アニメ『約束のネバーランド』と映画『ショート・ターム』~非対称な「見守るもの」と「見守られるもの」の関係性~

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:藤津亮太
アニメ『約束のネバーランド』と映画『ショート・ターム』~非対称な「見守るもの」と「見守られるもの」の関係性~
『約束のネバーランド』©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 / 『ショート・ターム』価格:Blu-ray 4,700円+税/DVD 3,800円+税
発売元:ピクチャーズデプト 販売元:TCエンタテインメント ©2013 Short term Holdings, LLC. ALL Rights Reserved.

「見守るもの」と「見守られるもの」
【アッチ(実写)もコッチ(アニメ)も】

「見守るもの」「見守られるもの」。この二者の非対称な関係から生まれる物語がある。

2021年1月7日よりシーズン2が放送中のTVアニメ『約束のネバーランド』(2019年~)は、グレイス=フィールドハウスという孤児院からすべてが始まる。グレイス=フィールドの子供たちは、教育を受けた上で6歳から12歳までの間に、それぞれ里親のもとへと送り出される決まりになっていた。だが主人公のエマは、それの決まりがウソだということを知ってしまう。

実は、世界は「鬼」と呼ばれる種族によって支配されており、子供たちは「鬼」のための食用としてグレイス=フィールドで育てられていたのである。真実を知ったエマはノーマン、レイとともにグレイス=フィールドからの脱出を計画することになる。

グレイス=フィールドには「ママ」と呼ばれる女性がいる。彼女は子どもたちの成長を優しく見守っていたが、それは彼女が食用児たちの管理を任された飼育係を受け持っていたからだ。第1期終盤は、脱走計画を知るママがエマに「脱走を諦めて楽になれ」「エマを将来のママ候補に推薦してもいい」と揺さぶりをかけてくるなど、「見守るもの」と「見守られるもの」の間の心理戦も見どころのひとつとなってくる。

ところが、この非対称な関係が第1期最終回で大きく揺らぐ。ママの子供時代が回想で描かれ、彼女も“農場”の出身だったことがはっきりと示される。そして彼女は“農場”から逃げ出すことができなかった。

エマたちの脱走を知ったママはつぶやく。「私の負けよ」「いってらっしゃい。気をつけてね」「願わくば。その先に光がありますように」。

それまできっちりとアップにしていたママは、このシーンで髪を下ろしている。それはまるで「見守るもの」と「見守られるもの」の関係が崩れ、ママとエマたちが同じ地平に降り立ったことを象徴するかのようだった。

非対称な関係から自らの傷を見つめ、やがて共感へと至る

「見守るもの」と「見守られるもの」という非対称な関係性が、あるきっかけで変化し、互いが同じ場所に立つこと。『ショート・ターム』(2013年)もまた、そんな関係性を描いた映画だ。

『ショート・ターム』
価格:Blu-ray 4,700円+税/DVD 3,800円+税
発売元:ピクチャーズデプト
販売元:TCエンタテインメント
©2013 Short term Holdings, LLC. ALL Rights Reserved.

『ショート・ターム』の舞台となるのは、10代の少年少女を対象とした短期保護施設(ショート・ターム)。そこでケアマネージャーとして働くグレイスが本作の主人公だ。

施設にやってくるのは、家族関係などに起因する問題を抱えた子供たちで、精神的にも不安定で、心をなかなか開こうとはしない。グレイスは、そんな子供たちが落ち着いて暮らせるように働いている。ただし彼女はケースワーカーでありカウンセラーではないので、治療をすることはできない。彼女にできるのはあくまで、時に厳しく、時に優しく、子供たちに寄り添い支えることだけなのだ。

『ショート・ターム』©2013 Short term Holdings, LLC. ALL Rights Reserved.

いつもしっかりしているように見えるグレイスだが、彼女もまた心のなかに大きな傷を背負っていた。それは恋人であるメイソンにも打ち明けられない問題だった。彼女がその傷と向かい合っていくきっかけとなるのは、施設にやってきた少女ジェイデンの存在。グレイスはジェイデンを支えようとし、その行為を通じて、自らの傷と向かい合えるようになっていくのだ。

こうしてグレイスとジェイデンの「見守るもの」と「見守られるもの」という非対称な関係は消え、そこには、互いの共感に支えられた新たな関係が静かに立ち現れるのだ。それは2人の心境にも大きな変化をもたらすことになる。

『ショート・ターム』©2013 Short term Holdings, LLC. ALL Rights Reserved.

映画の冒頭では、パニックを起こした子供が施設の建物から飛び出してきて、グレイスたちがそれを追いかけるという様子が描かれる。このシチュエーションは、映画のラストでもう一度くり返される。シチュエーションは同じだが、冒頭が「見守るもの」と「見守られるもの」の非対称な関係性を念頭に演出されているのに対し、ラストの時は、そういった関係性などとは無縁な「かけがえのない一瞬」としてある種の幸福感をもって描かれている。この印象の違いに、『ショート・ターム』という映画の本質がギュッと圧縮されているのだ。

そして「追うもの」と「追われるもの」へ

さて『約束のネバーランド』の第2期第4話で、ママが再登場した。そこでママは鬼から「エマたちを連れ戻したら、お前の心臓に取り付けられた装置などをはずして解放してやる」と持ちかけられる。そしてエマたちの奪還に自信を見せるママ。一時は同じ地平に立ったかに見えたママとエマだが、どうやらこれからは新たに「追うもの」と「追われるもの」という非対称な関係性で結ばれていくようだ。

果たして今度の非対称な関係性は、崩れるのか崩れないのか。『ショート・ターム』のように、非対称的な関係性など無縁な「かけがえのない一瞬」に至るのか。その答えは、まだまだ見えてこない。

『ショート・ターム』©2013 Short term Holdings, LLC. ALL Rights Reserved.

文:藤津亮太

『約束のネバーランド』は毎週木曜25:25からフジテレビ「ノイタミナ」ほかにて放送中
『ショート・ターム』はAmazon Prime Videoほか配信中

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • BANGER!!!
  • アニメ
  • アニメ『約束のネバーランド』と映画『ショート・ターム』~非対称な「見守るもの」と「見守られるもの」の関係性~