元“天才少女化石ハンター”のレズビアン・ロマンスを描く『アンモナイトの目覚め』 K・ウィンスレットとS・ローナンの衣装にも注目!

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ライター:野中モモ
元“天才少女化石ハンター”のレズビアン・ロマンスを描く『アンモナイトの目覚め』 K・ウィンスレットとS・ローナンの衣装にも注目!
『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

実在の古生物学者と貴族女性の秘めた交流

21世紀になってもなおこの社会にしぶとく残っている性差別は、近年、ますます多くの人々に「解決すべき深刻な問題」として認識されるようになった。それに伴って、これまで伝えられてきた歴史を見直し、女性であるという理由で軽視され、忘れられてきた人々の功績を改めて評価しようという動きも、世界規模で勢いづいている。

そういった流れにおいてメアリー・アニングは、とりわけ大きな注目を集め、学術的な専門家に限らず一般の人々のあいだでもぐんぐん知名度を上げている存在だ。18世紀末、イギリスの田舎の貧しい家庭に生まれ、高等教育を受ける機会を得られなかったにもかかわらず、独学の発掘調査で大発見を重ねて古生物学の発展に貢献した「天才少女化石ハンター」は、数多くのフィクションの“元ネタ”にもなってきた。

限定上映から口コミでカルト的な支持を獲得するに至った男性どうしのラブストーリー『ゴッズ・オウン・カントリー』(2017年)のフランシス・リー監督も、アニングの人生に驚き、イマジネーションを刺激されたのだろう。『アンモナイトの目覚め』は、アニングと貴族の女性シャーロット・マーチソンとの、あり得たかもしれないロマンスを描く。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

ありそでなかった初共演! ケイト・ウィンスレット✕シアーシャ・ローナン

イングランド南部ドーセット州の海辺の村、ライム・リージス。メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は、幼い頃から化石を発掘して観光客や研究者に売ることで生計を立ててきた。鋭い観察眼でアンモナイトや恐竜の骨を見つけ、ロンドンの考古学者たちから持て囃されたものの、貧しい生まれの女性である彼女には、学会の一員として研究成果を発表し、正当な評価を得る道は閉ざされていた。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

中年となったアニングは、海辺の村で化石を観光客に販売する店を営みながら、老いた母と静かに暮らしている。ある日、そんな彼女のもとを、旅の途中の貴族で化石コレクターのロデリック・マーチソン(ジェームズ・マッカードル)が、妻のシャーロット(シアーシャ・ローナン)を伴って訪れる。憂鬱に沈んで体が弱っている妻を化石採集に同行させてやってほしいとロデリックに頼まれ、いやいやながら承諾するアニング。さらにアニングは、数週間にわたって村で静養することになったシャーロットを看病することになる。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

はじめは報酬のために引き受けた面倒事だったが、共に時間を過ごしてお互いを知るうちに、ふたりのあいだに特別な感情が芽生えてゆくのだった。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

なぜリー監督はアニングを同性愛者として描いたのか?

シャーロット・マーチソンは実在の人物で、残された書簡からアニングの親しい友達だったことがわかっているが、恋愛関係にあったかどうかは不明。遺族のひとりはアニングを同性愛者として描くことについて、「それだけで注目に値するアニングの人生を、よりセンセーショナルにしようとしている」と批判的なコメントを出した。これに対してリー監督は、「これまでクィアの歴史がたびたび“ストレート化”されるのを見てきたのだし、歴史的人物が異性愛者であるという証拠がない場合、その人物を別の文脈で見てみることは許されないのだろうか?」と述べた。どちらの言い分も一理あると思う。「勝手に異性愛者にするな」と言いたくなるケースも、これまで多々あったのだろう。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

特筆すべきは衣装のクオリティ。メアリーは発掘のために海辺で崖を登り、時に泥だらけにもなる女性らしく、スカートの下にパンツ(トラウザーズ)を履いて、足元をブーツで固めたスタイル。シャーロットは裕福な貴族の妻らしい可憐なドレスに身を包んでいる。白いレースの襟やリボンのついたボンネットなどロマンチックなアイテムの数々を配し、抑えた色調からほのかな甘さがにじみ出る絶妙のバランス。元オリーブ少女の中年は必見だ。担当したマイケル・オコナーはキーラ・ナイトレイ主演の『ある公爵夫人の生涯』(2008年)ではアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞し、ミア・ワシコウスカ主演の『ジェーン・エア』(2011年)ではノミネートされている。数多くの時代ものに出演してきたケイト・ウィンスレットが、「コルセットをつけずにこの時代の女性を演じることができて嬉しかった」とインタビューで語っているのも、「これまで歴史はどう描かれてきたのか」を考えさせられる。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

フランシス・リー監督は、女性が男性の庇護下に入らずに生きることが現在以上に難しかった時代の女性たちの生活、そして彼女たちの結びつきを想像し、美しい映像に仕立てあげた。「ひとつの解釈」を提示することによって、観る者ひとりひとりに歴史の様々な可能性について思い巡らすよう促している映画だ。

『アンモナイトの目覚め』© 2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited

文:野中モモ

『アンモナイトの目覚め』は2021年4月9日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開

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『アンモナイトの目覚め』

人間嫌いで、世間とのつながりを絶ち暮らす古生物学者メアリー。かつて彼女の発掘した化石は一世を風靡したが、今はイギリス南西部の海辺の町ライム・レジスで、観光客の土産物用アンモナイトを探して細々と生計をたてている。そんな彼女はある日、裕福な化石収集家の妻シャーロットを預かることとなる。美しく可憐で奔放、何もかも正反対のシャーロットに苛立ち、冷たく突き放すメアリーだが、自分とはあまりに違うシャーロットに惹かれる気持ちをどうすることもできず――。

制作年: 2020
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