「アフロバブルガム」って何? 同性愛が違法の国、ケニア発の青春ラブストーリー『ラフィキ:ふたりの夢』

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ライター:野中モモ
「アフロバブルガム」って何? 同性愛が違法の国、ケニア発の青春ラブストーリー『ラフィキ:ふたりの夢』
『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

いまだ同性愛が違法の国で女性たちの恋を描いた勇気ある作品

『ラフィキ:ふたりの夢』は、カンヌ映画祭に出品された史上初のケニア映画(2018年度:ある視点部門)。世界各地の100以上の映画祭で上映されている話題作だ。高校を卒業する年頃の若い女の子どうしが恋に落ちる、さわやかな青春ラブストーリーである。

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

しかし、当のケニア共和国では、この作品は米アカデミー賞外国語映画賞へのエントリー条件を満たすために、ナイロビのある映画館で1週間の限定上映が行われたのみだという。現在も同性愛が違法とされ禁固刑に処されることもあるこの国では、一般公開は許されなかったのだ。

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

アフリカ新世代のストーリーテラーとして熱い注目を浴びる1980年生まれのワヌリ・カヒウ監督は、インタビューで以下のように語っている。

「アフリカ人の若者たちの恋愛を描いた映画を初めて観たのは、10代後半の頃でした。それまでは、アフリカ人がキスするところを見たことがありませんでした。(略)それまで愛情表現というのは外国人の文化であり、私たちの文化ではなかったのです。アフリカ人がスクリーンで、手を握ったりキスしたりするのは普通なのだという考えは驚きでした」

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

そういうわけで『ラフィキ』は、映画という表現自体のありかたも他の地域とは異なる土地で女性の同性愛を扱った、非常に勇気ある作品なのだ。しかし監督は、「タブーに挑戦」といった重苦しさやスキャンダラスな薄暗さを退け、あくまでもポップにカラフルに、若いふたりの生きる喜びを映し出そうと努めている。

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

ワヌリ監督が描く女性像や美しい映像が現代ケニアのイメージを変える

舞台はケニアの首都ナイロビ。男たちに混ざってサッカーを楽しむボーイッシュなケナは、集合住宅で母親と暮らしている。母と離婚した父は雑貨店を営みながら議員に立候補し、選挙運動の真っ最中だ。ある日ケナは、父の対立候補の娘ジキと出会う。自由奔放なジキと自分のアイデンティティや進路に悩むケナは、互いに惹かれ合っていく。

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

シンプルで甘酸っぱいラブストーリーはちょっと90年代テイストの懐かしい感じだ。しかし、ふたりの恋の背景となる街並みやインテリアなど、ナイロビの人々の暮らしぶりが垣間見られるのが新鮮だし、色あざやかなファッションも目に楽しい。ふたりがデートする林の中に放置されたトレーラーがブーゲンビリアのようなお花に彩られているところなど、かわいくて目を細めてしまう。同性愛を良く思わない人々によるぎょっとするような暴力も描かれるのだが、物語の締めくくりは希望を感じさせる。この作品に収められた快活な女性たちの姿や美しいピンク色の空の広がりは、世界中でケニアのイメージをより柔らかく、優しいものにしていくだろう。

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

より多様なアフリカのイメージを発信するための「アフロバブルガム」というスタイル

ワヌリ・カヒウ監督は、「楽しく、力強く、突飛なアフリカンアート」を指すものとして、「アフロバブルガム」というスタイルを提唱しており、自身の製作会社もそう名付けている。アフリカといえば、すぐに深刻な社会問題がクローズアップされ、それらに取り組む企画にばかり支援が集まる状況を変え、より多様なイメージを発信しようとしているのだ。

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

彼女は「TEDトーク」で、ベクデル・テストを参照しながら、アフロバブルガムについて語っている。ベクデル・テストとは、アリソン・ベクダルによる漫画から生まれた、作品のジェンダーバイアスを測る指標。最低でも2人の女性が登場するか 女性どうしの会話はあるか その会話の中で男性に関すること以外の話題が出てくるか、が問われる。

「ベクデル・テストのようなテストで試すべきです。(略) ①2人以上のアフリカ人は健康か? ②当該のアフリカ人は経済的に安定して支援を必要としていないか? ③そして楽しんで人生を謳歌しているか? この2つ以上の項目に“はい”と答えられたら、確かにアフロバブルガムです」

『ラフィキ:ふたりの夢』©Big World Cinema.

これはジョークではあるが、本気の想いが込められているに違いない。『ラフィキ』は確かにこのテストをパスする。啓発的な活動は必要不可欠なものだけれど、同時に突飛な想像力やばかばかしさを愛し、さまざまな物語を語っていきたいという彼女。これからもその動向に注目していきたいパワフルな才能だ。

文:野中モモ

『ラフィキ:ふたりの夢』は2019年11月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

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『ラフィキ:ふたりの夢』

人を好きになること、幸せになること、それはこの世に生まれてきたすべてのひとに与えられたギフト。その天からの贈りものを奪うことは、誰にもできないはず。音楽、ダンス、ファッション、アート──ポップでカラフルなアフリカンカルチャーにのせて、国境もジェンダーも肌の色も、すべてのボーダーを超えて、人生を豊かにする人と人との出会いと絆を描く感動作。

制作年: 2018
監督:
出演:
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