俺的アカデミー賞2018

BANGER!!!ライター陣が、2018年に観た映画から「俺的アカデミー賞」として、作品賞、主演男優賞、女優賞の主要3部門を勝手に贈呈!
各賞を選定したワケも独自の目線で語ってくれた。

BANGER!!!ライター陣の「俺的アカデミー賞2018」

作品賞 主演男優賞 主演女優賞
齋藤敦子 『象は静かに座っている』 ジョン・デヴィッド・ワシントン(『ブラック・クランズマン』) 安藤サクラ(『万引き家族』)
森本康治 『スリー・ビルボード』 ダグ・ジョーンズ(『シェイプ・オブ・ウォーター』) ダイアン・クルーガー(『女は二度決断する』)
杉山すぴ豊 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 トム・ハーディ(『ヴェノム』) トニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』)
奥村裕則(スキップ) 『シェイプ・オブ・ウォーター』 ジェイソン・ステイサム(『MEG ザ・モンスター』) トニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』)
橋本宗洋 『犬ヶ島』 ドウェイン・ジョンソン(『ランペイジ 巨獣大乱闘ほか』) ダコタ・ファニング(『500ページの夢の束』)
市川力夫 『ブリグズビー・ベア』 ベニチオ・デルトロ(『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』) 池田エライザ(『チェリーボーイズ』)

齋藤敦子

作品賞
『象は静かに座っている』
主演男優賞
ジョン・デヴィッド・ワシントン(『ブラック・クランズマン』)
主演女優賞
安藤サクラ(『万引き家族』)

『象は静かに座っている』は、昨年2月のベルリン映画祭で見て以来、時代の閉塞感を考えると常に頭に浮かぶ作品。昨年はこれ以上に衝撃を受けた映画はなかった。フー・ボー監督の死が惜しまれてならない。
主演男優賞は2018年のカンヌ映画祭で観た『ブラック・クランズマン』ジョン・デヴィッド・ワシントン。『ドゥ・ザ・ライト・シング』の無冠以来、スパイク・リーとカンヌとの付き合いを遠目で見守ってきた身として、去年、スパイクが『ブラック・クランズマン』を再びコンペに出してきたことを喜ぶと共に、張っていた肩肘から力を抜いて、言いたいことをユーモアに包んで言う、熟成ぶりに感心した。その雰囲気の核になっていたのがジョン・デヴィッド・ワシントンのへたうま演技で、こんなに努力と演技力を感じさせない黒人俳優は稀有である。
『万引き家族』がパルム・ドールを受賞したのは安藤サクラのおかげ。特に刑務所の面会室での演技があったからと思っている。本物のアカデミー賞の方はおそらく『ROMA/ローマ』になると思う。それだけNetflixに勢いがあることを感じる。けれども、ネット配信は映画興行界をじわじわと浸食していくだろう。

森本康治

作品賞
『スリー・ビルボード』
主演男優賞
ダグ・ジョーンズ(『シェイプ・オブ・ウォーター』)
主演女優賞
ダイアン・クルーガー(『女は二度決断する』)

『スリー・ビルボード』はサントラ盤の音楽解説を書くためにまず試写を拝見させて頂いたのですが、初見時に巧妙かつ多面的な物語構成と、俳優陣の強烈な演技に衝撃を受けました。そして劇中音楽を聴きこんでいくうちに、全ての曲に何らかの示唆やメッセージが隠されていることに気づき、二度目の鑑賞時に「これはスゴい映画なのでは?」と自分の中で忘れられない作品となったので、俺的アカデミー賞の作品賞に選ばせて頂きました。
主演男優賞については、近年の映画賞で「特殊メイクと肉体改造で実在の人物になりきる演技」を高く評価する傾向にあるので、それならば「特殊メイクを駆使して、人間の女性と心を通わせる”不思議な生きもの”に命を吹き込む」という難役に挑んだ『シェイプ・オブ・ウォーター』のダグ・ジョーンズも、その演技が評価されてほしいと思って選ばせて頂いた次第です。
主演女優賞は、夫と息子を失った深い悲しみ、爆弾テロ犯への怒りと憎しみ、司法への絶望をリアルに演じた『女は二度決断する』のダイアン・クルーガーを推したいと思います。彼女の演技は真に迫っており、主人公カティヤの”決断”に思わず涙しそうになりました。ちなみに筆者は『すべて彼女のために』と『アンノウン』のクルーガーの演技も好きです。

杉山すぴ豊

作品賞
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
主演男優賞
トム・ハーディ(『ヴェノム』
主演女優賞
トニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』)

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でスティーブ・ロジャースが姿を現すシーンのかっこ良さは鳥肌もので、ヒーロー映画史に残る名場面。これだけでも本作は僕にとって今年のベスト1です。
『ヴェノム』は本当に楽しいヒーロー&モンスター映画ですが、エディとシンビオートの2役を演じたトム・ハーディの好演がキャラクターに命を与えたと思います。この映画およびトムの演技を酷評した、某アメリカの批評サイトはヴェノムに食べられちゃえばいいのに(笑)。
これにかぶせて言うと『ボヘミアン・ラプソディ』や『カメラを止めるな!』『バーフリ』等の、ファンが見つけた映画が盛り上がっていくというのは素晴らしいことだと思います。
主演女優賞は『ヘレディタリー/継承』のトニ・コレットの顔面演技。トラウマになるほど怖い。なお助演女優賞があれば『ブラックパンサー』のシュリちゃん、『アントマン&ワスプ』のゴースト、『シュガーラッシュ:オンライン』のシャンクねーさん、助演男優賞は嬉しくなるような怪獣映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』のワニ怪獣ことリジー。僕ら世代はワニゴンと呼んでいます(笑)。あ、でも雌だったらどうしよう。

奥村裕則(スキップ)

作品賞
『シェイプ・オブ・ウォーター』
主演男優賞
ジェイソン・ステイサム(『MEG ザ・モンスター』)
主演女優賞
トニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』

私的作品賞は『ヘル・ボーイ』、『ブレイド2』の俺たちのギレルモ・デル・トロが描くラブストーリー『シェイプ・オブ・ウォーター』。実際に作品賞、監督賞はじめ4部門でアカデミー賞を受賞しているが、2018年日本公開ということでチョイス。
前出の作品からもあふれ出ていたクリーチャーに対する監督の愛が本作で集大成をみる。アレクサンドル・デスプラの美しい音楽、淡いグリーンを色調にした映像の中にマイノリティな人々に対する偏見というテーマを折り込みながらスリリングな展開でエンターテインメントに昇華した流石の手腕。印象的に描かれる水こそが人々が手にすべき“愛の形”。“俺たち”の、から“世界の”監督になってしまった一抹の寂しさは感じつつも両手を振って送り出したい。いつか監督の作品を宣伝するのが夢です。
主演男優賞はジェイソン・ステイサム兄貴に。肉体派のステイサムが人類の脅威となる超巨大ザメ・メガロドンと戦う。元飛び込み選手ということもあり、水を得たステイサムは最高のアクションを繰り広げる。自らベイト(餌)となって人間一本釣りを具現化したのは映画史上初の事件だろう。ラストは連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽をつけたら最高な海中あまさん大バトル。まさか本当に身ひとつであんなことをするなんて。『アクアマン』がもう一人存在するとしたら、それはジェイソン・ステイサムだろう。こんな死人が出そうな企画を通した製作陣にも拍手。
主演女優賞は『ヘレディタリー/継承』のトニ・コレットさん。そんな顔できるか?そんな口開くか?という顔芸レベルで恐怖を表現した。コメディとホラーは表裏一体。ギリギリのラインを攻めていた勇姿は忘れられない。本作についてはレビューを書かせていただいたが、観客が感じる「不安」がテーマの本作でこの顔はとても重要な役割を担っている。何がいるのか見えていない観客の方向をこの顔で見ていることによりそれを観た私たちに背後にヤバすぎる何かがいる、と想像させる演出だ。彼女の顔がなければここまで恐い映画にはなっていない、かもしれない。

橋本宗洋

作品賞
『犬ヶ島』
主演男優賞
ドウェイン・ジョンソン(『ランペイジ 巨獣大乱闘ほか』)
主演女優賞
ダコタ・ファニング(『500ページの夢の束』)

別の記事でも書いたけれど、『犬ヶ島』は長編アニメーション賞だけでなく作品賞にノミネートされてもいいくらいの完成度。監督ウェス・アンダーソンの“脳内日本”の楽しさといったらない。カッコよさとマヌケさの同居ぶり。
男優賞は我らがロック様に。まあそう言いだしたら毎年この人になっちゃうかもしれないが、昨年は『ランペイジ 巨獣大乱闘』に加えて『スカイスクレイパー』も素晴らしかった。どちらも大げさでド派手で、バカバカしいと言えばバカバカしいんだけれども、それを成立させているのがドウェイン・ジョンソンという“血の通った超人”なのだ。いやロック様に不可能はないというのか、猿と意思の疎通ができるという設定が初っ端から出てきても「まあできるでしょうね」と思っちゃうもの。“ドウェイン・ジョンソンじゃないと成立しない企画”がたくさんあるというのは、つまりスターの証明だ。
ポスターのビジュアルや“自閉症の女の子が……”といった紹介で食わず嫌いをしている人がいたら、ぜひ『500ページの夢の束』を見てほしい。なにしろダコタ・ファニング演じる主人公はトレッキー(スタートレックマニア)。「頑張って何かを成し遂げる話」なので作品のエモーションとしては『ロッキー』に通じる部分もある。いやホントに。“オタクであることが役に立つ(こともある)”という場面もありつつ、自閉症の主人公を無理に天才として描かなかったり、ビターな味も大人向け。

市川力夫

作品賞
『ブリグズビー・ベア』
主演男優賞
ベニチオ・デルトロ(『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
主演女優賞
池田エライザ(『チェリーボーイズ』)

昨年は『デトロイト』や『ヘレディタリー/継承』『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』など、自分好みの〈緊張感バイオレンス(観客に対して)〉な作品が多かったんですが、そんな中で涙をかっさらってくれた『ブリグズビー・ベア』に大賞! 映画を作る話ではあるけれど、友情や映画愛なんて安いものに落ち着くこともなく、さらには”純粋さ”にある、ある種の恐ろしささえも描いていたのには震えました。
男優賞に関しては迷うことなく『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』のデルトロ一択! これはもう特報でデルトロ撃ちを観た時点で決まっていましたね。腹も出てるしファッションも決してイカしてはない。だけどあんなにかっこいい。どんな人生を送ったら、どんな飯食ってたら、どんな土地に生まれたら、あんなにかっこよくなれるのか。人類はデルトロの遺伝子研究に早く着手したほうがいいです。
で、女優賞は『チェリーボーイズ』の池田エライザさん。古泉智浩先生の『チェリーボーイズ』原作ファンの立場から言わせてもらうと、正直最初にキャスティングを知った時はブチギレでした。だって、恵まれた体格をしていて総合格闘技をやってるヤリマン=釈笛子、という役ですよ。古泉先生の狂気が炸裂したキャラ造形が全部台無しじゃんかよ! と。でも、映画を観るとこれがもうアリにもほどがありました……。池田エライザさんが演じると、原作の釈笛子が持つカッコよさも哀愁も、ちゃんとあるんですよね。参りました。