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検閲が厳格なインド映画の“セクシー表現”に納得!『ラジュー出世する』は初々しいシャー・ルク・カーンのダンス&ソングに注目

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ライター:#松岡環
検閲が厳格なインド映画の“セクシー表現”に納得!『ラジュー出世する』は初々しいシャー・ルク・カーンのダンス&ソングに注目
『ラジュー出世する』
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『ラジュー出世する』の注目ポイント解説

オープニングの舞台となるのは、東インドの高地にある町ダージリン。紅茶の産地として有名なところだ。ラジュー(シャー・ルク・カーン)は地元の大学を卒業し、建築技師として就職するのを夢見て、西インドの大都市ボンベイ(現ムンバイ)へやってくる。ところが、訪ねた知り合いは所在不明で、彼は途方に暮れることに。しかし、巧みな話術で人を集めて金を稼ぐ大道香具師(やし)ジャイ(ナーナー・パーテーカル)の所に下宿させてもらい、下町の人々の人情に触れるうちに、教師の娘レヌ(ジュヒー・チャーウラー)とも親しくなる。

『ラジュー出世する』

なかなか就職が決まらないラジューだったが、レヌが勤務する建設会社の求人を紹介され、面接試験に見事合格、就職を決める。会社では、ラジューは社長の娘サプナー(アムリター・シン)に気に入られてとんとん拍子に出世していくが、その先には大きな落とし穴が待ち構えていた……。

この『ラジュー出世する』には元ネタがあって、インド映画界のキングと呼ばれたラージ・カプール監督・主演作、『詐欺師』(1955年)がベースになっている。大学を出たのに就職できない若者が都会に出てきて、貧しい人々に親切にしてもらうが、やがて悪の一味の手先となり、人々を騙す側に回る、という物語である。

ラージ・カプールは『ブラフマーストラ』(5月12日より公開中)の主演男優ランビール・カプールの祖父だが、『詐欺師』は『放浪者』(1951年)と並ぶ彼の代表作で、中国や当時のソ連など社会主義諸国でも大ヒットした作品である。『ラジュー~』では新たな登場人物ジャイを加え、狂言回しとコメンテーターの役割を担わせているのが効いている。これが第一の注目すべき点だ。

『ラジュー出世する』

まるで『ウェスト・サイド物語』なソング&ダンス

第二の注目すべき点は、ミュージカル映画として正統派であろうとする心意気である。最初にインドで見た時には気がつかなかったのだが、その後インド版ビデオを買って何度か見直すうち、オープニング・タイトルのバックに流れる演奏曲には、主要な挿入歌2曲のメロディがフィーチャーされていることに気がついた。

主題歌と言うべき「ラージュー・バン・ガヤー・ジェントルマン(ラジューが出世した)」と、ラジューがレヌを口説くシーンの「カフティー・ハイ・ディル・キー・ラギー(心の中で君への愛がささやく)」という2曲が聞こえるシーンは、ハリウッド映画『ウェスト・サイド物語』(1961年)のオープニングを想起させる。歌が流れるシーンは全部で8カ所あるが、2カ所はBGMなのでソング&ダンスシーンは6カ所。お茶目だったり気取っていたり、さらにはエロティックだったりと、様々なシーンが見られる。

次ページ:インド映画の「歌踊」と「濡れ場」の関係
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『ラジュー出世する』

ダージリンの大学で建築を学んだラジューは、一旗揚げるために大都会ボンベイへ。大道芸人ジャイの家に居候しながら就職活動をするが、不採用ばかり。そんなある日、ラジューに水をかけてしまったレヌと出会い、恋人同士になると、レヌの紹介で彼女が勤める会社に就職、瞬く間に昇進していくが……。

監督:アジーズ・ミルザー
出演:シャー・ルク・カーン
   ジュヒー・チャーウラー
   ナーナー・パーテーカル

制作年: 1992