ファンタジー巨編『鹿の王』ジブリ出身の異才がベストセラー原作で監督デビュー! 堤真一&竹内涼真はアニメ声優初挑戦

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ライター:増田弘道
ファンタジー巨編『鹿の王』ジブリ出身の異才がベストセラー原作で監督デビュー! 堤真一&竹内涼真はアニメ声優初挑戦
『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

待ちに待った『鹿の王』ついに公開

当初2020年9月予定だった『鹿の王 ユナと約束の旅』の公開がついに実現した。実に1年半も待ったことになるが、なるほど観てみるとコロナ禍の世相にピタリと重なる部分もあるので、タイミングが難しかったことがうかがえる。

本作の原作はシリーズ累計250万部を突破するベストセラー長編「鹿の王」(角川文庫)。言わずと知れた上橋菜穂子作品である。劇場に駆けつけたいと思い続けていた人間としては、やや待ちくたびれた感もあったが、ようやく作品の全貌を知り得て安堵した。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

勇士ヴァンと道義心の医者ホッサル

強大な力を誇るツオル王国に侵略される寸前だったアカファ王国は、突如発生した強力な疫病「黒狼熱(ミッツァル)」が抑止力となり、臣下の礼を取ることでかろうじて存続を許されている状況にあった(なぜかアカファ王国の住民にはミッツァルが感染しない)。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

主人公のヴァンはかつてアカファ王国最強を誇った戦士団「独角(どっかく)」の頭目として、巨大な帝国ツオルを相手に戦ったが敗れ、 今は牢獄となっている岩塩鉱に奴隷として捕らわれている。ある日、ミッツァルのウイルスを持つ山犬が岩塩鉱を突然襲撃。噛まれた囚人が次々と倒れる中、ヴァンだけが生き延び、不思議な出会いを果たした少女ユナと当てのない旅に出る。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

そして、その道行きにからんでくるのがもう一人の主人公ホッサルである。ツオル帝国皇帝の次男・与多瑠(ヨタル)に信頼される若き天才医師だが、医者としての道義心に燃える彼は謎のミッツァルの治療法は山犬に噛まれながらも生き長らえているヴァンにあると直感し、その行方を追う。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

病を抱えて生きていく人間と、病を治そうとする人間のドラマがここにはじまるのだが、もうひとつの軸としてヴァン同様、山犬に噛まれながらも生き残った幼女ユンの存在があった。明るく元気なユンはやがてヴァンを父と思うようになるのだが、その未来は不透明のままである。そして、このヴァンとユンの二人は運命に導かれた如くいつしかアカファの聖地である火馬の郷に導かれるのであった。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

上橋菜穂子とProduction I.Gの出会い

ようやく出会えた『鹿の王 ユナと約束の旅』は見所の多い作品である。まず原作。上橋菜穂子については語るまでもなく日本のファンタジー小説家の第一人者であろうが、本作は彼女の集大成ともいうべき作品であり、アニメ化されたものとしては『精霊の守り人』(2007年:NHK-BS2放映26話)、『獣の奏者 エリン』(2009年:NHK教育テレビ放映50話)があり、本作は三作目となる。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

そして、そのアニメ制作はいずれもProduction I.Gが務めているが、こちらも語るまでもない日本のトップアニメスタジオである。1987年に創立されて以来、一貫してハイエンドな作品をつくり続けており、代表作としては映画『マトリックス』シリーズ(1999年ほか)のウォシャウスキー姉妹監督が、こんな映画が撮りたいとプロデューサーに見せた『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995年)、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』(2003年)でのアニメパートなどがあるが、世界に向かって“クールアニメ”のイメージを印象づけたスタジオである。上橋菜穂子自身も『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』以来のProduction I.Gファンとのことで、三度目のタッグマッチとなる本作において過去最高となる作品が誕生した。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

伝説のアニメーター・安藤雅司

そして、今回の『鹿の王 ユナと約束の旅』で大きく注目されているのは監督を務めた安藤雅司の存在であろう。安藤雅司といえば、半ば生ける伝説となっているアニメーターである。なにせ日本映画の興行収入2位の『千と千尋の神隠し』(2001年)、同5位の『君の名は。』(2016年)と7位の『もののけ姫』(1997年)の作画監督を担当しているのだから。これに匹敵するのは、スタジオジブリでの盟友とも言える高坂希太郎しかいない(『耳をすませば』[1995年]、『もののけ姫』[共同作画監督]、『千と千尋の神隠し』[共同作監]、『ハウルの動く城』[共同作監:2004年]、『崖の上のポニョ』(作監補共同:2008年)、『コクリコ坂から』[共同作監:2011年]、『風立ちぬ』[作画監督:2008年]、監督作品として劇場版『若おかみは小学生!』[2018年]がある)。

アニメにおけるアニメーターの役割は非常に重要である。実写で言えば、役者とカメラマンを兼ね備えた仕事を担っているからだ。さらに、作画監督はそれらアニメーターを束ね、最終的なアニメ映像のクオリティを司る。そんな重責を数多く果たした安藤雅司はある意味、日本の大ヒットアニメの秘密を知り尽くした人間であり、その彼が初めて監督するとなれば否が応でも注目せざるを得ない。同時に、安藤雅司のみならず、映画作りにおいて重要な地位を占める共同監督・宮地昌幸や脚本家・岸本卓も共にアニメのキャリアをジブリでスタートさせたという事実を考えると、制作の器はProduction I.Gであるものの、中身は多分にスタジオジブリの色合いが濃い作品と言えるであろう。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

堤真一や竹内涼真が好演! 吉と出た声優初挑戦者の起用

『鹿の王 ユナと約束の旅』のさらなる見所が声優のキャストである。主人公ヴァン役に起用された堤真一は、初声優ながら役どころの奥深さを演じきったと言えるであろう。堤はもともと故・千葉真一が主催するJAC(ジャパン・アクション・クラブ)出身でアクションはお手の物であるせいか、本人が醸し出す体感のイメージがヴァンと違和感なく重なっていた。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

同様に、竹内涼真も初アニメ声優とは思えないほど落ち着いて、ストイックな医師ホッサルを好演している。また、少女役を女性の声優が担当することはよくあるが、今回はユナと実年齢が近い木村日翠が声を演じていて好感が持てた。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

最後になるが、作品内でキーワードとなる戦士団「独角」や、アカファの聖地である「火馬の郷」などに対する言及はないので、映画の前後に原作を読むとより理解が深まるだろう。

『鹿の王 ユナと約束の旅』©2021「鹿の王」製作委員会

文:増田弘道

『鹿の王 ユナと約束の旅』は2022年2月4日(金)より公開

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『鹿の王 ユナと約束の旅』

かつてツオル帝国は圧倒的な力でアカファ王国に侵攻したが、突如発生した謎の病・黒狼熱(ミッツァル)によって帝国軍は撤退を余儀なくされた。
以降、二国は緩やかな併合関係を保っていたが、アカファ王国はウィルスを身体に宿す山犬を使ってミッツァルを再び大量発生させることで反乱を企てていた。
ミッツァルが国中で猛威を振るう中、山犬の襲撃を生き延びたヴァンは身寄りのない少女ユナと旅に出るが、その身に病への抗体を持つ者として、治療薬開発を阻止したいアカファ王国が放った暗殺者サエから命を狙われることになる。
一方、治療薬を作るためヴァンの血を求める医師のホッサルも懸命にヴァンを探していた―― 。
様々な思惑と陰謀が交錯した時、運命が動き始める。

制作年: 2020
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脚本:
声の出演:

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