韓国にも“トー横”がある!ガチ心霊スポットとの関係は?陰惨スリラー『ヌルボムガーデン』監督インタビュー
「キム・ジュリョンは純粋さと怖さの二面性に個性がある」
―家に入り込んだ人を霊が操る設定はオカルト映画の定番です。しかし、ひとつのキャラクターの視点ではなく、客観的に物語を紡ぐことで恐怖感を高めている点に、本作のユニークさを感じました。
それは主人公のソヒに取り憑いている霊について説明したほうがいいですね。韓国では家に取り憑く“地盤霊(チバンレイ)”という考え方があります。地盤霊は家に住んでいる人に取り憑くことで、家の外に出て、あちこちで霊障を起こすことができるんです。だからソヒの周りでは怪異が起きる。客観的に見せようとしたのは、そんなソヒの置かれている状況や、彼女のまわりで起こっている怪異から恐怖を感じて欲しかったんですよ。
『ヌルボムガーデン』©︎2024 BYUS ENT & JNC MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED
―ソヒを演じたチョ・ユニさんは、あまりホラー映画のイメージがなかったのですが、抜擢した理由は?
清楚なイメージがある俳優ですよね。映画のスピード感を出すためにエピソードを削除してしまったんですが、ソヒは難しい家庭環境で育った小説家なんです。複雑な心境を演じるにはチョ・ユニが最適と思いました。彼女はとても優秀で、これも都合で削除してしまったんですが、姉のヘランとの乱闘場面でも熱のこもった演技を見せてくれましたよ。
『ヌルボムガーデン』©︎2024 BYUS ENT & JNC MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED
―キム・ジュリョンさんが演じた姉のヘランは、元気で前向きな存在でしたね。日本ですとキム・ジュリョンさんといえば『イカゲーム』の怖い姐さん212番ですが、『ヌルボムガーデン』では優しいお姉さんでした。
キム・ジュリョンは純粋さと怖さの二面性に個性があると思います。これは私が欲を出したんですが、彼女にヘランを演じてもらえたら、その二面性を存分に楽しめる映画になると思ったんです。ヘランは映画の後半で“ある変化”をしますから。実際、現場で十分にその才能を発揮してくれました。ちょっとしたディレクションにも素早く適応してくれますし、チョ・ユニともすぐに打ち解けて、本当の姉妹のようになっていましたよ。
―キム・ジュリョンさんは表情が豊かですね。
そう思います。韓国では、変幻自在な演技ができる俳優のことを八色鳥(ヤイロチョウ)に例えるんですが、ジュリョンは八色じゃ足りない。”一万鳥”といったところですね。
『ヌルボムガーデン』©︎2024 BYUS ENT & JNC MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED
「夢がない答えで申し訳ないんですが……(笑)」
―本作は監督のデビュー作(※プロデューサーとして『チェイサー』[2009年]などに参加)でもありますが、1作目にホラー映画を選んだ理由は?
正直に言ってしまうと、ファンタジー映画を撮りたかったんです。だけど、ファンタジー映画は予算が膨大になるから、戦略的にホラー映画を選びました。夢がない答えで申し訳ないんですが(笑)。でもホラー映画は好きですよ。『シャイニング』やM・ナイト・シャマラン監督の映画は何回も観ています。『ヘレディタリー/継承』も好きですね。
『ヌルボムガーデン』©︎2024 BYUS ENT & JNC MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED
―ミステリーはいかがですか?『ヌルボムガーデン』のプロットは、かなりミステリー味があるのですが……。
ミステリーは大好きなんです! 撮るならガチガチのミステリー映画にしたいと思っていて、実はシナリオも書き上がっているんですよ。だけど、今はミステリーが流行っていないから……様子をうかがっているところです!
『ヌルボムガーデン』©︎2024 BYUS ENT & JNC MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED
取材・文:氏家譲寿(ナマニク)
『ヌルボムガーデン』は2025年1月24日(金)より全国順次公開
『ヌルボムガーデン』
幸せな新婚生活を送っていたソヒの夫チャンスが、ある日突然、自らの命を絶った。ショックのあまり流産し、悲しみのどん底に突き落とされたソヒは、生前のチャンスが購入していた郊外の邸宅を相続することに。ソヒは姉ヘランの反対を押しきって、ヌルボムガーデンと名付けられたその家に移り住むが、引っ越し後まもなく奇怪な出来事が続発。ある夜、家の中ですでにこの世にいないはずのチャンスの姿を目撃したソヒは、心優しかった彼が自殺に追いやられた理由を探り始める。やがて地元の女子高校生ヒョンジュが事情を知っていると確信したソヒは、数ヵ月前に失踪した彼女の行方を追うが、ヌルボムガーデンに取り憑いた邪悪な“何か”に脅かされていくのだった……。
監督・脚本:ク・テジン
出演:チョ・ユニ キム・ジュリョン ホ・ドンウォン
制作年: | 2024 |
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2025年1月24日(金)より全国順次公開