祝! 最新作『スパイラル:ソウ オールリセット』公開!! 新たな才能を世に送り出してきた『ソウ』シリーズ徹底総括

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ライター:松崎健夫
祝! 最新作『スパイラル:ソウ オールリセット』公開!! 新たな才能を世に送り出してきた『ソウ』シリーズ徹底総括
『スパイラル:ソウ オールリセット』®, TM & © 2021 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

『ソウ』シリーズを“リセット”する

『悪魔のいけにえ』(1974年)のレザーフェイス、『ハロウィン』(1978年)のマイケル・マイヤーズ、『13日の金曜日』(1980年)のジェイソン・ボーヒーズ、『エルム街の悪夢』(1984年)のフレディ・クルーガー、『チャイルド・プレイ』(1988年)のチャッキーなど、人気ホラー映画にはシリーズを象徴するキャラクターが存在する。そして彼らには、チェーンソー、ホッケーマスク、鉄の鉤爪など、シンボリックなモチーフが与えられていることも特徴だ。例えば、山高帽にチョビ髭、サイズの合わない靴にステッキという姿。それらのモチーフが統合されると“小さな放浪者”というイメージを生み出し、人々は自ずとチャールズ・チャップリンを想起する。たとえ彼らが登場する映画を観ていなかったとしても、モチーフそのものがキャラクターを結びつける。それは、作品そのものが世間に浸透したという証だ。

警察官がターゲットにされる連続殺人事件。猟奇犯の仕掛けたゲームを捜査する刑事の姿を描いた『スパイラル:ソウ オールリセット』は、2004年に第1作が公開された『ソウ』シリーズの第9作目となる最新作。トビン・ベルが演じた連続猟奇犯ジグソウは、犯罪に対する独自の義侠心と美学を持つ異彩を放った登場人物。渦巻きの頬を持つビリー人形と共に『ソウ』シリーズを象徴するキャラクターとなった。世間を震撼させたジグソウは、脳腫瘍の悪化によって既に絶命しているのだが、今作ではジグソウの模倣犯と思わしき人物による新たなゲームが展開。過去の『ソウ』シリーズをアップデートさせながら、これまでの世界観を<完全なる新章>としてリセットさせている。

『スパイラル:ソウ オールリセット』®, TM & © 2021 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

新人監督たちの登竜門としての『ソウ』シリーズ

『ソウ』(2004年)は、製作当初から必ずしもシリーズ化が意図されていたという訳ではなかった。そもそもホラー映画には「若手映画監督にとっての登竜門」的な側面がある。基本的に低予算であることから、興行的なリスクは低い。経験の浅い監督にとっては観客を怖がらせるという演出力が問われるものの、恐怖を与えられることさえできれば、実は演出に対する自由度が高い。若手監督たちにとっては、これから世に出ようとするための名刺代わりになるというメリットがあるのだ。例えば、フランシス・フォード・コッポラやオリヴァー・ストーン、サム・ライミといった著名な映画監督たちのデビュー作も、実はホラー映画なのである。

『ソウ』が初公開された当時のチラシを見ると「サンダンス映画祭の上映で“絶叫が熱狂に変わった”」という惹句が採用されている。ロバート・レッドフォードが主催するサンダンス映画祭は、インディペンデント映画を対象にした“新たな才能”を発掘することを目的のひとつとしている。『ソウ』がサンダンス映画祭で上映されたといういきさつからも判るように、第1作は「ジェームズ・ワンというオーストラリア出身の若手映画監督」による注目のインディペンデント作品に過ぎなかったのだ。言うまでもなく、ジェームズ・ワンは『アクアマン』(2018年)や『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)といった大作を手がける映画監督に成長。当時のハリウッド視点では「海外からやって来た新たな才能」という存在だったのである。シリーズ全作品を製作したプロデューサーのマーク・バーグは「『ジョンQ -最後の決断-』(2002年)の興行的痛手から低予算の企画を探していた」と述懐。サンダンス映画祭での好評価を受けて、急遽シリーズ化を目論んだことを明かしている。興行的な成功を収めたことで、『ソウ』の続編は製作されることになったのだ。

第1作の翌年には、早くも第2作を北米で公開。監督に抜擢されたのは『スパイラル:ソウ オールリセット』のダーレン・リン・バウズマンだった。彼は共同脚本も担当した『ソウ2』(2005年)のほか、『ソウ3』(2006年)、『ソウ4』(2007年)を監督。第1作が10月29日公開だったことに倣い、新作を毎年製作してハロウィンの時期に公開することが恒例となった。

『スパイラル:ソウ オールリセット』メイキング写真®, TM & © 2021 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

また、『ソウ5』(2008年)ではバウズマン監督に代わって、『ソウ2』以降の美術を担当してきたデヴィッド・ハックルが監督。『ソウ6』(2009年)と『ソウ ザ・ファイナル 3D』(2010年)では、シリーズ全ての編集を担当してきたケヴィン・グルタートが監督するなど、劇中でジグソウの“後継者”が描かれることと呼応するかのように、「新たな才能」という側面よりも「シリーズの功労者」を重視した“代替わり”をさせていたことも一興。

作品をまたいで変化していくキャラクターの存在感

『ソウ』シリーズにはいくつかの特徴がある。例えば、観客をミスリードさせる演出と、意外な真実を提示する終盤のどんでん返し。あっと驚く仕掛けは、“映画の文法”に対する観客の先入観を巧みに利用した構成によるものだ。例えば、原題である『SAW』というタイトルにも、<見る><のこぎり><ジグ“ソウ”>など、多角的な解釈が可能になるという意図を窺わせる。また、監禁された限定空間からの脱出、特殊な拷問器具やトラップ、「GAME OVER」の台詞と共に鋼鉄の厚い扉を閉めるという終幕などの“ルール”をシリーズで踏襲させることにより、演出と構成の雛形を形成。厳密には殺人ではなく、死に至る状況を作っているだけだという点も特異だったと言える。さらに、残虐描写が際立つようになった第3作では、レイティングに対する議論が巻き起こったことも忘れてはならない。

ジグソウは「命を粗末にする者たちへの戒め」を意図した監禁・拷問を行なっていたが、シリーズを経るごとにその精神が薄れていったという経緯もある。中でもコスタス・マンディロアが演じたホフマン刑事は、己の悪事を隠蔽するために監禁・拷問を実行するという私利私欲で不遜なキャラクターに変化。ホフマン刑事を筆頭に、物語において脇役だと思っていた人物が、次作では主役になるという意外な展開も『ソウ』シリーズの特徴のひとつだ。例えば、『ソウ』で生き残りの一人でしかなかったアマンダは、ジグソウの意思を継ぐ者として重要な役割を担ってゆく主要キャラクターになった。同様に、『ソウ3』の脇役として登場したホフマン刑事や、『ソウ4』の脇役として登場したストラム捜査官も、次作から主要キャラクターへと変化する驚きがある。

謎解き展開も復活!“俳優再生工場”から豪華スター映画へ

『ソウ』シリーズには“俳優の再生工場”という役割もある。1980年代から1990年代に注目された俳優たちが、復活を果たしているからだ。例えば、第1作からケリー刑事役を演じてきたディナ・メイヤーは『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)でヒロイン役を演じた俳優。アマンダを演じたショウニー・スミスも『ブロブ/宇宙からの不明物体』(1988年)でヒロインを演じていた。また、ホフマン刑事を演じたコスタス・マンディロアは『モブスターズ/青春の群像』(1991年)や実写版『北斗の拳』(1995年)などの主要キャストとして活躍。

『ソウ ザ・ファイナル 3D』で生還者のひとりを演じたショーン・パトリック・フラナリーは、テレビシリーズ『インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険』(1992~1993年)でインディ役を演じ、ノーマン・リーダスとW主演の『処刑人』シリーズ(1999年/2009年)で人気を博した俳優だ。さらにマーク・ウォールバーグの兄であり、『ソウ2』『ソウ3』『ソウ4』でマシューズ刑事を演じたドニー・ウォールバーグは、1980年代にトップアイドルグループだったニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの元メンバーで、グループ解散後に俳優へ転身。『身代金』(1996年)や『シックス・センス』(1999年)に出演したものの、キャリアが低迷したという経緯があった。彼らには「将来を嘱望された注目のスターだった」という共通点があるのだ。

その点で『スパイラル:ソウ オールリセット』は、クリス・ロックサミュエル・L・ジャクソンが共演するスター映画になっている。第1作にはダニー・グローヴァーやケイリー・エルウィズというスター俳優が出演しているものの、『ソウ』シリーズは決して黒人俳優が活躍するような場にはなっていなかった。また、今作は『セルピコ』(1973年)や『プリンス・オブ・シティ』(1981年)のような警察組織の汚職や腐敗を描いた映画でもある。劇中で描かれている警察組織に対する不信感は、現在のアメリカ社会との符号を見出せるだろう。奇しくも刑事映画の定番である“バディもの”として黒人刑事が中心となる物語には、良い意味での“隔世の感”もある。『ソウ』シリーズが継続されていたハリウッドでは、一方で『ムーンライト』(2016年)や『グリーンブック』(2018年)がアカデミー作品賞に輝くなど、人種問題や多様性をテーマにした作品が評価されるという潮流を生み出していたからだ。

『スパイラル:ソウ オールリセット』®, TM & © 2021 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

本作には『ソウ』シリーズのファンを自認するクリス・ロックが製作総指揮として参加している。作品には彼のアイディアも活かされているが、もしも異なる時代(2020年代以前)に製作されていたとしたら、今回と同じような作品になったかどうかは怪しい。そういう意味では、時代が生んだ<新章>なのだとも言えるだろう。また『ソウ』には、シリーズを重ねる毎に「謎解き」という魅力が失われ、いつしか観客から「拷問大喜利」だと揶揄されるようになった経緯もある。そのため、『スパイラル:ソウ オールリセット』には、謎解き要素を復活させようとした姿勢も窺わせる。例えば、冒頭に登場するメッセージの音声。明らかにジグソウとは異なる声を流すことで、「模倣犯は誰なのか?」というミステリーを導いている。つまり、『ソウ』シリーズの原点回帰を目指しながら、今後の展開を見据えた<新章>をスタートさせる“後継者”的な作品なのだ。

『スパイラル:ソウ オールリセット』®, TM & © 2021 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

文:松崎健夫

【出典】
DEN OF GEEK

『スパイラル:ソウ オールリセット』は2021年9月10日(金)より全国公開

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『スパイラル:ソウ オールリセット』

地下鉄の線路上。舌を固定され、宙吊りの男。舌を引き抜いて生きるか、ぶらさがったまま死ぬか? 猛スピードの電車が轟音を立てて迫り、やがて無残にも男の体は四散する。それはジグソウを凌駕する猟奇犯が仕掛けた、新たなゲームの始まりだった――。

ターゲットは《全て警察官》。

不気味な渦巻模様と青い箱が、捜査にあたるジークと相棒ウィリアムを挑発する。やがて、伝説的刑事でありジークの父・マーカスまでもが姿を消し、追い詰められていくジーク。ゲームは追うほどに過激さを増し、戦慄のクライマックスが待ち受ける。

制作年: 2021
監督:
出演:
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