オトナの“本音丸出し”トークにゾクゾク!「ほぼタクシー内で完結」の会話劇『ドライブ・イン・マンハッタン』
ホンネを引き出すタクシー運転手の会話術
タクシー運転手ペンはキツめのジョークも飛ばすが、乗客ジョンソンはそれらを見ごとに打ち返す。そしてペンもその返しをソフトに拾い上げ、自然に会話を膨らませていく。しかし社会的に成功した女性であるはずのジョンソンは、スマホをいじるたびに辟易した顔を見せる。星の数ほど客を捕まえてきただけあってペンの“人を見る目”は確かで、ジョンソンを取り巻く(彼女が選んだ)状況を言い当ててしまう。
『ドライブ・イン・マンハッタン』© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.
本作が捉える挙動の端々には、ある意味エンタメを捨てた“地味なリアル”がある。ジョンソン演じる乗客がポチポチ返信する、ベタかつガチの“あるある”なチャット内容などは、吐きそうになるほどリアル。運転手ペンもステキなオジサマなんかではなく下ネタも厭わず、“諭し系”よろしくYES/NOゲームのように相手の人となりをほじくり返す。そうこうしているうちに、あくまで表面上だった(言葉遊びのような)やり取りから、じわじわと2人の過去が自身の口から明かされていく。
『ドライブ・イン・マンハッタン』© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.
クローズアップに耐える実力派キャストの顔面演技力
JFK空港からマンハッタンまで、長い渋滞を挟んで約1時間半のドライブ。描かれるのは年の差も社会的地位も、経済格差も超越した人間同士の生のやり取り。狭い車内、運転手と乗客のクローズアップがセリフを補足し、魅力的な俳優たちの好相性が観客の興味を維持し続ける。最初は舞台劇を想定していたというのも納得の構成だが、映画化によって“古き良き”ニューヨークが失われた点は強調されたように感じる。
『ドライブ・イン・マンハッタン』© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.
本作はもともと静かな会話劇を好んでいた映画ファンだけでなく、「これぞアメリカ、ハリウッド!」なノリにイマイチ惹かれなくなった人々にも刺さったのかもしれない。もちろん会話の内容が“小難しくない”ことも重要だっただろう。今すぐ2人の会話(ディベート)に参加したくなるような、誰にでも経験のある等身大の言葉だからこそ共感を呼ぶ。それでも映画の最後の十数分間は、運転手ペンと同じく“お手上げ”の衝撃度なので、お見逃しなく。
『ドライブ・イン・マンハッタン』© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.
『ドライブ・イン・マンハッタン』はヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
ショーン・ペン主演『ミスティック・リバー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2025年3月放送
『ドライブ・イン・マンハッタン』
夜のニューヨーク。ジョン・F・ケネディ空港から一人の女性がタクシーに乗り込んだ。シニカルなジョークで車内を和ます運転手と女性はなぜだか波長が合い、会話が弾む。聞けば運転手は二度の結婚を経験し、幸せも失敗も経てきた。一方プログラマーとしてキャリアを築いてきた女性だが、恋人が既婚者であることを運転手に容易に見抜かれてしまう。もう二度と会うことのない関係だからこそ、お互いの本音を打ち明けていく二人。他愛のないはずだった会話はやがて予想もしなかった内容へ発展し、女性は誰にも打ち明けられなかった秘密を告白し始める。
監督・脚本:クリスティ・ホール
撮影:フェドン・パパマイケル
出演:ダコタ・ジョンソン ショーン・ペン
| 制作年: | 2024 |
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ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中