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デル・トロ監督絶賛! 日本発コマ撮りアニメ『JUNK HEAD』を7年かけて作り上げた堀貴秀が目指した“80年代の肌ざわり”

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ライター:#橋本宗洋
デル・トロ監督絶賛! 日本発コマ撮りアニメ『JUNK HEAD』を7年かけて作り上げた堀貴秀が目指した“80年代の肌ざわり”
『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

ほぼ1人で作り上げた作品が世界の映画祭で絶賛!

2021年3月26日(金)に公開される日本のストップモーションアニメ『JUNK HEAD』は、2つの要素で話題になっている。

1つはギレルモ・デル・トロが賞賛したのをはじめ、世界各国の映画祭で上映され認められたこと。もう1つは、堀貴秀監督がこの映画を(ほぼ)1人で完成させたことだ。

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

ベースとなる短編から数えて製作期間は7年。監督、原案、キャラクターデザインなど1人7役をこなした。スタジオは内装関係の仕事をしてきた監督の作業場だ。

環境破壊が進み、ウィルスが蔓延する地上世界と、人口生命体マリガンが支配する地下世界。主人公はマリガンを調査するため、地下世界を訪れる。そこで遭遇する奇妙な生物たち、そして予想外の冒険が本作のポイントだ。

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

地下世界でロボットと化す主人公、彼を助ける〈3バカ〉、それにモンスターの数々。キャラクターはグロテスクであり可愛くもあり、新鮮なようでいてどこか懐かしさも感じさせる。このキャラクターの魅力、映画全体の世界観について監督に聞いてみた。

『JUNK HEAD』堀貴秀監督

「ドキュメンタリーくらいリアルなものにしたかった」

「自分が一番好きな映画が『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986年 ※2021年5月14日よりリバイバル上映)なんです。昔の映画なんですけど今見ても面白い。『JUNK HEAD』も、その当時のカルト映画が今発掘されたら……といった雰囲気を目指しました」

1980年代のSFやダークファンタジーのような肌ざわりと言えばいいだろうか。そのため「今の時代に流行しているような表現は、あえて使っていないんです」とも。それは作品のリアルさにもつながっている。

「たとえば、現実にはありえないようなアクションはやってないですね。SFものではあるんですけどドラマ、ストーリーが最優先で。画面に映っているものは、すべて現実の“物”があります。キャラクターの演技も実写、もっと言えばドキュメンタリーくらいリアルなものにしたかった。CGを使えばもっと楽に作業できたかもしれないんですけど、結果として存在感、実在感のある映像になったかなと」

『JUNK HEAD』堀貴秀監督

主人公は一般市民。他の仕事をしていたが、好奇心と冒険心から地下世界に赴く。

「この映画を見る人も、ほぼほぼ普通の人だと思うので。スーパーヒーロー映画は憧れで見るけど、それでは親近感がわかないような気がします。僕の映画では、主人公と同じ目線で物語を体験してほしい」

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

「コマ撮りにした結果、3DCGアニメにはない感覚が出せた」

堀監督は1971年生まれ。映画を作り始めるまでは絵画や彫刻、漫画などに取り組んできた。映画作りに関しては独学だそうだ。ただ「絵や立体、漫画のストーリー。映画は総合芸術というだけあって、これまでやってきたことの集大成という感じです」と言う。

「コマ撮りの手法は、これまでやってきた人形作りなどの経験を活かせばなんとかなるかな、これならできるなと。メチャクチャこだわったというわけではないです。CGのスキルがなかったというのもありますし(笑)。ただ、結果として3DCGアニメにはない感覚が出せたと思います」

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

短編をベースに、長編製作に入ってからは朝7時から夜11時までぶっ続けの作業。サポートのスタッフもいたが、堀監督以外に関わったのは数日間だけのアルバイトも入れて、トータルで11~12人ほどでしかないそうだ。

「予算をかけた映画だと、たくさんの人が関わったことでいろんな意見が入りますよね。そのことで面白くなるならいいんですが、当たり障りのない無難な内容になってしまうかもしれない。それを避けて、低予算だけど世界観にこだわって作ることができました」

『JUNK HEAD』堀貴秀監督

「うまくやればハリウッドの大作に拮抗できるんじゃないか」

この『JUNK HEAD』の楽しさはキャラクターや物語に加えて、地下世界の光景そのものにもある。次回作の絵コンテはすでに完成。同じ地下世界の1000年前を描くという。

「そして3作目は『JUNK HEAD』より後の時代の話。ここで全部のキャラクタ―が揃うという構想です」

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

実際に『JUNK HEAD』を完成させてみて、ストップモーションアニメという手法にも手応えを感じているという。

「コスト的に考えても可能性があると思うんですよ。実写のアイデアもあるんですが、これ(ストップモーションアニメ)はこれで突き進んでみたい。うまくやればハリウッドの大作に拮抗できるんじゃないかって」

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

たった1人でも、低予算でも“世界”に打って出ることができるというわけだ。個人のアイデアと手腕で作られた『JUNK HEAD』は、一般公開によって多くのファンを獲得するはず。続編もぜひ見たいし、その前に本作のキャラクターのグッズ化も希望したい。

『JUNK HEAD』©️2021 MAGNET/YAMIKEN

取材・文:橋本宗洋

『JUNK HEAD』は2021年3月26日(金)よりアップリンク渋谷、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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『JUNK HEAD』

環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!

制作年: 2017
監督:
声の出演: