについては知るけれど、ノーと言ったものは知る由もない。で、僕はノーとたくさん言ってきたわけ(笑)。

でも本作は、2つの点でぜひやりたいと思った。まず脚本がよかったこと、そしてとくに監督。マッテオ・ガローネは、イタリアが誇る世界的な監督のひとりだ。彼の作品はつねに素晴らしい作家性のあるもので、映像的にも“映画”を感じさせるもの。そんな彼からジェペットを演じることを頼まれるなんて、夢のようだった。子供の頃からピノッキオが好きだったから、今ジェペットの役ができるなんて素晴らしい贈りものだよ。話をもらった日、嬉しくて眠れなくて、翌朝マッテオに電話して、嬉しくて眠れないよ! と言ったぐらい(笑)。とてもハッピーだ。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

マッテオ・ガローネ(以下:ガローネ):一晩中脚本を読んでいたから眠れなかったんだよ(笑)。

―ガローネ監督にお伺いします。ピノッキオが世界中で普遍的な人気を誇る理由はどこにあると思いますか。

ガローネ:ピノッキオの物語は人間に関して多くを語っていて、さまざまな解釈ができる。人生にはいろいろな誘惑があり、なんと危険なものであり得るか、自分を気遣ってくれる人々の助言を聞かないと、どんなことになるか。一方で、移民が出てくる現代的な要素もある。そして何よりも父と子の愛の物語であり、贖罪の話だ。ゆえにこの本は世界のどこでも、いつの時代にも通用するものなのだと思う。

でも僕らはオリジナルの時代に戻りたかった。そして、できるだけシンプルでダイレクトで、オリジナルをリスペクトしたものにしたかった。子供も観られるようなユーモアに富み、それでいてアイロニーのあるもの。原作には、人間社会に対するシニカルな視点がある。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

―あなたは『五日物語 -3つの王国と3人の女-』(2015年)でも暗い寓話を映画化しましたが、ピノッキオは以前から惹かれていたのでしょうか。

ガローネ:僕は6歳のとき、初めてピノッキオのストーリーボードを書いたんだ。それは今回、僕の1つのモデルとなった。というのも、本作を作るにあたって、童心を呼びさます必要があったんだ。大人になるに従って、子供のときに持っていた純粋さというのは、気づかないうちに失っているものだから。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

「もしフェリーニ監督とのピノッキオが実現していたら……」

―ベニーニさんが初めて本を読んだときの記憶はありますか?

ベニーニもう覚えていないな。というのも、物心ついたときから母は僕をピノッキオと呼んで、僕はピノッキオになりきっていたんだ。いつもいたずらな悪ガキで、いろんな話を作っていた。だから本を実際に読んだかどうかも覚えていないんだ(笑)。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

―フェデリコ・フェリーニとはかつて、あなたが演じるピノッキオを作ろうという話があったのですよね?

ベニーニ:そう! 彼はピノッキオを本当に愛していた。何度も何度も僕にその話をしていたよ。彼にとってピノッキオは神聖な聖書のようなものだった。実現できなかったのは本当に残念だ。実現していたら、僕は今日、ピノッキオとジェペットと両方演じたことになったのに!

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

―監督に特殊メイクについてお伺いしたいのですが、ピノッキオを始め、動物たちがとても人間的な味を発揮していました。オーガニックな質感にこだわられたのでしょうか。

ガローネ:それは僕のテイストに拠るんだが、動物たちはリアルであると同時に、人間のように喋らせたかった。キツネなどはアニマル・タッチのある人間というか。人間と混ざったときにあまり浮かないもの。だからオーガニックな質感にこだわった。CGと混ぜているけれど、僕らは特殊造形のためにプロステティクス(prosthetics=補綴物)を多く用いた。ピノッキオの造形はアカデミー賞のメークアップ賞を2度受賞している特殊メークアップ・アーティストのマーク・クーリエに頼んだ。とても重要だったから。

いまの子供は特殊効果に慣れているから、レベルの高いものでなければいけない。そして原作にある形容に忠実であることも、僕にとっては大事だった。さらに全体的なことを言えば、この地方や村の貧しさを表現することも大切だったから、特殊効果は目立ってはいけない。シンプルで目立たないようにする必要があったんだ。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

「ピノッキオとドン・キホーテが映画界でもっとも危険な企画だろうね」

―6歳でストーリーボードを書くほど惹かれていた原作を映画化するのに、なぜこれほど時間が掛かったのですか。

ガローネ:お金が集まらなかったからだよ(笑)。なんと46年も掛かってしまった。実を言うと自分でもよくわからないが、ある意味ピノッキオに選ばれたというか。ピノッキオは世界的な童話だから、そういう作品を映画化することは容易ではない。ピノッキオとドン・キホーテ。この2つが、映画界でもっとも危険な企画だろうね。

ベニーニ:触れたら大変、みたいなね(笑)。

ガローネ:迷信がある(笑)。でも『ゴモラ』みたいな別の意味で危険な映画も作ってきて、今日やっと、そろそろ取り掛かってもいいのではないかと思えたんだ。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

―ピノッキオはマフィアよりも危険なんでしょうか(笑)。

ガローネ:子供はとても無意識の存在なわけで。もちろん危険の意味は違うけれど、困難はある。でもじつはいま、『ゴモラ』の続編となる企画に携わっていて、それで気付いたのは、『ゴモラ』も子供をとりまく暴力に関するストーリーで、似た側面があるということ。それに、僕の映画はすべて寓話の要素がある。ピノッキオの場合は『五日物語 3つの王国と3人の女』同様、寓話にリアリズムを加えた。一方、『ゴモラ』のような現代の映画には、寓話の要素を足して作る。それが僕のやり方なんだ。

でも映画はコラボーレションの賜物だ。この映画は多くの人々の協力で完成した。ロベルトは彼の世界をもたらしてくれたし、同様に、スタッフみんなが素晴らしいものをもたらしてくれた。だから僕はコーディネーターなんだよ。それがむしろ監督の仕事だと思っている。適した人材を選ぶこと。そして誰もが、バラバラに自分の思いを描くのではなく、同じ一つのものに向かって進むようにすることだね。

『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL – LE PACTE SAS

取材・文:佐藤久理子

『ほんとうのピノッキオ』は2021年11月5日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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『ほんとうのピノッキオ』

貧しい木工職人のジェペット爺さんが丸太から作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始めた。ピノッキオと名付けられたやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出して、森の奥深くへと誘われる。道中、ターコイズ・ブルーの髪を持つ心優しき妖精の言いつけにも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さない。なおも命からがらの冒険を繰り広げるピノッキオは、はたして「人間の子どもになりたい」という願いを叶えられるのだろうか……。

制作年: 2019
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