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辞めるのは“好きじゃなくなった”とき?イーストウッドが生い立ちから監督哲学まで語る!(3/3)

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ライター:#BANGER!!! 編集部
辞めるのは“好きじゃなくなった”とき?イーストウッドが生い立ちから監督哲学まで語る!(3/3)
『クリント・イーストウッドのマスタークラス in カンヌ映画祭』© TV FESTIVAL 2017/AFFIF
クリント・イーストウッド監督/主演最新作『運び屋』が2019年3月8日(金)に公開! ということで、2019年2月にCS映画専門チャンネル ムービープラスで放送されるイーストウッド御大が登壇した第70回カンヌ映画祭のマスタークラス(特別講義)を3回に分けて振り返っておきましょう。ラストは、映画作りや今後の人生についてです。

深く考えすぎるな、幸運に感謝するだけでいい。

『クリント・イーストウッドのマスタークラス in カンヌ映画祭』© TV FESTIVAL 2017/AFFIF

トゥーラン:最後に一般的な質問を。映画の中身はガチガチに固めず、力を抜いて取り組んでいるように見えます。柔軟に脚本と向き合っている、違いますか? こだわりの強い監督というより、柔軟性がある。

イーストウッド:そうありたいね(笑)。客観的には言うのは難しいが、役者であることは監督する上で有利だと思う。演じる側の気持ちがわかるからだ。いかに緊張するか、どうすれば落ち着くかもわかる。知識と経験が監督業に役立っているよ。

トゥーラン:撮影現場も落ち着いている?

イーストウッド:そうだね、助監督が「静かに!」と叫びながら走り回ることはない(笑)。多くの撮影現場で見られる光景なんだが、ホワイトハウスに行ったときにひらめいた。シークレット・サービスがイヤホンを通して話していたんだ。互いに指示を出しても周囲には聞こえない。映画撮影の現場でもこれができないかと思ったんだよ。指示を与える相手にだけ伝えれば、ほかのスタッフの妨げにならない。以来ずっと、この方法で現場はうまくいっている。

トゥーラン:現場で怒ることは?

イーストウッド:……たまにあるよ(笑)。だが抑えるようにしている。怒れば自分が自分に負けるからね。

トゥーラン:なるほど。なるべく同じスタッフで仕事をするのが好きだそうですね。経験上その方がうまくいくのでしょうか?

イーストウッド:過去にいい仕事をした人間を選ぶのは自然なことさ。その方が自信をもって制作に取り組むことができるし、撮影中にいい映像が撮れている実感があれば全員の士気も上がる。

トゥーラン:直観を信じることも大切にしていますよね。心が反応すれば、それに従う?

イーストウッド:私くらいの年齢だと脳の方が衰えてくるからね(笑)、直観の方が頼りになることがあるんだ。直観に従ってうまくいくなら、そうするべきだろう。何事も考えすぎてしまうと、がんじがらめになることがある。なんとなくでもイメージを持つことが大切だよ。なんでもかんでも分析するよりもね。

トゥーラン:映画は感情を生むものですしね。

イーストウッド:知識ではなく感情の表現だ。もちろん細部で言えば知識や熟慮が必要な面もあるが、原作を初めて読んだときの感情、脚本ができたときの感情、そうした根本的な感情を、役者に表現してもらいたい。役者が初めて演じたときの感情も大切にしたいと思っている。

トゥーラン:自分の信念を貫くためには戦う覚悟ですか? 反対されても簡単にはあきらめない? そうではない人もいますが。

イーストウッド:人にはそれぞれのスタイルがあり、正しいのはひとつじゃない。自分のやり方でいい。私とは違うスタイルで順調なキャリアを築く監督もいる。ウィリアム・ワイラーなんかは長時間かけて撮影をしていた。私からすると長すぎる、絶対に無理だ(笑)。

トゥーラン:役者に戻りたいと思うことは?

イーストウッド:ごくたまに、普段はないね。役者は十分やったと思う。いつかまたやるかもしれないが。

トゥーラン:監督業を積み重ねていくと何が楽になり、何が大変ですか?

イーストウッド:難しいな……大変かどうかはともかく、興味を持ち続けることが大切だ。興味の持てない題材に取り組むのは大変だよ。興味が持てれば苦じゃないし、楽しめる。大切なのは自分が興味を持つことと、やるのが自分じゃなくても楽しむこと。私自身、演じている役者をうらやましいと思う気持ちはないよ。最後に監督兼主演を務めた作品は『グラン・トリノ』だった。物語としても楽しめる人種差別を題材にした映画だ。育ちも価値観も違う異なる人種の交流が描かれた。あれはメッセージ性のある脚本だったね。私の役はロクデナシだったが(笑)

トゥーラン:監督業の魅力はなんですか? 今も飽きずに情熱を持ち続ける理由は?

イーストウッド:監督業はいいものだ、楽しいよ。ゴルフは好きだが毎日はやりたくない。たまにプレーするのはいいが、毎朝老人同士で集まるのはごめんだ(笑)

トゥーラン:役者をしているお子さんへアドバイスすることはありますか?

イーストウッド:子どもには「周囲に気を配って精一杯やりなさい」と言っている。撮影が長引いても文句を言うな、やればやるほどうまくなる、と。なんでもそうだが、繰り返すうちにうまくなる。楽しめないならやめるべきだ。

トゥーラン:アドバイスは聞いてくれますか?

イーストウッド:いいや(笑)。まあ多少はね。

トゥーラン:やりたかったができなかった作品はありますか?

イーストウッド:思いあたらないね。やりたい作品ができなくても運命と受け止め気持ちを切り替える、後悔はしない。あきらめなければいずれ別の作品と出会える。カンヌだって10回行けるかも、受賞は無理でも(笑)

トゥーラン:他の監督の作品で最近気に入ったものはありますか?

イーストウッド:最近、映画を観ていないので難しいね。『アメリカン・スナイパー』(2014年)と『ハドソン川の奇跡』(2016年)で忙しくて、他の映画をゆっくり観る時間がなかったんだ。たまに昔の作品をレンタルするよ、『サンセット大通り』(1950年)とか。ビリー・ワイルダーが好きでね。『深夜の告白』(1944年)など様々なタイプの作品を手掛けたんだ、笑えるものから悲劇まで。彼の作品以外にも、見返したくなる昔の映画がたくさんある。

トゥーラン:貧しかった両親のもとで育ち、ここまで来ることができました。自分が辿ってきた軌跡を振り返ることはありますか? どんな風に?

イーストウッド:「深く考えるな」と(笑)。幸運に感謝するだけでいいんだ。ゴルフでも、うまくなるより幸運がほしい(笑)。幸い、私の人生には幸運な転機が何度かあった。大切なのは一生懸命やること、失敗しても恐れずに前進し続けることだ。私は幸いにもうまくいって、今も好きな仕事をしている。好きじゃなくなったら辞めるよ。今の人生に満足している。

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【BANGER!!!×MoviePlus】第72回カンヌ映画祭特集

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『クリント・イーストウッドのマスタークラス in カンヌ映画祭』

第70回カンヌ映画祭のマスタークラス(特別講義)に、巨匠イーストウッド登場!多くのファンたちを前に、自身の作品や映画人生について語る。

制作年: 2017
出演: