実録!『犯罪都市』はマ・ドンソクの刑事バイオレンス決定版!! 犯罪映画の殿堂入り確実な傑作

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ライター:松岡環
実録!『犯罪都市』はマ・ドンソクの刑事バイオレンス決定版!! 犯罪映画の殿堂入り確実な傑作
『犯罪都市』©2017 KIWI MEDIA GROUP & VANTAGE E&M. ALL RIGHTS RESERVED

マブリー・ファン大増殖の起爆剤

日本でマ・ドンソクのファンが増えたのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)以降ではないかと思う。あのコワモテの愛妻家キャラがマ・ドンソクの地ともかぶり、魅力が全開した結果、主演のコン・ユを食ってしまうぐらい強い印象を残したのだ。さらに、これに続いてマ・ドンソクのファンを大増殖させたのが、本作『犯罪都市』である。刑事役は以前にも演じているが、本作の“怪物刑事”マ・ソクト役は、以後のマ・ドンソク主演作がヒットするための人物パターンを作り上げた。腕っ節はウルトラ級で正義感も強いものの、ちょっとずっこけたところもある男。ただ、悪に対しては徹底的に立ち向かい殲滅する、というヒーロー像だ。

 

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このパターンは、その後も『ファイティン!』『無双の鉄拳』『守護教師』(全て2018年)等へと引き継がれていき、ついには主人公がヤクザの親分という「極悪人」なのに、異質の悪と闘う『悪人伝』(2019年)まで生み出すことになった。『悪人伝』は2019年のカンヌ映画祭で、ミッドナイト・スクリーニング部門正式上映作品に選ばれ、世界中にマブリー(彼のあだ名「マ・ドンソク+ラブリー」から)・ファンを増やしたのである。

『悪人伝』を始めとするこれらの後発作品から振り返ってみると、『犯罪都市』がそれまで脇役の多かったマ・ドンソクを前面に押し出し、人気沸騰させた起爆剤的秀作であったことがわかるだろう。作品の背景やストーリーを紹介しつつ、『犯罪都市』のスグレモノ・ポイントを見ていこう。

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実際の事件を大胆かつ緻密にアレンジした実録映画

『犯罪都市』は冒頭のテロップにもあるように、2004年、ソウルの南西部にある衿川(クムチョン)警察署が扱った事件が元になっている。1990年代の初め頃、中国に住む朝鮮族の人々が仕事を求めて韓国に渡り、デジタル団地などがある九老(クロ)区や衿川区に住み着いたため、加里峰洞(カリポンドン)を皮切りに、大林洞(デリムドン)等複数の中華街がソウルやその周辺に出現した。

『犯罪都市』©2017 KIWI MEDIA GROUP & VANTAGE E&M. ALL RIGHTS RESERVED

やがて中華街には、甘い汁を吸おうと朝鮮族の暴力団が流入して来て、多くの組織が生まれる。抗争も多くなったため、2004年に衿川警察が暴力団一掃作戦を行ったのだが、それが本作のベースだ。もちろん多くの脚色が施されているが、よく考えられたストーリーが大胆かつ緻密に組み立てられており、脚本も担当したカン・ユンソン監督の力量がうかがえる。これが監督第1作とはとても思えないが、加えてマ・ドンソクを筆頭に出演者たちの魅力とアクの強さが見事に溶け合い、面白くなったのが本作である。

『犯罪都市』©2017 KIWI MEDIA GROUP & VANTAGE E&M. ALL RIGHTS RESERVED

衿川警察署の強力班(凶悪犯担当課)の刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)は、地元中華街ヤクザの抗争を手打ちにさせたり、別の暴力団組長から情報を収集したりと忙しい。ところが、釜山に近い昌原(チャン・ウォン)からやってきた若い朝鮮族ヤクザのチャン・チェン(ユン・ゲサン)とその手下のソンラク(チン・ソンギュ)、ヤンテ(キム・ソンギュ)は、かつてない凶暴な手口でこの地区をわがものにしようとする。

『犯罪都市』©2017 KIWI MEDIA GROUP & VANTAGE E&M. ALL RIGHTS RESERVED

中国語をしゃべる彼らは、昌原の賭場での借金返済を地元ヤクザ組員に迫るために来たのだが、片腕を詰めるわ殺しはやるわの残忍な手口で組を乗っ取り、またたく間に一大勢力に。彼らを追っていたマ刑事らは、署長から「本件は本省の広域捜査チームに委ねる」と言い渡され、窮地に陥いる。そこでマ刑事はチョン班長(チェ・グィファ)を巻き込み、ヤクザ一掃大作戦が進行中のように署長に思わせて、「30人は逮捕します」と大言壮語。崖っぷちのマ刑事ら強力班の面々は、中華街の人々にも協力を頼んでチャン・チェン一味を追い詰めていくが……。

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マ・ドンソクvsユン・ゲサン(&イカツい手下たち)

本作の成功の第一要因はもちろん、マ・ドンソクに前述のような刑事像を作り上げさせたことだ。“この刑事、凶暴につき”なタイプなのだが、姑息なごまかしをしたり、トンデモな作戦を思いついたりと、見ていてまあ面白すぎることも盛りだくさん。あのデカい図体で、眉間にしわを寄せながらずっこけたことを言ったりやったりするマ・ドンソクは、たぐいまれなるコメディアンでもある。

そして第二要因は、この刑事に敵対するヒール役にユン・ゲサンを持ってきたことだろう。ユン・ゲサンにとって初めての悪役ではないかと思うのだが、『プンサンケ』(2011年)で見せた非情さの片鱗も漂わせながら、全く違う酷薄な朝鮮族ヤクザを見事に作り上げてみせて惚れ惚れする。長髪で、その髪をお団子にまとめあげるシーンなどにも品のなさが出ていて、このいやったらしさがあればこそ、マ・ドンソクが光るのだと思わせられる。その2人が対決する、トイレでのアクションシーンはすさまじいガチ勝負で、どちらの俳優のファンも必見である。

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さらに、ユン・ゲサン扮するチャン・チェン(中国語のサイトでは、残念?ながら「張震」ではなく「張晨」の字を当ててある)には、これまたエグい2人の手下がいるのだが、そのキャラクターたるや、ボス以上に目を背けたくなる異常さ。丸坊主に長い顔で長身のソンラク(チン・ソンギュ)と、丸顔で背の低いヤンテ(キム・ソンギュ)という特異なキャラの存在も、本作の成功を支えているのだ。

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余談ながら、チン・ソンギュは『守護教師』でも悪役として登場し、打って変わってダンディな姿を見せているし、かたやキム・ソンギュは、『悪人伝』ではかの連続殺人鬼として登場する。のちのマ・ドンソク映画にもキャスティングされる実力が本作から垣間見えるのだが、その証拠に、チン・ソンギュは本作で<青龍映画賞>の助演男優賞を受賞している。

実録ものの料理方法が巧すぎ! シリアスになりすぎない絶妙な塩梅

映画賞と言えば、カン・ユンソン監督も本作で<韓国映画評論家協会賞>や<百想芸術大賞>等の新人監督賞を受賞しており、『犯罪都市』の出来の良さがうかがえる。実録ものはどうしてもシリアスになりがちだが、本作は「こんなに警察を茶化して大丈夫?」なシーンも多く、エンターテインメントとして超一級の仕上がりだ。韓国映画には刑事ものの秀作が多いが、本作もまた、殿堂入りの1本と言えるだろう。

 

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영화에서는 악당들이지만 알고보면 착한 친구들이에요. 범죄도시와 우리 동생들 많이 사랑해주세요~ #TheOutlaws

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日本版予告編には笑えるシーンがうまく配されていて、説教部屋ならぬ「真実の部屋」シーンや、「容疑者を追跡中に殴りすぎて仮死状態に!」などのシーンも垣間見られる。その他YouTubeには、日本公開時にアップされた本編映像も(短いけど!)あるので、映画の魅力がおぼろげながらわかると思う。そこからぜひ本編へ。絶対にご損はさせません。

文:松岡 環

『犯罪都市』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年1月放送

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『犯罪都市』

2004年ソウル。強力班のマ・ソクトは、ナイフで向かってくるヤクザにもひるまず、張り手一つでなぎ倒すコワモテ刑事。ある日、ビリヤード場で刺傷事件が発生。被害者は毒蛇組の組員、犯人は対立するイス組の男だった。ソクト刑事は難なく犯人を捕らえ、それぞれの組のボスの仲を取り持ち、街のバランスを保っていた。しかしそんな中、中国から新興勢力の黒竜組が乗り込んでくる。ボスのチャンは、情け容赦ない手段で毒蛇組を乗っ取り、次第に勢力を拡大していく。縄張りを荒らされたイス組や、最大勢力の韓国人暴力団も黙っておらず、一触即発の事態に。ついに強力班は組織の一掃作戦を立てるが……。

制作年: 2017
監督:
出演:
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