「スカッとさせてくれる」アクション映画がTV放送
物価は上がり続けるのに給料は上がらず、SNSを開けば腐敗した政治に怒りの声が飛び交う……とにかく不可解なことばかりで閉塞感さえ漂うこの時代、「理不尽に耐える日常」は今や多くの人に共通する感覚ではないだろうか。そんな鬱々とした気分を少しでもスカッとさせてくれるのが「ブチギレ映画」だ。
『Mr.ノーバディ』©︎2021 Universal Pictures
このジャンルの主人公たちの共通点は、「組織や法の束縛を超える」ところにある。正攻法では太刀打ちできない、でも大切なものを守りたい、ならば自分でケリをつけてやる――その覚悟と実力を持った主人公が、理不尽を働いた相手を徹底的に叩きのめす。その姿は、現実では叶わない「完全なる制裁」への渇望を満たしてくれるだろう。
ということで今月、CS映画専門チャンネル ムービープラスで楽しめる“復讐・制裁・処刑”を描いた傑作アクションをご紹介。お行儀の良さはいったん棚に上げて、正義感や爆発する怒り、そして常人離れしたスキルでもって“決着”をつける姿に、溜飲を下げてほしい。
『Mr.ノーバディ』(2021年)
職場でも家庭でもナメられている冴えない中年男ハッチ。その正体は、政府機関で「会計士(片付け屋)」と恐れられた伝説の暗殺者だった。バス車内で絡んできたチンピラを叩きのめしたことでロシアンマフィアを敵に回すが、それはむしろ彼が待ち望んだ「解放」の合図だった。
『ジョン・ウィック』の製作陣が贈る本作の醍醐味は、平凡な親父が瞬時に殺人マシーンへ変貌するギャップにある。手近な日用品を武器に変え、切れ味鋭い動きで敵を殲滅していく様は圧巻。溜め込んだ怒りの爆発を目撃する快感は、ジャンル随一と言っていい。
『犯罪都市』シリーズ(2017年~)
「マブリー」ことマ・ドンソクが演じる怪物刑事マ・ソクト。そのモットーはシンプルだ――「悪い奴は殴る」。凶悪犯だろうと国際犯罪組織だろうと、彼の超重量級ビンタ一発でこと足りる。この圧倒的な腕力による制裁は、もはや様式美の域に達している。
シリーズを重ねるごとに敵は凶悪化するが、正比例して増大していくマ刑事のパンチ力。シリアスな暴力描写の合間に顔を出すマ・ドンソク特有のお茶目なユーモアも魅力だ。警察という巨大組織の“縛り”をのらりくらりと交わしつつ、理屈抜きで悪党が粉砕される爽快感は第1作から最新作までまで一貫して健在である。
『ペイバック』(1999年)
仲間に裏切られ、金と妻を奪われ、死の淵をさまよったポーター(メル・ギブソン)。地獄から這い上がった彼の要求はただ一つ、奪われた自分の取り分「7万ドル」をきっちり回収すること。相手が巨大犯罪組織「シンジケート」であろうと、一歩も退く気はない。
本作の核心はポーターの執念と非情さにある。飄々とした佇まいのまま冷酷に敵を追い詰め、自分の権利を力ずくで奪い返す姿は、骨太な90年代アクションとハードボイルドな世界観に絶妙にはまっている。「不屈の男」がじわじわと反撃する緊張感は、最後まで目が離せない。
『リベンジ・リスト』(2016年)
目の前で妻を殺され、しかも腐敗した警察に事件を揉み消されたスタンリー(ジョン・トラボルタ)。絶望と怒りに震える彼は、封印していた元特殊部隊工作員としての本能を解き放ち、旧友とともに「殺害リスト」を一人ずつ消していく私刑に踏み出す。
原題『I Am Wrath(我は憤怒なり)』が示す通り、その復讐に容赦はない。トラボルタの重厚な演技が、愛する者を失った悲哀と暴発する怒りをリアルに体現。テンポよく悪を断罪していく展開は小気味よく、喪失感の大きさゆえに“成敗してやった”感も格別だ。
『イコライザー』三部作(2014年~2023年)
昼は穏やかな市民、夜は「平定者(イコライザー)」として悪を裁く元CIA工作員ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)。腕時計のタイマーをセットし、周囲の日用品を武器に変えて数秒で現場を制圧するその「仕事ぶり」は、完璧という言葉しか当てはまらない。
シリーズを通じて描かれるのは、法の網を巧みにくぐり抜ける強者から弱者を守るという揺るぎない正義だ。完結編『THE FINAL』ではイタリアの小さな町を舞台にマフィアを孤立・壊滅させていく。静かな怒りが爆発する瞬間の緊張感と、圧倒的な実力差で見せつける制裁シーンは必見。