未曾有のゴジラフィーバーの影に『GODZILLA ゴジラ』の貢献あり! 2021年『ゴジラ対コング』の前に改めて“怪獣映画”とは何か? を考える

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ライター:ナカムラリョウ
未曾有のゴジラフィーバーの影に『GODZILLA ゴジラ』の貢献あり! 2021年『ゴジラ対コング』の前に改めて“怪獣映画”とは何か? を考える
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発売・販売元:東宝
©2014 Warner Bros. Ent and Legendary.

「新聞、ラジオ、テレビ、週刊誌……みんなゴジラ、ゴジラ、ゴジラ、ゴジラ!!」

『キングコング対ゴジラ』(1962年)でそう叫んでいたのは多胡部長だが、21世紀も20年が過ぎた今になって、まさに世界は未曾有のゴジラフィーバーを迎えてはいないか。ゴジラが新宿や日比谷のランドマークになり、東京・大阪の中心地に常設のグッズショップが相次いでオープン。毎年各地で企画展やイベントが催され、テーマパークのアトラクションになり、2020年はついに淡路島に実物大のゴジラまで出現した。そしてハリウッドでは現在、日米の巨大怪獣たちを主役に据えた“モンスターバース”と呼ばれるシリーズが展開されている。

生粋のゴジラ信者を自称する自分でさえ、あまりの情報量に喜びを通り越して戸惑いを覚えることもしばしば。ファンにとって、現在の状況はまさに現実の奇跡。世紀の大事件なのだ。

このターニングポイントは何だったのか? と問われれば、多くの人が『シン・ゴジラ』(2016年)の記録的大ヒットを挙げるだろう。もちろん、そこに異論の余地はない。ただしその成功に至る以前に、2014年に公開されたレジェンダリー版『GODZILLA ゴジラ』の存在がエポックメイキングであったことを忘れてはいけない。

ともすればここ数年間で、我々はゴジラの新規コンテンツがリリースされることに急激に慣れ始めている。「俺は新しいゴジラを認める」「いや、俺は認めない」という、昭和時代から延々繰り返されてきたファン同士の内輪揉めを見かけることもしばしば。だがしかし、もう一度ここで思い出してほしい。日本のゴジラシリーズが『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)を最後に長い休眠期間に入って以来、つい最近まで我々オタクたちはそんな議論すらままならないほどの“失われた10年”を耐え忍んでいたのではなかったか?

いよいよハリウッド最新作となる『ゴジラVSコング』の公開を来年に控えた今こそ、そんな「モンスターバース誕生前夜」を改めて振り返っておきたい。

『クローバーフィールド』や『パシ・リム』のモヤモヤを吹き飛ばした真打ち『GODZILLA ゴジラ』

そもそも「怪獣映画」とは何か。このジャンル自体が日本独自でもありワールドワイドな定義付けは難しいが、ここではあえて「20世紀以降の近現代社会を舞台に、架空の巨大生物が出現する顛末を描いた作品」とくくってみる(つまりファンタジー映画に登場する怪物や、ゾンビなどホラー映画のクリーチャーは除外する考え方だ)。いざそうなると、少なくとも今世紀のハリウッド大作において、怪獣映画と呼べる作品は驚くほど少ないことに気づく。ピーター・ジャクソン版『キング・コング』(2005年)などが散発的に製作された程度だ。

そんな状況下で、個人的に衝撃を受けた作品が『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)。公開前の情報規制が徹底され謎に包まれていた本作は、蓋を開けてみればニューヨークに突如巨大生物が出現するというパニックムービーだった。巨大生物災害を、いち若者の視点からモキュメンタリータッチで描くという斬新なアプローチには久しぶりに怪獣少年の血が騒ぎ、「こういう映画が観たかったんだよ!」と大興奮したのを覚えている(余談だが、この作品のエンドロールでゴジラ映画愛を炸裂させた楽曲を提供したマイケル・ジアッチーノは、その後『ジュラシック・ワールド』シリーズ[2015年~]でも怪獣映画チックなスコアをつけている)。

ただ、監督のJ・J・エイブラムスが「ゴジラにインスパイアされた」と明言しているわりに、本作に登場する怪獣がほぼ実体のつかめない旧来のクリーチャー然としたデザインであった点については、率直に「もっとかっこいい怪獣を見たいなあ」という想いも残った。

その次に世界中の怪獣ファンたちを興奮させた作品といえば、ギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』(2013年)だろう。のっけから「KAIJU」というワードが頻出し、巨大人型ロボット“イェーガー”が市街地で怪獣と格闘するという「ぼくのかんがえたちょうたいさくとくさつえいが」マインドが炸裂しまくった世界観には、全オタクが熱狂した。しかしここでも、怪獣はあくまで制裁されるべき憎らしいヒール役に徹する。「イェーガー最高!」とはしゃぎつつ、内心「やっぱりゴジラをこのスケール感で見たいんだよなあ」という複雑な想いを抱えていたことを白状しておく。

そんな「初恋の相手の面影を、新しい恋人の仕草の中に探す」的しみったれマインドがずっと拭えずにいたゴジラファンは自分だけではあるまい。そこに差し込んだ大いなる希望の光こそ、ゴジラ誕生60周年というメモリアルなタイミングで公開された『GODZILLA ゴジラ』だったのだ!

ファンはゴジラの登場を10年待っていた!『GODZILLA ゴジラ』プレミア上映で沸き起こった拍手

結論を先に言うなら、超大作かつ人気キャラクターのリブートという宿命ゆえ、作品の評価がそれなりに分かれたのは致し方ない。しかし、自分は公開直後にこんなツイートをしていた。

確かに、率直に言ってツッコミどころがないわけではない。若干ヘンな日本描写や、怪獣バトルのいいところでカットされる謎編集。わりとカジュアルに扱われる核兵器描写……。

でも、そんなことはどうでもいい。ゴジラとは単なる「KAIJU」ではなく、初恋の相手でもあり、さらに言えば永遠に手の届かない自分の理想像そのものなのだ。そんな俺たちのゴジラが、めっちゃマッスルになって海の向こうから帰ってきた! この感激、この喜びが上回り、作品を全肯定したい衝動に駆られたのをよく覚えている。

とにかくオープニングからして良い。怪獣映画にありがちなド派手な音楽で重めなタイトルロゴがドーン! とくるヤツ(もちろんそれも大好きだが)ではなく、静寂の中からそっと浮かび上がる“GODZILLA”のタイトル。ここでまず震えた。Futuraフォントが高級ブランドロゴのようなエレガントさを醸し出し、これから始まるのが特別な物語であることを暗示させる。

そして何よりゴジラの登場シーンである。上映開始からちょうど1時間が経過したあたりで、ようやく我々の前に姿を現すゴジラ。数分間にわたってじわじわと盛り上げ、煽り、ついにその全身が晒され雄叫びを上げるまでのシークエンスは何度観ても鳥肌を禁じ得ない、シリーズ屈指の名場面!! 公開前に日本で行われたプレミア上映の際には、ここで喝采の拍手が巻き起こったそうだ。それもそうだろう、この場にいた観客はゴジラの登場を1時間待っていたのではなく、“10年と”1時間待っていたのだから。なお、この登場場面は諸般の事情で地上波放送だと大事なシーンがカットされがちなので、初見の方はぜひノーカット版で観てほしい。

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怪獣映画不毛の地ハリウッドへ果敢に挑んだギャレス・エドワーズ監督の怪獣愛に敬意を

少し逸れるが、個人的に印象的なのはゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)にゴジラが出現するくだり。この橋は『パシフィック・リム』でも破壊され、(怪獣映画ではないけど)『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年)でも重要な舞台になっている。他にもニューヨークのブルックリン橋は旧トライスター版『GODZILLA』(1998年)や『クローバーフィールド』で破壊されるなど、ハリウッドのモンスター映画では「大きな吊橋」がやたら登場するのが面白い。もちろん日本の特撮映画でも『ゴジラ』(1954年)の勝鬨橋をはじめ橋が登場する作品は多々あるが、ハリウッド作品ほどの存在感は感じない。サンフランシスコやマンハッタンなど半島/島として独立した都市で生活するアメリカ人にとって、橋という存在は「あの世」と「この世」、「現実」と「非現実」の境目のシンボルとして捉えられているのだろうか? そんな考察にもつい思いを馳せてしまう。

その他にも見どころや小ネタを挙げたらキリがないのだが、もはやすでに多くのメディアで語り尽くされているだろうから詳しくはそちらに譲りたい。

ただここまでに書き連ねてきた通り、この作品は単なるゴジラ映画の1作ではなく、それまで不毛の地であったハリウッド怪獣映画というジャンルに、ありえないほどの期待とプレッシャーを背負いながらも果敢に「KAIJU」の旗をかかげた作品だということを、ぜひ思い出しながら楽しんでほしい。しかも、本作のメガホンを取ったギャレス・エドワーズは当時、長編としては低予算作品『モンスターズ/地球外生命体』(2010年)を撮っただけの若手監督だった。『モンスターズ』からも感じ取れる作家哲学や異形のモンスターへの偏愛、そして「僕もゴジラが好きなんだ!」というエモーションを、歴史的な大作に対しても臆さず注ぎ込んだ彼の仕事に改めて敬意を評したい。

この作品が成功したからこそ、続く『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)においても怪獣が本来の怪獣らしく、活き活きと描かれたのだと思う。

さあ、モンスターバースの集大成となる『ゴジラVSコング(原題)』(2021年公開予定)では、我々はどんな怪獣たちを目撃できるのだろうか? まだまだ事前情報も少ない上、公開が延期に次ぐ延期を重ねており期待と不安は尽きないが、鑑賞前には改めて『GODZILLA ゴジラ』を観直してから臨むことを強くオススメしたい。

文:ナカムラリョウ

『GODZILLA ゴジラ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年1月放送

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『GODZILLA ゴジラ』

1999年。芹沢博士はフィリピンの鉱山で巨大生物の化石と繭のような物体を発見。同じ頃、日本の発電所で働く米国人ジョーは、謎の地震による事故で妻を失ってしまう。そして現在。いまだ事故の真相を追う父のために来日した息子フォードは、突如現れた怪獣に遭遇する。

制作年: 2014
監督:
  • BANGER!!!
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