日本における自然災害と感染症対策
言うまでもなく日本は地震、台風、豪雨などの自然災害が頻発する国だ。とくに地震にかんしては今後、南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念され、日常的な備えが不可欠であると注意喚起されている。もちろん政府の防災対策は逐次進められているものの、課題は多い。
しかし、個々の生活の中に災害対策を溶け込ませることは意外と難しいものだ。住宅・建物やインフラへの甚大な被害、多くを失った被災者を目の当たりにしてもなお、“自分ごと”として備えるハードルはなかなか下がらない。災害多発地域でなければ、なおさらだろう。
© 2025「フロントライン」製作委員会
加えて気になるのが、世界中の人々が経験した“未知の感染症”への対策と、今後の取り組み。新型コロナウイルスによって日本の感染症対策は大きく変化したが、厳しい自粛から月日を経ても、あの緊張感は多くの国民の記憶に刷り込まれている。その発端となったのが2020年初頭、横浜港に停泊していた巨大クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号内での集団感染だ。
私たちは当時、テレビや新聞、ネットの報道をただ見守るしかなかった。かつて誰も経験したことのない未曾有のパンデミック。その深刻さを正しく把握できていた人は多くなかっただろう。実際に船内で対応にあたった、ある医療チーム以外には――。
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災害・事故現場に出動する医療チーム<DMAT>とは
<DMAT(Disaster Medical Assistance Team)>は医師、看護師、医療事務職で構成され、大規模災害や事故などの現場におおむね48時間以内に駆けつけ対応にあたる、専門的な訓練を受けた医療チーム。1995年に発生した阪神・淡路大震災を教訓にして創設された。
その名の通りDMATは、災害や事故発生時に迅速に医療支援を行うスペシャリストが集結したチームだ。かれらは地震や台風などの自然災害が起こった際に、現地でトリアージ(※治療の緊急度や患者の重症度を判断し対応の優先順位を決めること)や応急処置、搬送などの医療活動をボランティアで行っている。
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日本初のパンデミック被害拡大を押し留めたDMATの貢献
そんなDMATが、専門外であったはずの感染症現場、日本におけるパンデミックのグラウンド・ゼロに緊急出動した。県がクルーズ船を“災害現場”に指定し、正式に対応を要請したのだ。当時まだ日本には、大規模なウイルス対応を専門とする機関は存在しなかった。
医療関係者からは、感染症の専門家ではないDMATへの批判もあったという。しかし、当時DMATを率いていた阿南英明を筆頭に、多くのボランティア医師が「命を救うため」にDMATの経験が活かされると判断し、出動に名乗りをあげた。
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なぜDMATは“未知の災害現場”に迷うことなく直行できたのか? その陰にはどんな葛藤があり、いかに患者たちを救うための“ギリギリの駆け引き”が行われていたのか? そして実際に、どれだけの命が救われたのか?
「日本にはDMATがいてくれる」――災害大国に暮らす私たちが今こそ知っておくべき、振り返っておくべき真実。あのパンデミックの最前線で繰り広げられた人間ドラマを実話ベースで描いたのが、6月13日(金)より全国公開となる映画『フロントライン』だ。
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映画『フロントライン』は、なぜ生まれたのか
まだ記憶に新しい、日本初の新型コロナウイルスの大規模クラスターを扱う『フロントライン』は映画として、文字通り大きな“チャレンジ”であったことは想像に難くない。本作を企画し、脚本も手掛けたのは増本淳プロデューサー。「白い巨塔」(2003~2004年)や「救命病棟24時」(2005年)、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(2008年)など数々の医療ドラマや映画を手がけてきた人物だ。
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福島第一原発事故を描いたNetflixドラマ「THE DAYS」でも知られる増本プロデューサーは、『フロントライン』の脚本を大量の取材メモをベースに執筆。そもそも本企画の始まりは、クルーズ船に乗船した医師との会話だったという。そして増本は、当時現場にいた医師や関係者から聞いた知られざるエピソードを丹念に脚本化。彼を突き動かしたのは、「この知られざる愛と勇気の物語を一人でも多くの人に共有してもらいたい」という想いだった。
◤ 𝗖𝗼𝗺𝗺𝗲𝗻𝘁 ◢#増本淳 / 企画・脚本・プロデュース
「きっかけは、まだ私たちの生活に
新型コロナウイルスが深く入り込んで来る少し前、
2020年3月の初めごろに出会った、
クルーズ船に乗船した医師との会話でした。」映画『#フロントライン』2025年6月公開🎬 pic.twitter.com/dKbTQIv9XX
— 映画『フロントライン』公式 (@frontline2025) December 18, 2024
その想いに応えたのが、監督の関根光才(せきね こうさい)。2000年代から数々の広告作品で評価を得ていた関根は、短編映画でも権威ある国際映画賞受賞のキャリアを持つ映像界の異才だ。多岐にわたる活動の中には、原発問題や反戦、難民問題といった社会的な映像作品も含まれる。まさに本作を監督するのにうってつけの人物と言えるだろう。
撮影メイキング © 2025「フロントライン」製作委員会
『フロントライン』
日本で初めて新型コロナウイルス集団感染に挑んだ者たちを描く《事実に基づく》感動のドラマ
未知のウイルスに最前線で立ち向かったのは、我々と同じ日常や家族を持ちながらも、目の前の「命」を救うことを最優先にした人々だった。船外から全体を指揮するDMAT指揮官・結城(小栗旬)と厚労省の立松(松坂桃李)、船内に乗り込んだ医師の仙道(窪塚洋介)と真田(池松壮亮)、そして羽鳥(森七菜)をはじめとした船内クルーと乗客たち。彼らは、TV局の記者・上野(桜井ユキ)らマスコミの加熱報道が世論を煽る中、明日さえわからない絶望の船内で、誰1人としてあきらめなかった。全員が下船し、かけがえのない日常を取り戻すために――。
出演:小栗旬
松坂桃李 池松壮亮
森七菜 桜井ユキ
美村里江 吹越満 光石研 滝藤賢一
窪塚洋介
企画・脚本・プロデュース:増本淳
監督:関根光才
制作年: | 2025 |
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2025年6月13日(金)よリ全国公開