『ジョーカー』のホアキンを抑えヴェネツィア男優賞獲得『マーティン・エデン』 最注目俳優ルカ・マリネッリ&監督が語る

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ライター:佐藤久理子
『ジョーカー』のホアキンを抑えヴェネツィア男優賞獲得『マーティン・エデン』 最注目俳優ルカ・マリネッリ&監督が語る
『マーティン・エデン』ルカ・マリネッリ©Kazuko Wakayama

マルチェッロ監督「ルカがこの役を導いてくれたといっても過言ではない」

Netflixオリジナル作品『オールド・ガード』(2020年)でも注目を集めた、いま赤丸急上昇中のイタリアの国際派俳優、ルカ・マリネッリ。彼が2019年の第76回ヴェネツィア国際映画祭で、みごと男優賞に輝いた作品が『マーティン・エデン』である。

『マーティン・エデン』©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

監督のピエトロ・マルチェッロは、アメリカの作家ジャック・ロンドンの小説の舞台を20世紀後半のイタリア、ナポリに移し、労働者階級の無骨な青年が小説家を目指し、自力で道を切り開いていく姿を力強く描いている。エデン役には初めからルカを思い描いていたというマルチェッロ監督は、こう語る。

「『グレート・ビューティ/追憶のローマ』(2013年)や『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015年)といった、彼のこれまでの作品を観て、彼しかいないと思った。ルカはとてもフィジカルな表現力を持った俳優で、あの年齢のなかでもっとも才能のある俳優のひとりだ。僕は脚本を書くときに、俳優を想定して書いた方がうまくいくんだけど、彼がこの役を導いてくれたといっても過言ではないよ」

『マーティン・エデン』ピエトロ・マルチェッロ監督 ©Kazuko Wakayama

ルカ「タフな男のフィジカルなパワーを身体的に付けた」

貧しい家庭に生まれたエデンは、あるときブルジョワ家庭の息子を助けたことがきっかけで、その姉エレナに出会い、恋をする。教養のあるエレナの影響で彼は文学に目覚め、作家を志すようになるが、その一方で社会主義にも傾倒し、やがてふたりのあいだの格差は越えがたい壁となる。だがそれも、エデンの小説への情熱を突き動かす理由になるのだ。ルカはエデンというキャラクターについて、こう語る。

「彼は彼女に恋をして、彼女を理解しようと務めるけれど、彼女の方は彼を理解しようともサポートしようともしない。それは悲しいことだ。だから彼は、彼女が自分を信じられないのなら自分は出て行くしかない、と決断する。エデンはつねに前進している。そういう彼のエネルギーは素晴らしいし、演じる上で彼の魂や情熱を感じることが、僕にとってはとても大事だった」

『マーティン・エデン』©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

身体的な表現を重視するルカは、肉体労働をこなすエデンを演じるために、体を鍛えて筋肉をつけたという。

「じつは『素数たちの孤独』(2010年・日本未公開)という僕の最初の映画では、役作りのために16キロ太った。そのときに、身体的な表現というのはとても大切だと理解した。だからこの映画でも、準備の段階でトレーニングに専念したんだ。エデンは1日中働いているようなタフな男で、彼が持っているフィジカルなパワーは、この役を表現するのに欠かせないと思った。でも彼は成功を経ると、変わってしまう。後年は皮肉な人間になり、自身に絶望する。だから前半のパワーを手放さなければならなかったけれど、幸い撮影は2ヶ月ぐらい中断したから、そのあいだに前半の肉体と魂を離れたんだ」

『マーティン・エデン』©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

マルチェッロ監督「小津や溝口、大島といった監督のファンだ。彼らの映画には真実がある」

マルチェッロ監督は、もともとドキュメンタリー出身で、日本でもイタリア映画祭で紹介された前作『失われた美』(2015年)が、世界で高く評価されている。そんな彼は、往年の日本映画の大ファンでもあるという。

「小津(安二郎)、溝口(健二)、大島(渚)といった監督のファンだ。彼らの映画には真実がある。僕は映画で自分のことを語ることには興味がない。ストーリーを語ること、そこにある真実を語ることに興味があるんだ」

『マーティン・エデン』©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

マルチェッロ監督の手腕とルカの鮮烈な演技により、マーティン・エデンというキャラクターは力強く現代によみがえることになった。エデンは小説家になる夢を実現した後に、現実の世界に失望していくが、それでも、そこには真実を求めてやまない男のパッション、ロマンがある。その熱さが、観客の胸にもこだまする。

『マーティン・エデン』©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

取材・文:佐藤久理子

『マーティン・エデン』は2020年9月18日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

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『マーティン・エデン』

貧しい船乗りマーティンが優雅なブルジョワの“高嶺の花”エレナに恋したことから作家を目指し、幾多の障壁と挫折を乗り越えてついに名声と富を手にするが……。果たして彼を待ち受けるのは希望か、絶望か――。

制作年: 2019
監督:
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