「死」は「負け」ではない!『アクダマドライブ』と『ワイルドバンチ』 生き様と死に様が直結する“自尊心”の物語

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ライター:藤津亮太
「死」は「負け」ではない!『アクダマドライブ』と『ワイルドバンチ』 生き様と死に様が直結する“自尊心”の物語
『アクダマドライブ』第1巻 販売元:マーベラス 価格:Blu-ray 7,800円+税/DVD 6,800円+税 発売中 ©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会 /『ワイルドバンチ』ディレクターズカットDVD特別版 ¥1,572(税込) 発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント 販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント © 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

一寸の虫にも五分の魂!『ワイルドバンチ』
【アッチ(実写)もコッチ(アニメ)も】

1969年公開の『ワイルドバンチ』が舞台としたのは1913年。西部劇は19世紀半ば以降の西部開拓期を題にとることが多いジャンルだから、『ワイルドバンチ』は西部劇ではあっても、開拓時代の末期あるいは開拓時代後を舞台とした作品ということがいえる。一方、西部劇は1960年代から製作本数が減少傾向にあり、西部劇というジャンルもこの時期、一つの節目を迎えようとしていた。『ワイルドバンチ』という作品の持つ哀感は、この2つの「終わり」が重なり合っているところから生まれたものだろう。

『ワイルドバンチ』© 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『ワイルドバンチ』は無法ものたちの生き様がそのまま死に様に繋がる、そんな物語だ。鉄道事務所の襲撃に失敗し、メキシコへと逃げたパイクらからなる強盗団「ワイルドバンチ」。パイクたちはメキシコ政府軍のマパッチ将軍から鉄道強盗の依頼を受ける。依頼通りアメリカ政府の軍用列車から武器を強奪したパイクたちだったが、強奪品を渡す際にトラブルが発生する。仲間のひとり、マパッチを憎むエンジェルが、武器の一部を反政府ゲリラに渡していたことがバレていたのだ。マパッチはエンジェルを拘束し、ひどいリンチに合わせる。仲間を見捨てることのできなかったパイクたちはエンジェルを助けるため、200人以上の兵士が待つ政府軍の砦に、たった4人乗り込むことになる。

『ワイルドバンチ』© 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ここからはじまる4対200の銃撃戦は、映画史に残るほど圧倒的なもので、そこについては改めて説明するまでもないだろう。ここで注目したいのは、この銃撃戦の始まりは「一寸の虫にも五分の魂」にあるというところだ。

『ワイルドバンチ』© 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

パイクたち無法者にとって、命というのはさほど価値があるものではない。もちろん彼らも死にたくないし、警察に捕まりたくもない。だがそれは運・不運、あるいは「抜け目がない」か「間抜けか」で決まることであって、執着する類のものではないのだ。むしろ彼らにとって倫理ともいうべきものは「仲間との絆」であり、それは無法を働く彼らの「自尊心」のあり方と深いところで結びついている。

『ワイルドバンチ』
ディレクターズカットDVD特別版 ¥1,572(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
© 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

だからエンジェルを手ひどいリンチにかけ、それを笑って楽しむマパッチ将軍を許すことはできないのである。彼らは死ぬつもりで200人の兵士たちに挑んでいるわけではない。だが、同時に生きようとも思っていない。泥を塗られた自分たちの自尊心を取り返そうとだけ、純粋に思っているのである。

“名前”と“生き様”が直結した『アクダマドライブ』の世界

『ワイルドバンチ』は無法者ばかりが出てくる作品だが、『アクダマドライブ』もまたアクダマ(悪玉)しか出てこない作品だ。

カンサイがカントウとの戦争に敗れ、属国化したこの世界。犯罪者はアクダマと呼ばれている。そして本作に登場する悪玉たちは、各自の能力や犯した犯罪に基づいた名前を冠されている。例えば「殺人鬼」「チンピラ」「医者」「ハッカー」「運び屋」「喧嘩屋」といった具合に。そして主人公は、彼らの仕事の現場に巻き込まれてしまった「一般人」。彼女は咄嗟に「自分は“詐欺師”だ」と名乗って、彼らの中に入り込んでしまう。

『アクダマドライブ』第1巻 発売中
販売元:マーベラス
価格:Blu-ray 7,800円+税/DVD 6,800円+税
©ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会

そんな彼らに仕事の依頼をしてきたのは、カントウへの供物として新幹線で護送されそうになっていた、不老不死の少年少女「兄」と「妹」。しかし「一般人」はその中で、この2人を自由な世界へと逃してあげたいと思うようになる。

『ワイルドバンチ』は生き様と死に様が直結する物語だったが、『アクダマドライブ』のアクダマたちは、その名前と生き様が直結している。彼らは社会のルールに縛られることなく、その名前の通りにしか生きられない存在であり、その生き様こそが彼らのアンデンティティ、自尊心の拠りどころなのである。

そして幾人かのキャラクターは、その名前の通りの死に様を画面に晒しもする。その時、やはり頭に浮かぶのは「一寸の虫にも五分の魂」という言葉だ。カンサイ警察処刑課にバカにされながらも、自分の生きざまを貫いた上での死。それは彼らにとって“負け”ではないのだ。だから本作を見ると『ワイルドバンチ』が思い出されるのだ。

『ワイルドバンチ』© 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『ワイルドバンチ』と『アクダマドライブ』にはほかにも共通点がある。それは「最後に生き残る人間が2人いる」というところだ。そしてその2人が去ることで、物語は締めくくられる。『ワイルドバンチ』はそれを去りゆく開拓時代の締めくくりとして描き、『アクダマドライブ』は無数に散った命の先に守られた未来として描いた。どちらもともに心に残るラストシーンだ。

文:藤津亮太

『ワイルドバンチ』『アクダマドライブ』はAmazon Prime Videoほか配信中

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