男性か、女性か
本作の題材となっている「性分化疾患」は、2023年の6月に報じられた中国人夫婦のニュースが記憶に新しいだろう。このニュースで取り上げられたのは、6年間子どもができない夫婦を検査したところ、夫が性分化疾患であり、男性生殖器の発育はほぼ正常であるにもかかわらず、染色体検査の結果は女性の核型だった――というケースだ。
性分化疾患とは、ヒトの6つの性のうち、性染色体、性腺、内性器、外性器のいずれかが非定型的な先天的体質を指す。『I ~人に生まれて~』の主人公は、外見や自認も男性だったが、ある症状が出たことをきっかけに病院で検査をし、性分化疾患だと診断される。
ところが、両親は息子に病気のことを隠して女性化の手術を受けさせてしまう。術後、目が覚めた主人公は、アイデンティティは男性にも関わらず、体は女性になっており、その事実を受け入れることができずにふさぎ込んでしまい……というのが本作の物語の始まりだ。
映画で知る「インターセックス」
近年では、疾患名や体の状態を隠さずに本人へ全面開示することが国際基準となっているという。だが、保護者や医療従事者が子どもを傷つけたくないという配慮から説明を躊躇することも事実で、本作における両親の行動や気持ちも一概に悪いと決めつけられない部分もある。
インターセックスであることを公表している著名人も少なくない。当事者間では疾患として捉えるかどうかといった点でも意見が別れる部分はあるというが、本作が「インターセックス/性分化疾患」を学ぶ一つのきっかけになるはずだ。
『I(アイ) ~人に生まれて~』は2023年9月22日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開中
『I(アイ) ~人に生まれて~』
シーナンはゲームが好きな14歳の少年。ある日、彼は激しい腹痛に襲われトイレに駆け込むと、尿が血のように赤く染まっていた。両親と共に病院へ行くと、「性分化疾患」であると告げられる。両親はシーナンに病気のことを伝えぬまま、性転換手術を受けることを決めてしまう。手術後、アイデンティティに葛藤を抱えながらも、女性の「シーラン」として新しい街で生活し始めるシーナンだったが……。
監督・脚本:リリー・ニー
出演:リー・リンウェイ ベラ・チェン イン・ジャオトー
制作年: | 2021 |
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全国順次公開中