フィンランドが生んだ異能生存体の爺様が帰ってきた!北欧の大地を舞台に『装甲騎兵ボトムズ』 の精神をビシバシ感じる映画、それが『SISU/復讐の血闘』だ!
前作『SISU/不死身の男』にて、気合と根性のみでナチスを挽き肉にした爺様アアタミ(ヨルマン・トンミラ)が挑む今度の敵は、情け無用の旧ソ連軍!が主なあらすじの本作。『ナチスの次は当然…ソ連だよね♪』という、フィンランドのエンタメ精神が発揮されている。積極平和指数が欧州第一位のフィンランドだが、こちらの作品は前作同様に積極殺戮指数が欧州第一位だ。とはいえ並のソ連兵ではアアタミ爺の相手にはならない。
今回は満を持してナイフみたいに尖った軍人ドラグノフ(スティーブ・ラング)がアアタミ討伐に大抜擢される。『ドント・ブリーズ』シリーズで知られるスティーブ・ラングだが、本作での役名はずばりドラグノフ。タフな見た目にソ連式なキラキラネームが実によく似合いますな。名は体を表すといわんばかりに「弾が勿体ないから」と老若男女問わずスコップでコマ切れにした結果、今までムショに収監されていた極悪鬼軍人であった。
ワルの面接なら一発合格間違いなし。そして、アアタミ爺の相手にとって不足はない。不死身のジジイ vs 最凶のジジイという、バイオレンスお爺ちゃんヨーロッパリーグ2026の様相を呈している。
続編ということで気合が入らざるをえない状況のアアタミ爺だが、今回も今回とて度を越したオーバーキルを披露!血や泥でアアタミが汚れれば汚れるほど戦闘力もレベルアップ!“殺人マインクラフト”といわんばかりに死体の山を築いていく。本作ではボロのトラックで戦闘機を落とす(しかも2機)という『ダイハード4』以来の快挙を達成!
そう!元気があればトップガンじゃなくても戦闘機は落とせるんです!かつてアントニオ猪木が提唱した『元気があれば何でも出来る』の向こう側を魅せてくれる。
他にもヤケクソにもほどがある戦車突撃、魔界村ばりのパンイチバトル、思いついても誰もやらない人体仕込みナイフ、鬼滅の刃ばりの殺戮無限列車、誰しもが目を疑うスーパーロケットダッシュなど前作以上にアグレッシブさに拍車がかかっている。特にドラムマガジンが装填されたppsh41(ペペーシャ)二丁撃ちは世間のドパガキもガンギマリ間違いなしである。そして打ち倒した敵兵の返り血でオールバックをキメるシーンは死ぬまでに一度はマネしたいシーンだ。
映画の中の悪人にはオーバーキル位が丁度よい。ラブ上等ならぬキル上等。前作同様、そんな作り手側の真摯なメッセージが伝わるだろう。
ガタガタと能書きを垂れる奴がのさばる世の中だが、沈黙こそ最大の雄弁を地で行く活躍(主に暴力)は本作でも健在だ。あんまり喋らないもんで敵から「目を合わせず、動かなければ襲ってこない」と野生の動物みたいな扱いを受けるアアタミ爺だが、彼の本作での目的は失った家族と過ごした思い出の象徴=家のリフォーム。資材運びを邪魔する奴らをブチ殺す派手さに目が行きがちだが、それはあくまで二の次。いや、二の次にしては殺りすぎだろ!と思うかもしれんが、時間潰しのパチ屋で確変引いたりするじゃないですか? そういうことですよ。
アアタミの口から一切語られる事は無いが、マイホーム再建こそ唯一残った自らの人間性を守る行為と考えれば、彼のデストロイもどこか納得してしまう。9割9分バイオレンス目白押しな作品ではあるが、だからこそ人の心の光がアアタミ爺に差すラストが実にグッとくる。相棒が犬しかいなかったのを考えると「よかったな、アアタミ爺さん」と思わず鑑賞している画面に声をかけたくなるだろう。殺戮と被虐の果てにキラリと光るヒューマニズムは必見だ。
かつてアニメ『装甲騎兵ボトムズ』にて何があっても死なない者を異能生存体と呼称していたが、本作のアアタミも遺伝確率250億分の1といっても差し支えない。もしヨラン・ペールゼンがいればファイルのリストに真っ先に名前を書かれたであろう。
前作の予告で銀河万丈がナレーションを務めていたが、AT(アーマードトルーパー)に乗っていないものの『装甲騎兵ボトムズ』の魂が確かにある本作。TETSU(織田哲郎)の『炎のさだめ』がよく似合う、むせる作品ですよ。
文/“DIE”suke(ビーパワーハードボイルド/映画ポン引き)