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【南インド編】ロケ地巡りしたい映画3選!『バーフバリ』ほかディープサウス聖地巡礼

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ライター:#安宅直子
【南インド編】ロケ地巡りしたい映画3選!『バーフバリ』ほかディープサウス聖地巡礼
『バーフバリ 伝説誕生』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

広大かつ奥深いインド映画×ロケ地観光

インド映画とロケ地観光をめぐる話は、インド映画そのものと同じくらい広大でかつ奥深く、尽きることがありません。ソングシーンで物語の舞台とは無関係な土地にワープすることも多いので、インド映画ゆかりの土地は世界に散らばっています。インド国内では、テランガーナ州ハイダラーバード近郊の有名なラーモージー・フィルムシティのように観光地としても確立しているスポットはほんの一部です。

また韓流のように、現地の観光局がロケ地マップなどを作成して振興し、大手旅行代理店がパッケージツアーを催行するという現象もまだ起きていません。ロケ地の特定から始まり、旅程策定、各種予約まで、旅行者個人の熱意、知識と勘が試される、それがインド映画ロケ地観光なのです。

カリカット・ビーチ(筆者撮影)

ロケ地がナイスな映画&名作のロケ地の中から、残暑を乗り切るのにふさわしい涼しさ・爽やかさを感じさせる三つをご紹介したいと思います。いずれも南インド関連です。

1.『ディル・セ 心から』(1998年:ヒンディー語)と世界遺産のニルギリ山岳鉄道(タミルナードゥ州)

登場人物の心情をドラマチックに表現するために、物語の舞台からワープして展開するダンスシーンとして有名なのが、本作の「チャイヤ・チャイヤ 愛の影」ソングです。インドでは興行的に振るわなかった本作ですが、A・R・ラフマーン(『スラムドッグ$ミリオネア』、「ロボット」シリーズなど)によるこの曲のインパクトは大きく、インド映画にインスパイアされた「ボンベイドリームス」というミュージカルを構想中だったアンドリュー・ロイド・ウェバー(「キャッツ」「オペラ座の怪人」など)が、ラフマーンを同作の作曲家として招聘することになりました。

ロケ地のニルギリ山岳鉄道は、英領時代19世紀末に高級避暑地ウダガマンダラム(ウーティ)へのアクセス手段として敷設されたもの。これを最初に見た時には、音楽のパワーに圧倒されると共に、「インド映画あるある」の交通機関(列車、乗用車、馬車などなど)で鈴なりになった人々が歌い踊るというイメージの突飛さに驚いたものでした。けれどもその後いろいろな見聞を重ねて、鈴なりの乗客が歌い踊るというのはインド亜大陸では現実に起きていることの延長にあるというのが分かってきました。ドキュメンタリー作品である『タゴール・ソングス』(2019年)でもそういうシーンを見ることができます。

なお、その後の規則の改変で、列車の屋根に乗って移動するシーンの撮影をインド国鉄は原則として認めないようになり、こうしたソングがこれから世に送り出されることは、少なくとも実写ではなくなりそうです。登山鉄道の終点であるウーティは、憧れの高級リゾート。

ここで撮影された映画作品は数百にのぼり、「ウーティの木の葉で映画に映ったことがないものは1枚もない」とまで言われています。日本で公開された作品では『神さまがくれた娘』(2011年:タミル語)、『バルフィ! 人生に唄えば』(2011年:ヒンディー語)などもウーティで撮影されています。

2.『バーフバリ』2部作(2015年、2017年:テルグ語)とアディラッピッリ滝(ケーララ州)

『バーフバリ 伝説誕生』の冒頭シーン、それから『バーフバリ 王の凱旋』のエンディングロールで鑑賞者の目に焼きついたであろう「あの滝」は、南北に細長いケーララ州のまん中あたりにあります。

西ガーツ山脈を源としてアラビア海に注ぐチャーラックディ川にあるアディラッピッリ滝は、落差約25メートル・幅約100メートルの巨大さで、ここもまた古くから映画撮影の名所。『バーフバリ』2部作ではCGによってさらに増し増しになっていましたが、手を加えずともこの滝の堂々たる佇まいは一度見ただけで印象に残ります。

真偽は不明ながら、かつては自殺の名所だったとも言われるこの一帯は、1970年代から始まった映画撮影によって有名になり、ネイチャーリゾートに変貌しました。日本で公開・映画祭上映された作品では、上記の『ディル・セ 心から』、『ザ・デュオ』(1997年:タミル語)、『ラーヴァン』(2010年:ヒンディー語)、『ジャスミンの花咲く家』(2013年:テルグ語)もここで撮影されています。

3.『ウスタード・ホテル』(2012年:マラヤーラム語)とカリカット市街&ビーチ

カリカットはケーララ州北部マラバール地方にある、同州第三の都市。現地語名Kozhikodeは旅行サイトなどでコジコーデと綴られることがありますが、正しくはコーリコードです。マラバール地方はムスリム住民の多い地域なのですが、カリカット県でも全人口の約40%とかなりの高比率で、イスラーム文化が根付いています。

本作は、カリカットのビーチに店を構える大衆食堂を舞台にして、老人と若者、グルーバルとローカルなどの対立軸を巡りながら「良い料理人とは何なのか」を問うグルメ映画の側面を持ちます。

そしてキーアイテムとなるのが、ご当地名物のマラバール・ビリヤニ(ビリヤニは現在は宗教を問わない食べ物ですが、元々はムスリムのご馳走料理でした)と、レモンティーの一種であるスレイマニ・ティー。砂浜に食堂があるというのはフィクションですが、カリカットの市街地にはビリヤニの名店が幾つもあります。

マラバール・ビリヤニ(筆者撮影)

人情に篤い街という評判もあるカリカットですが、そういえば「インディアンムービーウィーク2020」で上映される『ウイルス』もカリカットが舞台でした。こちらはうって変わって現実の出来事を再現したパニック映画なのですが、そこにもこの街の人情が息づいているのが分かるでしょう。

文:安宅直子

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