午後ローで19日放送! 戦場の奇跡『メンフィス・ベル』 B-17爆撃機で戦死者続出の任務に挑んだ若者たちの運命

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ライター:大久保義信
午後ローで19日放送! 戦場の奇跡『メンフィス・ベル』 B-17爆撃機で戦死者続出の任務に挑んだ若者たちの運命
『メンフィス・ベル』© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

戦場の奇跡? メンフィス・ベル号

映画『メンフィス・ベル』(1990年)は第二次世界大戦さなかの1943年、イギリスからドイツ爆撃に向かうB-17爆撃機「メンフィス・ベル号」の搭乗員たちに焦点を当てた作品です。

『メンフィス・ベル』© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

1944年6月にフランス・ノルマンディーに上陸(『史上最大の作戦』[1962年])するまで、アメリカとイギリスのドイツ本土への攻撃手段は爆撃機しかありませんでした。

アメリカ陸軍航空軍(「アメリカ空軍」創設は大戦後)の第8航空軍は、対ドイツ爆撃25回の出撃で任務解除としていました。24回の爆撃任務を無傷で生き残ってきた「メンフィス・ベル号」に、いよいよ25回目の出撃命令が下されます。目標はドイツ本土のブレーメンにある軍需工場。ドイツ軍が戦闘機と対空砲でガッチリと防備を固めているのは間違いありません。果たして「メンフィス・ベル号」の運命やいかに――。

『メンフィス・ベル』DVD 1,572円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

“空の要塞”B-17

日本では「大戦期アメリカの爆撃機」と言えば「B-29」ですが、欧米では圧倒的に「B-17」です。ナチス打倒という崇高な任務のため、敵戦闘機と対空砲火で犠牲を出しながらも突き進む姿は、まさに欧州の解放者=アメリカの象徴なのです。実はアメリカには「B-24リベレーター(解放者)」という、そのものズバリのニックネームの爆撃機もあって、爆弾搭載量や航続距離はこちらの方が高性能なのですが、いささか被弾に弱い面もあり将兵からの評判は悪かった……。

砲火で機体側面に大穴が開いたB-17(U.S.A.F./Public Domain)

その点、頑丈な機体の各所に防御用機関銃を装備したB-17は「フライング・フォートレス(空の要塞)」というニックネーム通りの爆撃機でした。事実、B-17は異常なまでにタフな航空機で、「こんなに破壊されても帰ってきたのか!?」な記録写真が多く残されています。『トラトラトラ!』(1970年)にもちょっと顔を出すように、B-17は太平洋戦線にも投入されていて、その頑丈さに日本陸海軍戦闘機パイロットを驚かせたそうです。

いつかは戦死する仕事

とはいえ、ドイツ軍の凄まじい迎撃にアメリカ軍も膨大な損害を出します。第8航空軍爆撃機搭乗員の終戦までの戦死者は、なんと約4万3000名! 統計では58%の搭乗員が、24回までの出撃で死亡しているといいます。これはもはやロシアン・ルーレットのようなもので、爆撃機搭乗員は虚無的運命論者になる傾向があったと伝えられています。さらに、夜間都市爆撃を遂行したイギリス空軍爆撃機搭乗員も約5万名の戦死者を出しています。

撃墜されても撃墜されても、続々と次の爆撃機(と搭乗員)を送り出す……。機材と人間の磨り潰し合いでもある国家総力戦とは、恐ろしいものなのです。

ドイツ軍戦闘機と空中衝突しながらも帰還したB-17(U.S.A.F./Public
Domain)

だからこそ劇中の軍広報部は「メンフィス・ベル号、25回出撃達成!」を戦意高揚のネタにしようと目論んでいるわけです。「頑張れば無事に帰郷できますよ」と。もっとも、あまりの損害(戦死)の多さに爆撃機搭乗員の補充が追い付かなくなり、1943年春以降は任務解除までの出撃回数が25回から30回に延長されているんですが。この1943年夏から秋にかけての、第8航空軍にとって一番苦しい時期を描いたのが『頭上の敵機』(1949年)です。

さらに、ドイツ軍の戦闘機と対空砲だけでなく、高高度を飛ぶという環境そのものも搭乗員たちを苦しめました。高度8000メートルでの気温は氷点下マイナス30度にもなります。しかも当時の機体は、今日のジェット旅客機のように与圧されていないうえに、爆撃機なので銃座など一部は開口しています! 一応、電熱服と酸素マスクを着装してますが、エベレスト山頂で暴風に曝されているようなもので、想像するだけで苛酷!!

『メンフィス・ベル』© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

戦略爆撃

対ドイツ爆撃は「戦略爆撃」でした。戦略爆撃とは敵国の産業や経済の中心を破壊して国力を削ぐ戦法です。ちなみに戦域の敵軍を攻撃するのが戦術攻撃です。

緒戦の経験からイギリス空軍は住民を町ごと焼き払う夜間無差別都市爆撃に邁進しますが、アメリカ陸軍航空軍は昼間照準爆撃に固執します。それは、優れた機体とノルディン爆撃照準機という自分たちの技術に対する信奉、そしてアメリカ的なヒューマニズムと解釈されています。

『メンフィス・ベル』© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

劇中でもマシュー・モディーン演じる機長デニス大尉が、自らを危険に曝しつつ、目標上空を一周して再照準する決断をします。ところが、そんなアメリカ軍も1944年末からは住民被害を無視した地域爆撃に方針転換するのです。ドイツと日本の両方で。

『メンフィス・ベル』© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

実機のB-17を飛ばしての撮影、巧みに積み重ねられるエピソード、魅力的なキャスト陣の演技、勇ましさと同時に哀感をも感じさせるジョージ・フェントンの音楽などなど、『メンフィス・ベル』が優れた戦争映画であることは間違いありません。

けれども本作に限らず戦争映画では、劇中で描かれなかった部分を思うことで、より興味深くなると筆者は思います。

『メンフィス・ベル』© 1990 The Bountiful Company Limited. © 1990 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

文:大久保義信

『メンフィス・ベル』はテレビ東京「午後のロードショー」で2021年10月19日(火)13時40分より放送

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『メンフィス・ベル』

1943年、イギリスの米軍基地は、ナチス・ドイツへのB-17による危険な白昼攻撃を繰り返していた。そんな中、その白昼攻撃を最後の任務として迎えることになった10人の若きクルーたちがいた。 彼らが乗り込むのは、24回の出撃で唯一無傷を誇る戦闘機“メンフィス・ベル”。それでも撃墜の恐怖は消え去るものではない……。それぞれの夢と不安を胸に、若者たちは、いまドイツ本土の激戦区へ向けて飛び立つ!

制作年: 1990
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