実録マフィア映画!一人の裏切り者がイタリア犯罪史を変えた『シチリアーノ 裏切りの美学』

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ライター:BANGER!!! 編集部
実録マフィア映画!一人の裏切り者がイタリア犯罪史を変えた『シチリアーノ 裏切りの美学』
『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

なぜ大物マフィアは組織を裏切ったのか? 任侠道にも通じる実録アウトロー物語

80年代にイタリア~ブラジルで暗躍したドン・マシーノことトンマーゾ・ブシェッタの半生を、イタリアの名匠マルコ・ベロッキオ監督が描いた『シチリアーノ 裏切りの美学』。主人公ドン・マシーノはシチリアの巨大犯罪組織コーザ・ノストラの一員であり、三大派閥のひとつパレルモ派に所属していた男だ。本作は、彼が“血の掟”に背き組織の情報を警察に提供するという歴史的事件を中心に描いた実録マフィア映画である。

『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

本作はたびたび実際の報道映像が挿入されるが、終始ドロリと色濃度の高い映像との違和感がなく、マフィアに牛耳られた当時のイタリアの濁った空気感が伝わってくる。清濁併せ呑むという表現が適切かどうかは微妙だが、現代イタリアがどのようにして作られてきたのかが伺い知れる、マフィアの影響力を物語るようなシーンが盛りだくさんだ。もちろん悪影響のほうが大きいのだが、ベロッキオ監督は彼らのおかげで日々の糧を得ている一般人がいるという真実も隠そうとしない。そんな組織の中でそれなりの地位にいたブシェッタは、なぜ命を賭けてまで裏切ろうとしたのか?

『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

シチリアで誕生したコーザ・ノストラはピラミッドの頂点=ボスに厳格な忠誠関係を強いる完全にコントロールされた犯罪組織であり、劇中でブシェッタがジョヴァンニ・ファルコーネ判事(マフィアの撲滅に生涯を捧げた裁判官)にそのシステムを説明するシーンもある。彼は、そこで「私は一兵卒にすぎない」と強調するのだが、幹部として権力を得ることよりも自由を望んだからこそ、クスリとカネに溺れ殺戮を繰り返す組織の没落が許せなかったのかもしれない。敵対するコルレオーネ派との抗争は苛烈を極め、彼の家族や仲間も次々と殺されてもいた。それでもブシェッタは“改悛者”と呼ばれることを拒絶し、あくまで自分のほうこそマフィアに裏切られたのだと主張する。しかし、当然ながら彼とて“悪”であることには変わりないのだが……。

『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

再現度高すぎ! まるで演劇!? マフィア史を塗り変えた裁判シーンは必見!!

実録やくざ映画にとって殺しのシーンは花形だが、本作ではひとつひとつを詳細に描写したり、のたうち回る様子をこってりスローで見せたりはせず、まさかの“キルカウント”方式で、スピーディーに“死者数”の凄まじさを印象づける。とはいえ殺害シーンは可能なかぎり事実に基づいて撮られているそうで、マフィアの恐ろしさを知らしめるには十分すぎるほどだ。マフィア同士の抗争はもちろん、ファルコーネ判事は高速道路を走行中に爆殺されており、この事件によって世界中のマフィアに対する心象が悪化したと言われている。このシーンも斬新なアングルで描かれていて、背筋が凍るような恐ろしさだ。

『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

血なまぐさい抗争を逃れブラジルで闇ビジネスを仕切りながら悠々自適に暮らしていたブシェッタだったが、現地で逮捕、強制送還され、やがて組織の罪を告白するに至る。彼の証言によって逮捕されたマフィアは数百人にのぼるというが、彼らを前に証言する法廷シーンがまたスゴい! 裁判官と向き合っているブシェッタの後ろには弁護士たちがズラリと並び、さらにその後方の鉄格子の中には被告人たちがいて、まるで動物園のようにギャーギャーと騒いでいるのだ。「Tommaso Buscetta」で検索すると裁判の様子を動画で観られるので、ぜひ見比べて完コピぶりに驚いてほしい。

『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

多くの逮捕者が出た事件だけに、門外漢からすると人名を覚えるのが大変だったり対立関係が分かりづらかったりするのだが、これまでほとんど真正面から描かれてこなかった“裏切り者”をメインに据えた実録映画は、それだけでも観る価値がある。仁義なきマフィア映画『ゴッドファーザー』(1972年)とはまた一味違った迫力があるので、ぜひシルクの開襟シャツなんかを着て劇場でどっしり鑑賞していただきたい。本作を観れば、もし何らかの手違いでマフィアに転生してしまっても大丈夫! なお、ブシェッタの半生を追ったドキュメンタリー『裏切りのゴッドファーザー』(2019年)がNetflixで配信中なので、本作の鑑賞前後に観れば全体像がつかみやすくなるはずだ。

『シチリアーノ 裏切りの美学』©Fabio Lovino©LiaPasqualino

『シチリアーノ 裏切りの美学』は2020年8月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマほか順次公開

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『シチリアーノ 裏切りの美学』

1980年代初頭、シチリアではマフィアの全面戦争が激化していた。パレルモ派の大物トンマーゾ・ブシェッタは抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃れるが、残された家族や仲間達はコルレオーネ派の報復によって次々と抹殺されていった。ブラジルで逮捕されイタリアに引き渡されたブシェッタは、マフィア撲滅に執念を燃やすファルコーネ判事から捜査への協力を求められる。麻薬と殺人に明け暮れ堕落したコーザ・ノストラに失望していたブシェッタは、固い信頼関係で結ばれたファルコーネに組織の情報を提供することを決意するが、それはコーザ・ノストラの ”血の掟” に背く行為だった……。

制作年: 2019
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